騎士になる為に 【11】
紅刃の手元には輝きとともに白い刀身の剣が顕現した。その剣は紅刃の言葉に応えるように紅色の炎を纏いだす。
「精霊は魔素を嫌い魔法は愚か魔技に制約をもたらすもの。その認識を変えてしまえばリミッターはない」
悪魔に身を許したアリシアは狂変し、禍々しき霧の中から大鎌を形成した。
その大鎌から精霊が強制的に力を引き出されているそんなイメージを紅刃は感じ取った。
紅刃は切っ先をアリシアに向け、左手で魔法を練りだす。
魔技とは違い魔素を練って想像し具現化させる魔法はこの王都でも異質な能力であり、悪魔の所業だの異端崇拝者だの逆に神の力や奇跡と捉えられるほどに魔技より浸透していない異能だ。
そして、生成された黄金に輝く鎖が紅刃の左腕に巻き付く。
悪魔契約をした今のアリシアも異質の魔法をすでに行使している。構える大鎌の周囲に帯びる冷気がそれだ。
「アリシアよなぜに白服に対立する立場のお前が悪魔に唆された」
「セシリー様は私が保護する対象であり、こちら側にいるべき存在。未来視のできるセシリー様は渡さない」
言っている理由は本末転倒だが、アリシアは冷気からダガーナイフのような物を数十本生成し乱発する。
それを紅刃は鎖を回し打ち払う。
アリシアはさらに乱発しながら大鎌を振りかざし、接近し、紅刃に近付いた頃には悪魔との契約で失ったはずの左腕を冷気で義腕を形成させたのか大鎌の柄に添えられていた。
力を込められた大鎌の斬撃が紅刃を襲う。
紅刃は虚像のレーヴァテインを盾に斬撃を反らしその勢いを残したまま遠心力で斬りかかる。うまくアリシアの懐をとったが、アリシアもまた反応がよく致命傷になる前に冷気を懐に集中させ水蒸気で氷をはりカウンターを防ぐ。それでも紅刃の剣の炎の方が相性的にも有利でダメージを軽減した程度にはくらったようだ。
障害物の多い理事長室は斬撃でいろんな物が壊れていく。
「流石に戦闘なれしてるな。思うように動けないこの場で構わず攻めてくる。理事長申し訳ないがこの部屋燃えるぞ。ジキル。来い俺と忠誠の儀だ」
「イエス・ロード。我、ジキル・ヴォルフガング・ハイド貴公を主とし我が身は守る盾に」
ジキルは忠誠の儀を交わしオーラとともに狼の毛皮を纏う姿になる。その毛皮の色や姿は一条穂波との忠誠の儀で纏った姿ではなくガルムを殲滅した時の漆黒の狼だ。
これが紅刃のイメージが反映したジキルの武装と言うわけだ。
今のジキルには当然のように紅刃の魔技を仕様する事ができる。
ジキルは常備している石ころを宙に投げそれを自らの魔技で盾を形成し宙に浮かせた。
ガルムを討伐した時は武装を石で強固に出来たものの環境が変われば魔法が使えないジキルにできる事は比べて今は少ない。




