六話
休日。
アタシは駅前で桜を待っていた。
周りを見渡すと休みだからか、人が多い。
子供連れの家族や恋人などが楽しそうに歩いて行く。
この駅の近くには、さまざまな店があり、休日になると、人通りがより一層増えるらしい。
さて、なぜアタシがこんな人通りの多いところで桜を待っているかというと、今日、桜と遊ぶためである 。
アタシはケータイで時間を確認すると、9時30分。
どうやらまた早く来てしまったらしい。
今日の待ち合わせ時間は10時なので、30分早くきたことになる。
さて……桜が来るまでなにしようか。
はっきりいって暇だ
どこかの店に入るという手もあるが、その間に桜が来るかもしれない。
それに、近くに興味がある店がない。
しょうがない、ここで待つことにするか。
数分後。
桜はまだかなー。
アタシは辺りを見渡すと、
「あっ、桜だ」
桜を見つけた。
だが、桜はまだアタシを見つけられないのか、辺りをキョロキョロしている。
「おーい、桜」
アタシが呼ぶと、桜が気づいたのか、アタシの方にやってきた。
「おはよう、ユカリ」
と、桜があいさつをするが、アタシはそれどころではなかった。
白いワンピースに、鍔の広い白い帽子。
それらが、桜の黒髪や白い肌にあっていて、清楚で上品なイメージを抱かせる。
アタシはしばし、桜に見とれていた。
「かわいい」
「えっ!?」
アタシが思ったことを口にだすと、桜はまるで林檎のように、頬を紅く染める。
「突然なに言い出すのっ!?」
「あっ、ごめんな、つい桜が可愛いかったから」
「ついって……そういう言葉はね……その……普通は恋人とかに……」
桜が小声でなにかをいっているが、アタシには聞こえなかった。
うーん、もしかして怒ちゃったかな。
きっと、かわいいて言ったからに違いない。
そうと決まればやることは一つだ。
「本当にごめん」
「えっ?」
アタシが手を合わせて謝ると、桜がキョトンとしている。
「これからは、言わないようにするから」
「えっ……それはどういうこと?」
「どういうことて、桜はかわいいて言われたから怒ってんでしょ?」
「えっ、別に怒ってなんかないよ」
あれ?
「だって、さっきアタシがかわいいて言ったら怒ってたじゃん」
「いや、それは別に怒ってたわけじゃなくてその……」
「……?」
「…………驚いたの」
「えっ?」
「ユカリいきなりかわいいなんていうから」
「それはほんとごめん」
「謝らなくていいよ、だって、嬉しかったから」
「そうか、そうだよな」
アタシはなんてバカだったんだ。
かわいいて言われて喜ばない女なんていないだろうな。
「特にユカリにかわいいて言われたからね」
「それはどういうこと?」
「わからないの?」
「うん」
アタシが素直に答えると桜は呆れた顔でアタシを睨んだ。
「えーと」
ヤバい。
考えるんだアタシの脳みそ。
アタシは日頃まったく、使っていない頭をフル回転してみるがまったく、思いつかない。
「ごめん、わからないや」
そういうと、桜はハァとため息をつく。
「本当にわからないの?」
「うん、ごめん」
すると、桜は今度は真面目な顔になり、
「んじゃ、教えてあげる」
と言って桜はアタシの頬に手を添えて顔を近づける。
キスができそうな距離。
「なっ」
アタシがそれを意識して顔が紅くなる。
桜も意識したのか、頬がほんのり紅く染まっている。
「さっ、さくらっ!?」
アタシは離れようとするが、いつの間にか、腰に手を回されて離れられない。
「なに? ユカリ」
とあわてているアタシに対して桜は落ち着いた様子で話す。
「なにじゃないよ! これじゃまるでキ、キスするみたいじゃないか!」
「そのつもりだけど」
「そんな……なんで急にキスなんか」
「ユカリが好きだから」
「なっ……」
「知っているでしょ? わたしがユカリのことを好きなこと」
「うん」
忘れる訳がない。
桜はアタシに告白したんだ。
その時は、友達ができたて喜んだけど、その夜、冷静に考えれば告白されたんだと実感が湧いたものだ。
「覚えててくれたんだ、んじゃ今はキスはやめとこうかな」
そう言って桜はアタシから手を離す。
「あっ……」
「どうしたの? ユカリ?」
「いや、何でもない」
「そう」
桜は特に気にすることはなかった。
ハァ、名残惜しいな。
桜にもっと触れていたい。
それに、あのままキスされても……よかったかもしれない。
「それとさっきの答えだけど」
さっきの……ああ、あのことか。
「好きな人に誉められるて嬉しいでしょ」
「あっ、確かに」
なんて簡単な答えだろう。
気づかなかった自分におどろくな。
「納得したみたいね」
「うん」
「それじゃ、行こう」
そう言って桜は手をアタシに差し出す。
手を繋ごうということなんだろうな。
アタシはその手を取ると、桜が少し笑ったような気がした。
アタシと桜は手を繋いで、歩き始めた。
遅くなってすいません。
では、六話目です。