一花
一花を見ると安心したのか先ほどまで涙目だった目をごしごしとしていた。
「一花さん、大丈夫?」
「うん、ごめんね。わがまま言っちゃって」
「ううん、いいけど。どうしてかって理由を教えてもらってもいいかな」
「……わかった」
言いずらそうにしている一花を見ながらスマートフォンを見てみるとまた、解析を選択できるようになっていた。1行動とはあちらから来てこちらから行くの行動をひとまとめで1行動だと確認ができた。
「……。この話をすると真人君にも迷惑がかかるけど」
この言葉で真人は彼女、一花が特殊な配役もちだと予想ができた。自分の能力とは違う他人に話すことができる配役みたいだ。
なかなか一花が話を続けることが難しいようで「あの…」「えっと…」と言っていたので自分から話を振ることにした。
「一花さん、もしかして特殊な配役にあたってるの?」
「えっ!どうしてそれを知ってるの?」
「ああ、やっぱりそうだったんだ」
一花は驚いた表情をして真人を食い入るように見ていた。
「その配役ってもしかして人に言えないような配役なの?例えば狼だったりとか」
「えっと…、それは違う。私は『猫』なの」
猫の鳴きマネをしながら冗談っぽく言いながら困った顔をしていた。
「もし、真人君が狼でも私は襲えないかね」
「そうだな。羊と人のみの場合のみだったもんな」
明らかに話題をそらそうとしているのは見て取れた。
「で、自分が『猫』っていうのを伝えるのに俺に迷惑かかるってどういうことなの?」
「それはね……」
一花の話では猫の能力は『じあい』であり、全員に説明があった一人になるとゲームオーバー以外に自分の能力は一人まで話すことができ、話した相手のゲームクリアが勝利条件となり、相方は猫がゲームオーバーした場合はゲームオーバーになるというものだった。
「つまり、運命共同体ってことか?」
「そうね。今後は真人君以外には自分の配役は説明したらペナルティになる」
「だから言いたくなかったってことか?」
「そう…だね。さっきは太郎君もいたし、この能力自体が迷惑だよね。ごめんね」
彼女の性格からしたら誰かの重荷になることを良しとはしたくなかったのだろう。
一花が言っていることが正しいかどうかは『解析』を行えばいいし、さっきの行動を考えると猫であればわかる行動だった。
それに、一花が猫であれば今後の移動が幾分か楽にはなると考えられた。
ただ、各配役しかしらない能力が心配だった。一花の能力説明を聞き、すべての能力が別々のルールを設けられていることが確定したからだ。
「後で太郎にも自分の能力の説明もらっていたほうがいいな」
「えっ?どうして」
「一花さんの猫の配役のルールは全員に開示されたモノとは違ったよね?」
「そうなの?放送は簡略して説明しただけと思ってたから気にしていなかったけど」
「えっ?だってメールできた説明だと1人になればゲームオーバーまでしか書かれてなかったけど」
「私のはきちんと全部かかれてたんだけど」
一花がおもむろに自分のスマートフォンの画面を見せてきた。ルールとしては真人が見る分には問題ないと判断し、スマートフォンを受け取った。
そこに書かれていたのは真人が受け取ったメールとは猫の説明部分のみが違うものになっていた。
「本当だ。俺のとは違う。ということは配役で配られたメール内容が違うということか」
「ね。ホントでしょ?」
一花にスマートフォンを返し、再度自分のメールを確認するがやはり内容が違った。
このことから各配役には違うメールが届いていたということだ。自分のメールの内容から楽観的に少し考えていた部分もあったがそれも甘かったと真人は感じた。
「ああ、これは思っていた以上に切羽詰っているのかもしれないな」
「どうしたの?真人君?怖い顔して」
「一花さん、自分のグループで相談してた時、違和感とか感じなかった?」
「違和感?特には感じなかったというか私は自分のことでいっぱいいっぱいだったし」
時計を確認するとそろそろこちら側に人が来る時間を指していた。真人はスマートフォンを取り出し、『解析』を狼の配役に設定をし、結果を待つことにした。
『猫』
能力『じあい』が常時発動。
じあいについて
自分一人だけになった場合ゲームオーバー。
また、自分の能力を一人にだけ伝えることが可能。それ以上に伝えた場合はペナルティが発生。
伝えた相手の勝利条件が自分の勝利条件となる。
また、伝えた相手は猫がゲームオーバーになった際に同じくゲームオーバーとなる。
もし、伝えずにゲームが終了した場合はゲームオーバーとなる。