騎士になる為に 【15】
ジキルは魔技で砂利を集め宙に石の足場を作る。
「なんかいつもよりこの石さ薄くない。なんか不安なんですけど」
「じっとしててくれよ墜ちるかも知れないから」
「えっちょっと。なんかギシギシ聞こえない? これ、落ちるよね。かもじゃないよね。お父さんお母さん今までありがとう」
「ノエル縁起でもない事言わないでよ。私も怖いんだから」
五人は怪しみながらも石のプレートに乗る。
「早速だけど墜ちてない」
「えぇ墜ちてるねこれ」
「ジキル頑張れ」
「努力はしてます。魔素が足りて……」
「「ちょちょちょちょっとまてよー」」
一条とノエルは身を抱き合わせ奇声をあげる。ノエルの幻想で姿をカモフラージュさせている意味がないほどに。気持ちは分かる命綱が無いからな。信用という言葉の意味が体感で分かる。ここはビルの五階くらい、墜ちたら死ぬ。
しかたない魔力を使って補強をせざるないか。
「俺の魔力を流すから頑張れジキル」
「申し訳ありません」
「大丈夫です理事長みんなも安心していい」
魔法が使えるのは便利、無から有を生み出すから。にしても、もったいない。魔技は有の物を操るだけだからつまらない。やっぱ異世界はこうでなきゃだ。
▪️――シャフレヴェル騎士学園 理事長室崩落後の刻 ギルド? にて
俺達に謎を吹っ掛けてきた飲んべえのディルの手元に一通の手紙が届く。配達してきた少女はまだ幼い子供だ。見た目で言えば小学生低学年くらいだろうか肩に下げたショルダーバッグが重そうだった。少女は足早に帰ってもういない。それはさておき、受け取った手紙に何が書かれているのかディルの表情は途端に曇りだした。ディルにとって不穏な便りだったのか。
「天薙紅刃って言ったな。お前は何者だ」
「突然何ですか」
「どうやら、俺の知り合いがお前と同姓同名の奴と交戦しそうになったと書いてあるんだが?」
「んなバカな。ディルさんと初対面ですが? 訳の分からないこと言わないでくださいよ。俺はここに居るし生徒手帳もありますから、偶然でしょう」
偶然。もし、ディルが言う事が本当なはずがない。またからかっているにちがいない。異世界で同姓同名は確率として相当低い。日本でも俺と同じ名前は聞いた事ないからな。
「ディルさんその手紙、俺が呼んでもいいですか」
「お前を信用するには情報が乏しい。詐欺はうんざりだ。葵、今日は一回帰ってくれ」
「そうですか」
訳がわからん。いきなり追い出された。もう二度と来るものか関わるのも腹が立つ。結局、冒険者らしい事もなくつまらないままだ、ディルが言った事を信じるに値しないけど、突然言う言葉でもないだろう。俺と同姓同名の人物。あるいは俺の名前を使う奴がいるのか、天薙紅刃。俺の名を探し問い詰めてもいいか。
俺達は自宅の帰路を行く。
「もう一人の天薙って誰の事なんだろうな」




