騎士になる為に 【10】
「理事長。黒城とはどこで知り合ってなぜ、この世界と俺のいた世界とを繋ぐ必要があった」
「あなたにはお答えできない事です」
紅刃は素っ気ない理事長の態度に苛立ちを隠せなくなりテーブルをおもいっきり叩き無理にでも目を向かせた。
「俺の人生はお前らのせいで狂ったと言ってもいい」
紅刃は深刻な面持ちで目的について語り出した。
「現世で俺は黎華を殺めた。きっかけは俺がルシフェルを呼び出した事によるもの。俺は黎華を殺めるつもりはなかった。黎華の性格を考慮すれば良かったんだ。しかし、結果が結果だどうすることもできない。だからこそ俺はこの世界から運命を変え、刻に抗う事を決めた。擬似だが、ルシフェルの持つ【刻】の力でだ」
「残念です目的としては不十分。貴方のいっている事には矛盾がありますよ。ルシフェルを呼び出した理由と黎華さんの命の順番がおかしいじゃないですか。もとから【刻】の力を行使したいのでは? それに刻に抗うのはそれこそ愚かです。運命を変えるにはそれ相当の対価が必要なはず、ルシフェルの降臨は事実だとしたら、貴方はそのルシフェルの力で時を遡った事になりますね。いずれこの時代にあの厄災ルシフェルが来るという事になるではないですか。貴方は大罪人で処刑は免れない存在、変える事のできない事実です」
理事長の適切な解釈に根をあげるわけにはいかない紅刃はさらに苛立つ。
「理事長はどこまで未来視できる。この学園で広げた忠誠の儀は誰が発端だ」
「犯罪者に協力はできませんし、これ以上語れる事はありませんよ。どうかお帰りになって下さい。それと貴方、学生手帳お持ちでしょ、卒業した者は返却する事は通例ですよ」
紅刃は鼻で笑いながらポッケから学生手帳を取り出し魔法で燃やして見せた。
「これで俺は忠誠の儀による騎士にはなれない。そもそも理事長の下でなる気もない。俺は王だ。魔法ではなく魔技しか使えない者達の敵ではない。ジキル来い」
「イエス・ロード」
「申し訳ありませんが理事長にはしばらく捕虜になってもらいます。ジキル。セシリー理事長を抑えろ」
「貴様ー!!!! セシリー様に何をするかー!!!!」
「アリシアさん動かないで下さい」
「あの方は悪い人じゃないですよ」
「私の言う事を聞けジキル。セシリー様に手を出すなよ」
「だめだ、アリシア。俺はこの方につく、理事長申し訳ありませんが取り押さえさせてもらう」
アリシアは首もとに突きつけられた剣先に躊躇わず自ら身体をはり一条とノエルのみぞおちに一撃ずつくらわし、紅刃に襲いかかる。
「契約だ悪魔。私の何処でもいい。セシリー様を奴に連れていかれるわけにはいかない。早くしろ悪魔、私に力をよこせ」
だんだん空間を黒い影が覆い尽くす。
「なんだお前。セシリーって奴をどうしたい。俺はお前と契約してもいいが、俺の仲間を利用してくれた分は対価をいただく」
「どこでもいい。今はあの男からセシリー様を守る事の方が大事だ」
紅刃はアリシアから離れるようダメージをくらった二人に大声をだし、魔素から魔力の生成を開始する。
「ジキル。セシリーに傷はつけずおさえてろよ」
「では、これで契約完了だ。お前の右目に左腕はいただいた。その代わり、お前は魔力を行使でき欲望に溺れる。溺れきった時が人としての終わりお前は晴れて俺達の仲間だせいぜいうまく行動するんだな同胞よ」
「奴とのつながりはメイドのアリシアの方だったのか? 今はとにかくあいつを封印するしかないか」
紅刃は室内のオブジェクトの配置を認識し、ソファーから離れ距離をとる。
「戦闘はいつ以来だよ。理事長から離れるわけにもいかないからな、申し訳ないがこのままやらせてもらうよ。『アレクサ俺の魔力を糧に剣の姿を成せ! ヴァーチャルイメージ。虚像のレーヴァテイン!』」
「ほんと君はいきなり扉を開くんですね。今の私は貴方、紅刃さんの私じゃないんですよ? この状況なら仕方ありませんが、私は貴方の剣これに偽りはありませんけど。う~ん仕方ない。貴方を守る剣になりましょう」




