伝承研究部
伝承研究部入部する事になってしまった文月と隼。
始まったばかりの高校生活が早くもあやしく…。
北ノ 愛が神社から盗んだ箱は?
遠藤兄弟と、いとこ隼の回りで起こる不思議な日常の物語り。
今日から授業が始まる。
7組の教室に入り、席についた文月は、昨日と同じく回りを見ないようにしている。
そんなに多いの…?!
一度聞いてみたいような聞きたくないような。
ホームルームも授業も至って順調。
昼休みまでは…。
「えーと、遠藤君と遠藤君居る?」
突然名前を呼ばれ振り向くと、そこには、こ汚いおっさ…いや、30代と思われるワイルド?な男性教師が立っていた。
ボサボサ頭に無精髭…中々の見た目だ。
「君ら、いとこで同じクラス?!普通は別々になるんだけどなぁ…手違いかなぁ。」
「あの…なんですか?」
「伝承研究部に入ったでしょ?俺は、顧問の池田ね。放課後、部室に来てね。絶対ね!」
「あ、いや。今日は早く帰らないと…。」
困り顔の文月がやんわりと断りにはいる。
「ちょっとだけ!顔出してから直ぐに帰っても良いから。ね!」
うう…。
何だ?!この押しの強さは?!
「じゃ!放課後!確かに伝えたよ!」
池田は、有無も言わさず去って行った。
「………。」
「………。」
「何?!お前ら伝研入ったの?!」
でんけん…その呼び方何?!
「変人の集まりって噂の?!」
変人…。
回りにクラスの生徒達が集まって来る。
「こ…これには、深い訳が…。」
「俺達は、脅迫に屈したんだっ!」
机に突っ伏す文月。
「モシモシ!しっかりしろっ!俺は100%お前の巻き添えなんですけどっ?!」
午後の授業が頭に入る訳もなく…。
終業のチャイムを空しく聞いた。
「どうするよ?顧問の先生自ら呼びに来てんのに、すっぽかすのは、マズいよなぁ…。」
「はぁ。昨日のアレが…。」
「もう、さっさと顔だけ出して帰ろう。」
「うん。しょうがないな。」
昨日は、当分近付かないと誓った筈の"伝承研究部"
の前に立つ。
「失礼します…。」
恐る恐る扉を開けると、正面に顧問の池田、その回りに十人程の生徒がテーブルを囲むように座っていた。
その中に北ノ 愛の姿もあった。
はああぁぁぁあ!!
北ノ 愛の前には、昨日の箱が置いてあるではないか!
文月も気付いたのか、ツカツカと部室に入って行き、北ノ 愛の前に立つ。
「お、おい。文月~?!」
「昨日、謝って返して来いと言ったでしょう?本当にどうなっても知りませんよ?」
「遠藤①何か知ってんのか?」
池田が立ち上がり、文月に問いかける。
遠藤①って…。
じゃあ俺は、遠藤②だな。
「いやぁ。北ノが神社から、勝手に持って来ちまったみたいでなぁ。昨日、怒った神主さんから電話がかかって来たんだよ。」
「知りませんよ!勝手に持って来たなら、返しに行けと言っただけです!」
文月から、全力で関わりたくないオーラが出ている。
「失礼します。」
「待て待て待て!」
いきなり帰ろうとする文月を池田が止める。
「いや、今後、こんな事が無いように、っていう話し合いをだなぁ…。」
「そんな事する訳無いでしょう!一緒にしないで下さい!」
「てか、遠藤①!お前何でそんな怒ってんの?!」
「ヤバいんですよ!ソレ!お願いですから巻き込ま無いで下さい!」
文月の言葉に他の部員がザワつく。
「遠藤君!お願い…助けて!」
北ノが、立ち上がる。
その顔は青白く、目の下にはクマがくっきりと浮き出ている。
もしかしたら、何か怖い思いをしているのかもしれない。
「イヤです。」
うおー!キッパリ断ったー!
部員達の"えっ?!"という顔が目に焼き付く。
この場で、こうもはっきり断れるお前ののメンタルは、逆にスゲーよ。
「返しに行ったら、アイツ消える?!」
怖っ?!アイツって何?!
「それは、解りません。」
「そんな…。」
北ノは、今にも泣き出しそうだ。
おい…文月。
はっきり答え過ぎだって…。
「自業自得です。今すぐお詫びの品を買いに行って下さい。」
「北ノ、よし。買いに行こう。金は俺が出してやるから、な?」
池田が北ノを慰める。
「あのさ…。」
北ノの隣に座っていた男子生徒が、おずおずと声をかけてくる。
「遠藤①…俺達も謝りに行かないとマズい…かな? 」
「その場に居たんですか?」
「いや、居なかったけど、昨日ここで箱の中見ちゃって…さ。」
「俺も北ノに見せられたんだよ…中には」
「ストップ!!箱の中の事は、聞きたくありません。」
「ご…ごめん。」
「その場に居なかったのなら、大丈夫だと思います。但し、当分北ノさんには近付かないようにして下さい。助けを求めるメールや電話が来ても無視して下さい。。」
お…鬼。
「ごめんな~北ノ。」
「わりぃ。北ノ。」
皆、巻き込まれたく無いのだろう。
口々に侘びる。
「遠藤①」
「イヤです。」
「まだ何も言って無いだろっ!!」
「日本酒なら何でもいいのか?買うのだけでも良いから付いて来てくれないか?頼む!」
池田の渾身のお願い。
どうする?文月?
「…それくらいなら。神社には、北ノさん本人が行って下さい。それから先生、お詫びの品です。ケチッちゃダメです。最低3万は持って来て下さい。」
「さ…3万。」
文月は、以外にも了承した。
続きは、また直ぐに。
―筆屋―
この物語りが、一人でも多くの人の目に止まりますように。
―筆屋―