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三十一 逃走
「兄上、あれが罪悪の力とは、本当なのですか?」
「間違いないだろうね。あの独特の禍々しさ······。罪悪の力だ」
エリッサは、王国裁司の言葉を聞いて、穏やかではいられなかった。
(······罪悪の力。メフェリアと同じ······)
「この場は私に任せてください! あなた達は逃げて報告を! 詳しい話はディーナに聞いてください!」
王国裁司と部下達は、アーマイゼの前に立ちはだかる。
「でも!」
「エリッサ。王国裁司様に任せて行こう」
ウェルグは、エリッサを説得する。
「でも、私達もいた方が勝てるかもしれないよ!」
「······エリッサさん、今は逃げましょう」
ミーフェアは、分かりますが今は、といった表情で説得する。
「三人共、行くぞ!」
ディーナは三人を促す。
「······うん、わかった」
エリッサは渋々、頷く。
四人は駆けて、その場を去っていく。




