放送
ドアが開くとそこには太郎と三船だった。
「よう、真人。一花ちゃんと楽しくしてたか?」
「えっ、そんなんじゃ」
「こらっ。一花が困ってるじゃない」
三船が太郎の頭をはたいていた。この様子だとあちらの教室も雰囲気はいいのだろう。
「太郎、三船さん。あっちで決まった方針について教えてくれないか?」
「ああ、それなんだがな」
太郎と三船の説明では配役の人数からグループ単位での移動は中止になった。
そこで再度全員に配役の開示を求めたが名乗り出たのは一人だけだった。
それは二葉。自分の配役が「犬」であると説明した。
もともと頃合いをみて名乗り出るつもりではあったみたいだがタイミングを逃してからはなかなか言い出せなかったらしい。
「なるほど。これで犬は太郎と二葉か。確かめるためにも二葉がこっちに来なかった理由は?」
「ああ、そこなんだがなもともとは二葉と春橋がこっちに来る予定だったんだよ。だけど二葉がぐずっちまってな」
「で、一花のことも考えて私とこいつがこっちに来ることになったの」
「さすがに一花ちゃんのグループ二人は行かせれないって意見が多くてな」
人選から見ては特に問題がないように思える。
「ああ、そうだ。太郎、お前の配役が書かれたメールって見せてもらえるか?」
「ああ、いいけどメールをお前に送れるが画面を見せるのはルール違反になるだろ?」
この言葉に三船は驚いた顔を、一花は納得をした顔をしていた。
犬に関してのルールとして自分の配役のメールは相手に送り確認させることができるが画面を見せることはできないらしい。なんとも中途半端なルール。
「ああ、すまん。で、もう一つ確認があるんだがこのゲームの勝利条件って何か覚えてるか?」
太郎と三船を見やると不思議な顔をしながら答えてくれた。
「それは放送でもいってたろ?最終的にこっちの教室にいたらいい」
「私もそうだと聞いてるけどこの質問に何か意味あるの?」
この反応だと犬に関しては勝利条件は羊と同じと考えていい。そして三船だがこちらも羊と同等の勝利条件の可能性が高いことから狼ではないと推測できた。
「いやいや、ただ再確認したかっただけだよ。それにもし三船が狼だった場合は勝利条件違うからコロッといってくれないかなと希望的観測があったりしてさ」
笑ってごまかしたが一花には何をしたかったのか伝わったようで納得しているような顔を見せていた。
「ああ、それから委員長からの伝言だ。真人を連れてきてほしいって」
「委員長からか?このまま移動をすすめたらいいのに」
「委員長にも考えがあるんだろ?」
「ああ、そうだな」
「ま、そのこともあった私がこっちに来たんだけどね」
「ああ、なるほど。一花さんと二人っきりにさせても大丈夫なようにという理由か」
「え?誰でもいいんじゃないかな?それだったら?」
「一花、あんた何もわかってないわね」
「えっ?えっ?」
戸惑っている一花を置いておいて太郎とともに出ていくことにした。
その際にスマートフォンに来ているメールが来ていることを確認した。
次はあちらの教室なので解析の能力は使えないのでせ設定はしなかった。
太郎がドアに手をかけた時にあの不快な放送が流れ始めた。
「えぶりわーん。ここでお知らせがあるよ!みんなやっとやる気になってくれたんだね」
一瞬言っている意味がわからなかった。
「黄村くん、残念ながらリタイアだね。ああ、残念だね」