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ユメユメ~一年目~  作者: サトル
10. 限無く相思て
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10-1

 

 梅雨明け宣言も未だ聞かれない中ながら、今年は空梅雨なのかこの日も雲の隙間からは晴れ間が見えていた。朝日輝く空を見上げ、夢姫はため息を投げる。


「どしゃ降りにならないかな、つまんない」


 いつものように登校を共にした梗耶と別れるなり、いつものように和輝を探す。

 夢姫は、和輝と違うクラスだ。その為、いち早く和輝を確保し日中の行動を共にするためにはクラスに乗り込む必要があるのだ。


 いつものように和輝の教室へと急いでいた夢姫であったが――そんな彼女を細く小さな声が呼び止める。


「――あ、よみちゃん! おっはよー!」


 犬飼 詠巳(ヨミ)――彼女は夢姫と同じクラスである。

 堂々たる装いで黒いローブを翻し夢姫に歩み寄ると、何を考えているのか分からないうすい笑顔でこう切り出したのだった。


「ちょっと相談したい事があって……いいかしら」



 当然と言えば当然だが、夢姫は相談の類を持ちかけられる事がまず無い。

 まともな返答が返ってこなさそうだとか、そもそも言いふらされそうだと嫌煙され続けてきた。……そう、それは彼女の性格に由来するものである。


 そんな夢姫にとって“相談したい”――その一言は魅力的すぎる誘い文句であったのだ。

 もはや和輝の事など頭の片隅にもない。二つ返事で頷くと、踵を返し自分の教室へ帰って行ったのだった。



「――実は男の子向けのプレゼントを探しているところで、決めかねていてね。夢姫さんにも一緒に選んで欲しいの」


 教室へと引き返すと詠巳がそう打ち明ける・

 “男の子向け”――そのキーワードは更に夢姫の心を弾ませ、妄想を膨らませていく。


 プレゼントを渡すということは、それだけ近い関係の相手がいるのだろうか。

 ……単に詠巳がどんな相手であろうと強引に贈り物を押し付けるだけの肉食性を秘めた、豪胆(ゴウタン)な精神の持ち主なだけかもしれないが。


 どちらにせよ、これが面白くないはずがない。そう詠巳の願いを快諾し、放課後に商業施設にでも寄り道しながら探しに行く事としたのだった。



 ―――



 午前の授業が始まっても、夢姫は授業そっちのけで詠巳の想い人への想像を巡らせていた。


 年上、年下、さもすれば同級生かもしれない、同じクラスの……この教室内にいるのかもしれない。人の恋愛事程美味しいイベントは無い、と夢姫は逸る気持ちを胸に忍ばせたのだった。


 楽しい時間があっという間に過ぎ去るように受けていない授業もあっという間に終わり、昼休みと相成る。


「ねねね、よみちゃん! 朝の話、きょーやにもしていい?」


 詠巳とともに昼食を取ることとした夢姫は逸る気持ちを抑え切られないらしい。


 昨日の出来事、詠巳達のやり取りを知らない夢姫が梗耶を迎えに行く最中、そう切り出してみる。

 すると、詠巳は薄く微笑み頷いたのだった。



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