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漆黒の花嫁  作者: つかさ
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誓いの血を

ずっと廊下を進んで行くと、とても厳重に鍵がついた扉が現れた。

とても奥の廊下で、こんなものがあるとは初めて知るほどだ。

その鍵をワイナーがどこからか取り出すと、重い音とともに鍵があく。


中に入ってみると、埃っぽくてむせそうになった。真っ暗で何も見えない。

だがワイナーがなにか呟いた途端道沿いに炎が灯った。

薄暗くも明かされた部屋はだだっ広く、だが道は奥へ一直線に続く長い通路しかない。

「ここへ誰かが入ったのは70年も前だね。昔は興味本位で入ったこともあったけど、ひさびさに来ると薄気味悪い」

前を歩くワイナーが言葉とは裏腹に明るくそう言った。何か思い出すことでもあるのだろう。


ワイナーに続いてひたすら真っ直ぐ歩いて行くと、大きな像が見えてきた。

とても大きい女の天使。天使と言うよりは女神に見える。その像は薄気味悪い空間とは別に神秘的だった。

なんの像かと見上げていると、ライナーが気付いてか説明してくれた。

「これはラグア・エイ・グライジェルと言うアースよりももっと昔、初代覇王です。とても珍しいキュラムだったそうですよ。魔術を扱えるキュラムでね。昔で魔術を扱えるのはこの方だけ。今でこそ微かながらも、それでも一握りしか扱えない。かなり強力な戦士であったそうです」

「どういう死を?」

「珍獣を殺したのですよ。君は知らないだろうが昔珍獣は一体殺されています。この旧覇王の手で、ね。だがそれを見たものなど生きてはいない。それでも私たち覇打獣たちは信じています。敬意を持ってね」

行きましょうかとワイナーが促したが、先はない。

するとワイナーがナイフを取り出すと自ら左手を斬った。

「なっ……」

「見ていなさい」

血が流れる手をワイナーが像の足元に突き出るようにあった皿の上にかざした。

ポタポタと血が落ちていく。

……少しだけ、その血に寒気がした。

すると像の足元に光が満ちた。

「ここへ行くのですよ。これは覇王か覇打獣の血をあの皿へ吸わせないと現れぬようになっている」


その光の中へはいっていくと、また新たな空間へ出た。

そこはさっきとは違って眩しいほど明るいドーム型の大きな広場だった。円状になった床にそうように、丸く線が引かれ、円の中には見たことのない文字や不思議な線が形どられている。

「円の中心に立ちます。そこで君は少しの間静かにしていてくださいね」


円の真ん中にはまた人が5人ほど入れるような大きさの円が描かれていた。

「これからいいと言うまでしゃべらないこと」

「わかりました」

するとワイナーはなにかを唱え出した。言葉が複雑で何を言っているかはわからない。

驚いたことに、少しずつ円が光だした。青白く円全体が輝く。暖かい風がどこからか吹いた。

突然ワイナーが自らの首をナイフで斬った。

血が流れ服が赤く色ずいていく。その血が地面にこぼれた瞬間、ドクンと円が波打った。

まるで生きているかのように。

「ロア、私の血を飲みなさい」

「は?」

「言ったでしょう?少し寒気がするものですが、と」

「血を飲むって、まさか首から……?」

「もちろん」

笑っているが笑ってない顔でワイナーが微笑んだ。

「私が貧血で倒れるまでにやってくださいね」

「……」

実際は覇打獣だ。倒れるなんてそうそうないだろうが、僕はためらいつつワイナーに近付いた。

「どれだけ飲めば……?」

「適当に」

乾いた笑が漏れた。まぁいい。やってやる。

ワイナーが僕が首に顔が届きやすいよう少しかがんだ。


僕はワイナーの首に口付け、血を飲んだ。


暖かくて塩っぽい血がどっと口の中に入りむせ返りそうになったが、我慢する。


いっそのことはやく終われとかなりの速さで飲み込む。

そうしているうちに、体に変化が現れた。


ワイナーの脈の音が聞こえる。体が熱くなる。そしてどこか全身に力がみなぎるような気がした。

僕の血が騒いでくる。もっと力を、と。


意識が遠のきそうになったところで、ワイナーが僕を突き飛ばした。

勢いあまって尻もちをつく。


「君は……もういいと言っているのに血に翻弄されてしまって。少し焦りましたよ」

ワイナーがまだ血があふれる首を撫でながら言った。

「す、すいません」

「さ、次はロアが首を斬りなさい」

「は、はい」

口の中が異様に鉄臭くなんとも気持ち悪い。だがぐっと我慢する。

ワイナーが手渡してきたナイフで、今度は自分の首を斬った。

「立ち上がって」

ワイナーはなんのためらいも見せずに僕の首に顔を寄せた。

ごくりと血を飲む音がする。

しばらく飲んだあと、ワイナーはふっと離れた。

ワイナーの口には血の後が残っているが、それがなんとも不気味だ。


最後にワイナーがつらつらと言葉を話し、円は徐々に光を失った。

どうやら無事に終わったようだ。

「……ふぅ。これで、晴れて君と私は尊の関係です」


本当に変わった。

力が今までより湧き出るようだ。きっと戦闘力がついていると思う。


「ロア」

ふいにワイナーに呼ばれて、僕は反射的に目を合わせた。

「記憶を、私の記憶を見、何か聞きたいと言うのならいつでも来なさい。私は隠さず答えよう」

何か、意味深なことを感じさせる発言。

「……分かりました」

「それと、念を押すが私とロアは尊だ。尊となることでもちろん互いの気配がまず感知できるはずです。それによってお互いの気が分かるためにどれほど弱ってきたか、はたまた莫大なエネルギーを使っているか、よく分かります」

尊とはとても便利な関係らしいな。

「戦いにおいては信頼がいると言いました。それは互いの命の危険が迫った時にも試されます。まぁ、それはいつか起こりうるかもしれませんね。そうならなければ分からないでしょう」

「……記憶というのは、どのタイミングで見えるのですか?」

「様々ですよ。それはいつどこで見えるか分からない。ただロアの知らぬ土地に過去で私が行っていた場合、ロアがその土地で経験した私の記憶を垣間見る、などが多いようですね」

とゆうことはいきなりばっと来ると言うことだな。それが戦闘時じゃなければいいけれど。

「それと、デスノアの任務は減らさすようにします」

「なぜ?」

「私との特訓のため、そして黒色の少女のため、仲間のため、色々と必要ですからね」

ふっとギルティがよぎった。

僕がデスノアとして闇に駆けることが減るということは、ギルティは一人だ。

「……ギルティのことも、減らしてはやれないでしょうか」

ライナーはふと考えるそぶりを見せた。

「難しいですね。一応私なりに動いてみましょう。確かにあの子は、少し回復が必要な域に達している。心の限界が近いはずだ」

「ありがとうございます」

さて、とワイナーが言った。


「誓いの契約は済んだ。ここから出ましょう。話しなら私の部屋でも充分だ」



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