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記憶と認識と迷々【3】

「ロープを切るのはいい、いや、ザクッとは怖い! というか、当たってるんだけどその……」


「何が当たってると言うのよ私はそこいらの剣使いよりは刃物の扱いは上手いのよ」


 俺が言っているのは、二つの肉まんが俺の身体に当たっているという事、正確には少女のやわらかな胸が当たっている事だ。


 俺は健全な男子だ流石にこれはしょうがない。これは不可抗力、男なら普通だ。そして、幸せだ。息子も喜んでいるよ朝だし。


「ちょっとじっとしててよ手元が狂ったらあぶないから」


「はい。がんばります」


「オーケー終わったわ」


「おー助かるー。さすがに疲れたー」


「何よ疲れたって、何も疲れることはしてないでしょ」


 まぁ肉体的ではなく精神面の方がですけど。しかし、殺気だってた雰囲気が随分と無くなったもんだ。


「あのさ、終わったなら俺の上から降りてもいいんじゃないかな」


「わかってるわよ」


「やっぱり自由は最高だな。そうだ! まずは自己紹介だ、俺は天薙紅刃あまなぎくれはよろしく」


「そう。一応私からも。私だけ名乗らないのも騎士として不公平だものね。君みたいな平民に名乗る事はあり得ないけど一度しか言わないからきちんと覚えときなさいよ。私は天月朔乃シャフレヴェル騎士学園の近衛騎士だった」


 なんか、最後だけ声が小さくなったが俺は気にしない。今の自由に感動すらしているのだ。あれ? どこかで聞いた事のある単語があったような。


「そこっ! 俺が転入するとか言ってた学校じゃないか!」


「ビックリしたいきなり大声出して」


「おぅすまん驚かせた」


 少女もとい天月さんは何か覚えがあったのか右の握り手を顎に当て思考を巡らせているように見える。


(転入って事は彼が護衛の対象? それにしてもなんで私がこんな奴と部屋が一緒に……)


「いいわ、私が学校まで案内してあげる。あくまで入り口までだからそこからは君一人でどうにかして」


「本当か! それは助かる。流石に目を覚ました時はどうなるかと心配したけど、いい人じゃないか」


 天月さんは俺の顔から目を逸らした。


「君は一時的だけど私のマルタイとして、君の命は私が守るから安心していいわ」


「頼もしいけど、それは過言じゃないか? 命を守るとか大げさなんじゃ」


 何それそんな危ない所なのここ? つか、エセ神父の話本当だったのかよ実感沸かねーな。そもそもいきなり過ぎる。どうやって異世界に来たんだよ。俺は現世で死んだのか? ここが仮に死後の世界だとして、魔法とか、モンスターとか出てくるのか? 無理だ死ぬ。


「この先、寮地を離れると何が襲って来るか分からない。だから、戦う術のない君を守る事が私の役目」


 俺、さっきまで君に殺されかけてた気がするけど……。


「……。了解であります。天月近衛騎士殿。今日はお世話になります」


「それと擬似だけど忠誠ロイヤルティメントを……」


「ロイヤルティメント?」


「ロイヤルティメントと言うのは忠誠を誓う儀式の名前。皆は省略してロイントって言ってる。つまり、忠誠を誓う行動をロイヤルティメントって言うわけ」


「なるほど、忠誠ちゅうせいね。そこまでしなくても俺は天月さんの事信じるよ」


「信じてくれるのは嬉しいけど、これは騎士として当然な事であって、あくまで今回は擬似だから平気で」


「平気? 何で赤くなってんの?」


「……なってない!」


「そうか? じゃ俺はどうすればいいの?」


「君は私の前に立って左手を開いて私の眉間に向かってその腕を伸ばしてくれればいい。本来はオーダーつまりは命令を口にするのが本来の忠誠の儀だけど、今回は擬似つまり、形だけだから命令はいらない。それでも騎士の力は意味を成すから問題ない」


 そう言って、天月さんは俺の前に片膝をついた。俺は言われたまま腕を伸ばした。


「我、天月朔乃。貴公を主と認め、其方の剣とならん」


 天月さんは俺の指先に下から右手を添えた。


 なんか恥ずかしい……。


 すると、赤い光を放つ魔法陣に似たサークルが俺達を囲み、それと同時に天月さんの服装が変化していった。


 なにこれ、やっぱ魔法? つか、魔法って実在するのか! やばい天月さんの……初対面なのにここまでイベント発生していいのか? いろいろ見えてしまっているが。


 赤いサークルは消え、服装は姫騎士らしくなった。


 赤と白を貴重としたドレスに中世鎧を合わせたつくり、本来防御性能を重視するはずの鎧は肩・腕・そして膝から下にあり、動き易さにこだわった武装に見える。


「見た?」


「何を?」


「その……私の下……」


「見てない見てない目の前が真っ赤になって何がなんだかさっぱり」


「本当に?」


「本当だ」


 本当の事を口にしたら……きっと、しかし、罪悪感が……。


 天月さんはなんだか、恥ずかしそうに照れている。


「そう、ならさっさと用意しなさい学校行くんでしょう?」


「おぅそうだな着替えるとするか」


 俺には変化ないんだな。


「さっき自分は変わらないとか思った? それはしょうがないわよ。騎士は私だからね」


 何この人、悟りスキルあるの?


 ところで今何時だ? まだ四時か早いなってそんなわけあるか! オタグッズ指差してた時からお日様燦々だったよ!


「天月さん今笑った?」


「うるさいわね。言っておくけど私のせいじゃないわよ触っただけだから」


 いやーそれ明らか壊しましたと言ってるような。まぁいいや、今の時間さえ分かればいいんだから……あれ? バッテリーゼロ? 昨日スマホ充電してなかったけ? あーそうか、帰ってから直ぐぶっ倒れたっけか。


「遅刻は騎士としてまずいことだから急ぐわ」


 遅刻しても俺悪くないよね。そもそも理事長に挨拶してからだし。


「分かったから今支度するから向こう見ててくれないかな」


「あっ……たり前じゃない! 私も君に興味なんてないし、反対見てるから早く着替えなさいよ」


 そうは言ったものの制服はと……おそらくこれだ。メタルラックの側にわざとらしく真新まあたらしい制服らしき物が畳んであるという。オタグッズの側にあるからと言ってもコスプレ衣装では決してない! カメコは数回やった事はあるが……着た事はない! よって学校の制服である可能性が高い!


「まだなの?」


「今、終わったよ」


「終わったなら行くわよ」

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