無能騎士 【11】
葵は向かって来るガルムに向け、シリルの放水する水を魔技によって操作する。
水は葵のそばに集まり壁を造りだす。ガルムの突進に対し葵は壁の後ろで更に距離をとり衝撃を交わす。叢雲を逆手に切っ先をガルムに向け叢雲の頭部を手のひらにあて押すようにて構える。
「叢雲、氷壁」
水の壁は叢雲の加護により氷の壁を作る。
ガルムの突進を氷の壁で防いだ。
「さらに行くぞ。叢雲、氷槍」
水を数十本の槍に形成。それを叢雲で凍らせ貫通力を与え、太陽の輝きを跳ね返しながらその槍は雨のようにガルムに向け降り注ぐ。
氷槍はガルム達に貫通ダメージを与えた。
葵は魔技で水を集め壁を造る水壁にさらに叢雲の氷結効果でそれを氷壁に変化させる。隙あれば氷槍をぶつける。
攻防を繰り返しながら自分を囮にガルム達にダメージを与え、他に気を散らされないように慎重にシリルのいる体育倉庫に急ぐ。
「葵さん。この先はもう水は撒いてあるからガルムを引き寄せたら地面凍結させてガルムの勢いで体育倉庫に突っ込ませちゃえ」
「いや、シリルさん。ここは確実に閉じ込めるために私ごと中に入ります」
「でも、それじゃ体育倉庫を氷結させる時葵さんもガルムと共に凍らないかな」
「シリルさん。大丈夫。私の魔技、叢雲の力私が一番理解してますから」
そう言って葵は体育倉庫の入口で叢雲を構え、その身にガルムを惹き付ける。
「獣鎧め! 私の血肉が欲しいなら来い!」
葵は腕の切り傷をちらつかし魔技でガルムの全身に水をおみまいして、ガルム二頭は葵と共に体育倉庫の中へ。
十分に濡れた倉庫内で叢雲を床に向け、深呼吸。
心を落ち着かせ言霊を唱える。
「白露の森に潜みし白き竜の精霊よ全てを覆う氷の牢獄となせ! 絶対零度領域」
叢雲の刀身から白い冷気が倉庫内を覆う。
大気の温度は下がり霧じょうの水蒸気が降り、倉庫内は凍りつき氷柱を形成した。
水に濡れたガルムは奥にいる葵よりも先に凍りついていく。葵は様子を見ながら動きの鈍った二頭のガルムの間を駆け抜け出す。
「葵さん。大丈夫?」
「平気です。シリルさんの放水のお陰でだいぶ助かってます。もう一押し」
動きの鈍ったガルムに向け、無数の氷槍を放った。
みごと二人は二頭のガルムを倒す事に成功した。
(紅刃、お前の方は今どうなってる。こっちはクリアしたぞ)
(流石! こっちは朔乃と会長が倒した一匹だけだ)
(そっちに合流するか)
(いや、入口に居るなら一回中にいるアリシアさんに状況報告してくれないか)
(残りのガルムはどうなってる)
(今は大丈夫。まだ上に向かって群がってる襲って来る気配はなそうだな)




