騎士になる為に 【4】
「白き剣聖なんとかって……そんなタイトルの物語に白い鞘が出てくるの聞いたことあったような。関係ないだろうけど」
朔乃の口はいまだにもぐもぐ動いているが、すごく気になる事を言っていたようなので聞き返す。
「その物語はどこで聞いたんだ?」
「えっ何クズハのくせに上から目線? ゴクリ。」
「何処だっけ。私が小さい頃世話になった孤児院? だっけかな」
「何処にあるんだ?」
「えーと。いやもうないかも知れないけど」
「そうなのかいろいろあんだな。他にその物語知ってる人とか本でもあればいいな見てみたい」
「それよりさクズハ。今度そのライン越えたらただじゃ」
生活空間を分けたラインは今も健在でした。
くっそ俺の作った唐揚げたいらげやがってまだそれを言うのか。
「そうだぞ。これからは私もシェアさせてもらうんだからな」
「ちょっと葵。それ私聞いてないんだけど? えー私の部屋狭くなるじゃん」
朔乃は足を伸ばして駄々こねている。
「葵には会長がいるじゃん」
「アリス会長は学園で会えるし、プライベートはべつだ……。うん。だからって天薙はこの間みたいに襲うなよ」
「なんだそれ。じゃあなんで居……。」
これ以上は突っ込まないでがまん。言い返して得したことないからな。にしても今日はどうしたものか。家にいるだけじゃ何も変わらないよなせっかくの異世界だしな。異世界らしい事……。と言えば。
「なぁここの街にはギルドないのかな」
「ギルドかぁあるにはあるけど」
「あそこは無粋な奴らのたまり場だからな。学生が行ってだめな事はないが、なめられたり、ねちねちからかってくるほぼニートがだな。日雇いバイト感覚にあつまて」
「よし! 行こうみんなで」
「今からか、腕は大丈夫なのか?」
「おう。そう言えばぜんぜんいたくないな。葵はどうなんだよ」
「そう言われれば私も痛みはないな(自分でやったなんて言えない)」
「じゃあみんなで食糧探しでも行くか」
「なら、ギルドカード登録するために天薙は武器持ってないなら私の短剣を貸すから」
「ありがとう。葵は大丈夫なのか」
「私には叢雲が憑いてるからな」
「朔乃はどうする」
「えーじゃあ行く。私もカード持ってないから、私も初期装備は短剣でいいかな」
「出た俺をグサリしたやつ」
まぁされてないけど。
反応した朔乃はなぜか睨みを利かしている。
いや、もう怖くない。朔乃はいい奴だからな。それよりも異世界らしい事がしたい気持ちが先立っている。




