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九話

 次の日、アタシは学校を休んだ。

 風邪をひいたのである。

 昨日、あれから家に帰って、桜のことを考えたが、結局どうすればいいかわからず、そのまま寝てしまった。

 そして今朝起きたら、身体が熱いし、だるかったため、担任に連絡の電話を入れ、桜にも休むという内容のメールを送ったのだ。

 その後アタシはベッドに戻り眠ろうとしたのだが…………

 数分後。

「眠れない……」

 まあ、無理もないだろう。

 昨日、最後に時計を見たのが夜の8時、そして目が覚めたら7時、あわせて11時間も寝てたことになる。

 そんなに寝たら、また寝るということは無理だ。

 アタシは暇潰しにマンガでもよもうかなと思ったが、今の状態では文字を読むだけで気持ち悪い。

 なので、せめて空気の入れ替えをしようとどうにかベッドから出で窓を開ける

 すると、窓から風が入ってきた。

 今の季節は、夏から秋への季節の変わり目なので風も少し冷たいが、心地よい。

 アタシはふと、桜のことを思い出した。

 昨日、桜は泣いていた。

 その時の桜の顔が今でも鮮明に思い出せる。

 アタシは桜にあんな表情はさせたくなかったのに…………

 ただ、最後まで楽しく遊びたかった。

 でも、その願いは叶えられなかった。

『ユカリはさ、その……わたしとキスしたい?』

 その時の桜は真っ直ぐにアタシをみていた。

 でも、アタシは答えることができなかった。

 もしもあそこで、アタシが何か言っていたら変わっていたんだろうか。

 桜を傷つけずにすんだんだろうか。

 結局アタシはなにもわからず仕舞いだった。

 

    


     桜視点


 クラスでは今、文化祭の出し物を決めているらしい。

 らしいというのは、わたしも一応その場にいるのだがユカリの件がきになってそれどころではない。

 朝、ユカリから休むという内容のメールをもらった時は、なんて返そうかと悩んだが今思えば普通に社交辞令のように「お大事に」なんて返せばよかった。

 昨日、わたしは家に帰ってからひどく後悔した。

 あんなこと聞くんじゃなかった……。

 今、冷静に考えれば、聞いてはいけないと解るが、あの時はそういう雰囲気になって聞いてしまった。

 でも、ユカリはなんも答えなかった。

 これは沈黙が答えということでいいんだろうか……。

 そうと仮定した場合、答えはどっちだろうか?

 いや、どっちでもないかもしれない。

 もしかしたら、ユカリはただわかんないだけかもしれない。

 本当はわたしのことが好きで、でもそれは友達としてでの好きじゃないのかと、疑って答えられなかったに違いない。

 そして、ユカリは自分の気持ちに気づいて告白みたいな。

 もし、そうだったらどんなに嬉しいだろう。

 でも、現実はそんなに甘くない。

 あの沈黙だって、わたしができるだけ傷つかないようにするための配慮だ。 

 もしもこれでユカリと友達でいられなくなったらどうしよう……。

 たぶん、ユカリならそんなことはないと思うけど……でも、もしかしたら……。

 不安になってきた。

 どうにかしないと。

 でもどうやって?

「工藤さん」

 わたしが考え事をしてると、黒板の前に立っている学級委員長がわたしを呼んだ。

「なんですか?」

 わたしがそういうと、学級委員長が頭にてを当ててため息をつきながら、

「話聞いてなかったでしょ?」

「すみません」

 ああ、そうだった、今文化祭の話してんだった。

 すっかり、考えこんでしまった……。

「んじゃ早く来てくれる?」

 学級委員長は教壇の机においてある、くじ引き用の箱を叩く。

 あれを引けということだろう。

 わたしは学級委員長の前まで行きくじを引く。

 そこには『ヒロイン役:佐々木春』と書かれていた。

 …………だれ?

 見よぼえがない名前である。

 わたしが疑問に思っていると学級委員長がわたしのくじを手から取る。

「あっ、ヒロイン役ね」

 そう言って、黒板に『ヒロイン役:佐々木春』と書き、その隣にわたしの名前を書く。

 よく黒板を見てみるとその他にも、同じように書かれている。

 これって……まさか……。

「どうしたの工藤さん?」

「これってなんですか?」

 おそらくあっているだろう推測を胸にしまいこみ、一部の期待を込めて学級委員長に尋ねる。

「はぁ、工藤さん本当に聞いてなかったのね」

「すみません」

「いいこれはね、まあ見て解ると思うけど、劇の役割よ」

 …………どうやらわたしはヒロイン役を引き当てたらしい。

 

 



  

   




九話目です。

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