騎士になる為に 【6】
「元気だしなよ葵はいつも強気なのにそんな落ち込まないでよね。何があったが知らないけどあんなやつまた返り討ちにしてやるからさ」
たくましいセリフだ朔乃よ。俺が言ってやりたかったぜ。
「そうだよ朔乃の言う通りだ。もうあいつは帰ったんだ今日は顔会わせないだろうし元気出してくれよ」
「何もしてないお前に言われてもな……。」
「それは否定できん」
ボケたつもりはないが少し表情が柔らかくなったように見えた。
道中暗かったのはあいつに会う可能性を思い出しての事だったのか。確かに触れられたくない記憶に違いないな俺も願い下げだあんなやつ。
心を落ち着かせさらに奥の路地を抜ける。そこにギルドはあったのだが、扉を開くと室内は明らかに想像と違う。どう違うかと言うと、俺の中ではいつも賑やかで討伐自慢やら世間話などコミュニケーションの場を想像していたんだ。まぁやっている人はいるがけして明るい感じではない。
室内は綺麗にしてはいるが立地が路地裏って事もあり日が当たらないからか空間が人を暗くしているのようにも見える。
「いらっしゃい。なんだね君たちは……。」
掃除スタッフのおばちゃんに声をかけられた。
素っ気ないオーラで訪ねられても困る。が、文句言えるほど人間できていないのが俺だ。
「俺達は初めてなんですが……。」
「そうか、王国領土内と言えどこんなはみ出し者の集いの場にねご苦労なこった。どいたどいたこっちから聞いといてすまないが仕事中なんでね。用があんならそこのテーブルで飲んだくれて寝てる男に聞いてみな」
なんと。からみたくないなあのおっちゃん。あのおっちゃんがどうしたんだ。ただの飲んべえだろうが。
と、言ってしまいたいがどうもこのギルドの中が血なまぐさいようなヘドロやら廃油やらの染みた異臭で呼吸するのが辛くなって来ている。これが本場のギルドなのか。
「ウ"ーウェゲヴォー」
「ちょっと汚いから近づかないでよ」
「わりぃけど出てはない外にはな」
「いや、それも言わなくていい。きもいから」
「なっ」
にしてもほんとにすごい衛生面がとんでもなくずさんだ。床はボロく軋むし、壁にも長年の汚れが染み付いている。何で汚れているか分からないほどだ。雨漏りでもするのかバケツが転々と置かれている。おばちゃんの仕事が忙しい事は分かる。
「いいわ私が話しかけてくるから」
「いやいいよ俺が」
今日の朔乃は男らしくも見えてしまうな。男の俺が恥ずかしいくらいだ。
酒に溺れた男がなんだというんだ。スタッフでもないだろうに。こいつに聞いて何の意味がある。
「どうした。何かようか」
がらが悪い。近づいた俺らに振り向いているんじゃなく椅子に寄りかかって後ろに頭を下ろしている。完全にただの酔っぱらいだ。
「ずいぶん若いやつだな学生か? ちょっと待てもしかして巳咲か? 巳咲葵だよな懐かしい大きくなったな乳が、ハハハなんてなブフェ……」




