四十三 任務は終了
馬に乗った二人組がいる。
距離が離れた後方にも、馬に乗った者達がいて前方の二人組を追っている。
前方の一人は、腰まである長い赤い髪で、つり目の美人だ。
もう一人は、後ろ髪を結わいて前に垂らしている。
ディーナとミーフェアだった。
二人は追手から逃れようと必死だ。
「止まれ!」
追手の一人が力を放つ。
ディーナの右横を通り過ぎていく。
「くっ! 又、射ってきたか」
ディーナは、忌々しそうに後方を見る。
「ミーフェア! 急ぐぞ!」
「はい、ディーナ!」
二人は、馬の駆ける速度を上げる。
後方の裁司者達は、逃すまいと次々に力を放っていく。
その一つが、ディーナの乗っている馬の脚を掠めてしまう。
馬は鳴き声を上げながら、右横に倒れそうになる。
ディーナは咄嗟に、自分から先に地面に落ちる。
そして、右に転がることで、馬の下敷きになるのを防いだ。
「大丈夫ですか!? ディーナ!」
ミーフェアは馬を止め、降りてディーナに駆け寄る。
「ああ、なんとかな。少し痛めたが、大丈夫だ」
ディーナは右肩を押さえる。
「それより、この馬では逃げるのは無理だ。林に隠れよう」
「はい、急ぎましょう」
ディーナとミーフェアは、そそくさと林に入る。
追手の、馬の駆ける音が近付いてくる。
「こっちだ」
ディーナは、ミーフェアを先導して繁みに隠れる。
追手は、馬を止め降りる。
彼らは、何かを話し出した。
一向に林に入る素振りを見せない。
どういうことだ? とディーナは訝しがる。
しばらく様子を見ていると、突然大きな声がする。
「おーい! もう任務は終了だ! 戻るぞ!」
(なんだ。戻るのか······。良かった)
ディーナは安心するが、待てよと思う。
(どういうことだ? 任務は終了だ······だと?)
不意に、隣のミーフェアが立ち上がる。
「ミーフェア······?」
ディーナは親友の顔を見るが、いつもと違って見える。
ミーフェアはディーナを見下ろし、その視線には冷たさがあった。




