騎士になる為に 【5】
と言うわけで、俺達はギルドを目指すわけなのだが、ここは言うなれば王国の城下町なのでモンスターが突然襲いかかってくるのは学園のガルムは別としてあり得ないとの事。
いや、いるにはいるんだ。ただ襲ってこないだけ、普通に野鳥や野良猫程度にはいるんだ。小さいやつが。
「なぁ葵さん? 連れていってくれるのはうれしいんだよでもすごくなんか暗くない?」
どうやら葵は機嫌が良くないみたいだ。訳は知らん。
それにしても空は葵の表情と逆に雲一つない快晴である。まさにハンティング日和ってやつ? 俺は楽しみで仕方がない。だってゲームで言うならストーリーを聞いて基本お気に入りの子以外スキップするけど俺は。それからチュートリアルのミッションクリアしての実戦?
「なぁ朔乃」
「うん何?」
なんでヨダレ垂れてんの? 確かに並んだ屋台からいい匂いするけどもさ、朝飯一番食ってたじゃん……。
「いやさ俺もこう武器あるじゃん。朔乃は短剣使いなれてそうだから聞くんだけど」
「うん」
「どう使えばいいのかな。やっぱモンスターにダメージ与えるなら突っ込んで行かないとだめでしょ?」
「そりゃそうだけど。なんて言うかな短剣は剣先が短い分近づくのは当然だけどそれだけじゃ身を守る事できないで死に行くものだからほとんど拳闘士のように打撃戦において必要な受け身は短剣でも必須で隙有れば刺す感じかな」
「イメージしやすいけど難しそう」
「もうすぐ着くぞ」
随分と奥まで来たが日当たりが悪い場所だ。いい天気が意味がないほどに。
「この先の路地を曲がった先にこの街のギルドがある」
「まじでこんな所にあるのか。言葉悪いけど浮浪者の吹き溜まりじゃんなんか臭うし」
「ん"だてめぇ」
「ご・ごめんなさい」
路面に座り込んだいかにもって人に聞こえてしまった。
そうこう考えているうちにカップルパーティを発見。やっぱ期待しちゃうよな。出会い求めちゃうよな。って何やら俺達の方に来やがるぞ自慢か見ず知らずの俺に見せつけか。
「おう。葵じゃあないか」
「何知り合いなの?」
「なーに昔のな」
親しげな感じにそいつらは葵に声をかけてきた。チャラ男とエロい服の女だ俺は無意識に威嚇していた。
「なんだこいつ葵の彼氏か? まさかそんなわけないよな。葵も男を見る目ないよなー。今度夜に付き合えよ俺が癒やしてやっからさ。そう言えば、葵はあの優秀な騎士様の学園生徒なんだってな。家出してきたお前とパーティ組んでた時は楽しかったなぁまたやろうぜ。あー思いだしちゃった。ほんとあいつあの成金が来なきゃな。お前を俺から引き離すように連れていったあの女、ほんとムカつくよなあぁ。今度あったら犯してやるしかねぇよな。にしても良く育ったもんだな葵。まじでそそるじゃねぇか」
葵は下を向いて立ち止まったままだ。怯えているようにも見える。何があったか知らないけどこの男は最低だ。嫌がる事を平気で繰り返す。
ここは俺が前に出てかっこよく追い払うべき場面だ。よし! 無理だくそー駄目だな俺。
しどもどしている俺をおいて朔乃が動いた。と思ったら路面に転がったコインを見つけたよう……。でもなかった。
なんという軽やかな身のこなし。唐揚げを頬張った人の動きじゃない。朔乃はチャラ男の足下のコインを拾うふりして逆立ちからの二度蹴りが見事に顎にヒットした。いやすごいものを見た。
「ぷふ」
俺の笑いが思わず口からこぼれてしまうほどに面白い光景だった。
「なんだこいつ。ふざけんな俺の顔が……。くっそーおい、行くぞレイ!」
「……。えっちょっとダサ」
「あ"?」
「ごめんてぇ待ってよー……。なんかごめんね」
こんなにも周りに居る人達は疲れていて服も汚れているのに去っていった男は綺麗すぎだ。冒険者としてレベルが違うのか? いやでもああいういけ好かない男とは関わりたくないから考えないようにしよう。
でだ。切り替えて行こうにも精神的ダメージをくらった葵は動きが遅い。すべてこれも行こうと言った俺のわがままのせいだ。




