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――その後、和輝も夢姫も、そしてクララも近くの交番へ連れて行かれ事情を説明する流れとなったのだが、和菓子屋のおばちゃんの証言も手伝い軽い注意のみで事が済み三人は帰宅の途につく事となった。
「はい、これ。さっきのおばさまが“クララに”ってくれたお団子だけど……クララ今ダイエット中だから、二人にあげるわ」
「クララっちダイエットしてるの!? 必要ある!?」
「何か違うニュアンスに聞こえるんだけど……まあ良いわ」
二人は差し出されたプラスチックパックの中からみたらし団子を一本ずつ受け取る。そして各々の言葉でクララに礼を告げたのだった。
「あーんもう! ちょー怖かったんだから! ……和輝くんが来てくれなかったら泣いてたぞ?」
「そうは見えない剣幕だったけど……」
「そーそー! クララっちカッコ良かったよ~? あれって何かの武術?」
「あ……ええ、昔、空手とか柔道とかボクシングとか習ってたの。もう殆ど我流になっちゃってるけど」
「すごーい! かっこいいじゃん!」
「そ、そう? ……あ、夢姫ちゃん。それより――」
振り向きざまのクララが夢姫の前に向かい立つ。夢姫は先の言葉が予測できず、首を傾げ目を丸くしてその姿を見上げる。――その時。クララは片手を夢姫の額にかざすとそのままデコピンを決めた。
――大の男を軽々と投げ飛ばせる逞しい腕から放たれた容赦ないその一撃は、夢姫のおでこに鋭い痛みを与えた。声にならないようなうめき声と共に夢姫はその場に蹲ってしまった。
「……元はと言えばあの子達を焚き付けたのは夢姫ちゃんよね。……女の子なんだから。力で敵いっこない相手なんだから、もっとその辺考えなさい」
そう告げると、クララは軽く夢姫の頭を叩く。
――デコピンが余程痛かったのか、はたまた(珍しく)本当に反省したのか……。
素直に夢姫が謝ると、クララはマスクに覆い隠されない目元に微笑みを湛えた。
「分かれば宜しい!」
「――さ、帰りましょうか! あら、和輝くんどうしたのだ?」
クララから目を逸らし、夢姫に背を向ける。和輝の心には重苦しい感情がのしかかっていた。
「……何でもない」
――夕焼けの赤に染まる街を三人は帰って行ったのだった。




