犠牲者
「おい、真人放送の意味って」
「ああ、とりあえず向こうに行けばわかる。それにしてもこのタイミングだとはな」
一花と三船には落ち着いているようにとだけ伝え、時間もなかったので急いで移動をし、教室に向かった。
教室に入るとそこはカラーズと委員長が言い合っている場面だった。
「委員長!あんたがのんびりしてるから黄村が手遅れになったんだよ!わかってんのか!」
「このままだと緑谷もあぶないんだよ。さっさと医者呼びにいくべきだろ」
「行きたいけどいけないからゲームを進めてるわけで」
「んなの知るかボケェ!おい、青井、桃川さっさとここ出て医者呼びに行くぞ」
「赤松、青井、そこまでだ」
カラーズと委員長の間に割り込み赤松と青井を静止する。
「んだ!真人!やるってのか!」
「とりあえず落ちつけっての」
「ああん?落ち着いてられっか!黄村が死んだんだぞ!」
「わかってるから、とりあえず全員自分の席について」
この後も少しの間カラーズが騒いでいたがとりあえず席につかせ状況の説明を求めた。
黄村の死に気が付いたのが放送直前、カラーズがクールごとに様子を見に行っていたみたいで今回は赤松が黄村の部屋に入っていったところ死亡しているのを発見した。
発見と同時に放送が流れ、カラーズは放送が流れているときから委員長に暴言を吐き続けていたようだ。
「ひとまず流れはわかったけどさ。緑谷の様子はどうだったんだ?」
「あいつも同じくらいだから早いとこ診てもらわないとダメだろ!」
赤松の怒りのこもった声で女子が少し怯えているのがわかる。もっと穏やかに話し合いを進めてほしいものだったがそれはしょうがないことかと自分自身を納得させる。
「赤松、お前の言いたいこともわかるがここから出る手段はない。扉の向こうは隣の教室と繋がっているだけでほかに扉も通路もない。その上隣の教室もここと作りは一緒の教室だ」
「うんなわけあるか!俺は騙されねーぞ」
一番簡単なのは自分で確認してもらうことだがこの場合赤松をあちらの教室に移動していいものか判断しかねる。
「委員長、赤松はこのままだと埒が明かないので一度あちらに移動してもらって自分で確認してもらうしかないと思うんですが」
「そうですね。自分で確認すれば納得してもらえるとは思いますが」
委員長が言いたいことは真人もわかっていたがあえて聞くことにした。
「委員長、何か問題でも?」
「それは、あちらには一花さんと三船さんがいますし、一番は狼の可能性です」
やはり委員長が心配していたことは同じだった。真人視点ではもし赤松が狼の場合でも能力の使用ができないのはわかっていたのでその点は心配していなかった。
「それなら先に男子を一人あちら側に移動したのち赤松を移動すればいいんじゃないか?」
「ああ、そうね。それならもし赤松さんが暴れても大丈夫かも」
「それなら俺と二葉さんがあっちに移動して俺が残るよ。そうすれば大丈夫じゃないか?」
「太郎。そうだな。お前なら大丈夫か」
委員長がそれで今回はいいかと全員に問うまでもなく賛成の雰囲気になっていた。誰もかれもが今の状況を脱したいと考えているようだった。
「それならさっそくお願い。二葉さんもお願いします」
赤松はいまだに不満そうな顔をしていたがとりあえず今回は太郎と二葉に移動してもらった。
太郎と二葉が部屋を出た時に桃川が緑谷の様子を見に行ったのか個室に移動していった。
そして緑谷が戻ってきたときにまた放送が流れた。
「えぶりわ~~~~ん。順調にゲームが進んでるね!ボクはとっても嬉しいよ」
その声に全員が顔を上げた。先ほどの宣言を思い出したのか暗い顔をしているものもいた。
「緑谷くんリタイア!ああ、残念。カラーズの皆さんねらわれてるのかな?あはははははっ」