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町を見下ろす小高い丘の上には、まるでその一角だけ時を止めたかのようにひっそりと、そして凛と佇む神社がある。
「――摩耶様! どこにおられますか、摩耶様!!」
木々を揺らす風の音に混ざって砂利を踏みしめるスニーカーの足音が境内を賑わせている。袴に身を包んだ黒髪の少年の呼びかけると、神社の中央――社の奥から鈴の音が鳴り響いた。
「騒がしいぞ。……佐助」
暗闇の中から姿を現したのは一人の子供。その外見は小学校高学年から中学生と言ったところか。透き通るような白い髪を肩につかないほどの短さで切りそろえた、いわゆるおかっぱ頭の子供はその赤く大きな瞳で“佐助”と呼んだ少年をまっすぐ見つめていた。
「す……すみません。ですが、摩耶様。あの道具が……鬼が出現した気配がこの私めにも感じ取れました、なのにどうして」
「調べなければならない事がある、と先日も言ったばかりであろう。……もしかすると、“彼の魂”が再び動きを見せ始めているかもしれないのだ、と」
「彼の……魂?」
「ああ。……この世も……私の命さえも脅かす存在だ」
“摩耶”と呼ばれた子供は凛とした表情で空を見つめる。炎のような紅を宿すその瞳には、困惑が映し出されているようだった。
「水瀬 夢姫、か。……この輪廻、そなたに断ち切る力があるだろうか」




