八話
…………気まずい。
アタシは歩きながら、そう思った。
女の子同士のキスシーンを見たアタシと桜は、気まずい雰囲気になってしまった。
普段は意識していない相手なのに、キスシーンとか見てしまうと、思わず意識してしまう見たいなことである。
しかも、今回は女の子同士のキス。
どこからどうみても狙ったようにしか見えない。
でも、さすがにこのままの雰囲気でいるというのは、つらいな。
どうにかして、変えないとなこの空気……。
「あ、あのさっ、桜」
「なに?」
アタシが緊張した面持ちで話かけると、桜は下を向いたままこたえる。
「今日は楽しかったな」
「うん」
「いい天気でよかったな」
「うん」
「あっ、猫が!」
「うん」
「………」
「………」
………………どうしよう。
もう、『うん』しか言わないよ。
このままだと、学校とかで気まずくなる……。
考えるんだアタシ!!
だが、普段からあまり頭を使わないアタシがいい考えを思いつくわけもなく、無言のまま歩く。
そのまま数分が過ぎて、桜が足を止めた。
アタシも足を止めると、桜がアタシにギリギリ聞こえる声で、
「ユカリ一つ聞いていい?」
「うん、いいけど?」
なんだろうな、もしや桜もこの空気を変えようとして……
だが、アタシの甘い考えは次の桜の言葉で砕かれた。
「ユカリはさ、その……わたしとキスしたい?」
………………えっ?
何かの冗談だよな。
アタシはそう期待して、桜をみる。
だが、期待とは裏腹に桜は本気だった。
桜の瞳にはまるで、一つの覚悟があるようだった。
「…………」
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう………
きっとここで選択を間違えば桜を傷つける、でも…………。
「…………」
何も言えなかった。
別に、返す言葉がなかった訳じゃない、ただ、それらはアタシの本位ではない気がしたからだ。
アタシが何も言わないと桜は、
「ごめんね、突然こんなこと聞いて、今のは忘れていいから」
そう言って桜はアタシに背を向ける。
「それじゃ、また学校でね」
そう言って桜は走っていった。
忘れてか……忘れられねえよ。
だって、桜は泣いてたから……。
結局アタシは桜を傷つけてしまった。
そうして、アタシは1人帰路についた。
桜視点
ユカリと別れたわたしは1人帰路についていた。
わたしの……バカ。
今さらながら後悔が襲ってくる。
知っていたはずなのに……。
ユカリがわたしを友達としてしかみていなかったことを……
なのにわたしは…………。
八話目です。