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漆黒の花嫁  作者: つかさ
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隊長の護衛役

「小賢しいにも程がある。目に余るものだなあいつらめ! そして何だ、その声は?姿を見せずして宣戦布告とは己の力量をおごっている!」

ギルティの予測通りミスター・マヘッダは怒って見せた。言葉と表裏一体するように、全身で悪魔への嫌悪をあらわしている。

「これは由々しき事態だな、アース」

ここまできて初めて口を開いたミスター・ゼルヘブンに、デトラン全員が意識を集中させたのではないだろうか。なにせ彼の声は低くどこか心を落ち着かせる様なものが含まれていた。

僕はその声の主を観察していった。普通の顔で、普通の背丈。優しそうと言えば優しそうだし、怖そうと言えば怖そうだ。特に特徴はない。その髪と瞳を除けば。ミスター・ゼルヘブンの髪色は、春に茂る綺麗な草原のような透き通る美しい緑だ。そしてまるでそれを引き立たせる様な、こちらは夜に月明かりで輝く森の様に深い緑。どちらも美しいが、どちらもあるからこそ両立する美しさ。

「私が直接戦場に出向こうか」

「なっ!?ミスター・ゼルヘブン、隊長であるあなたがその様な事はなさらなくとも、デトランの中から向かわせますよ!」

テリバーさんが焦ってミスター・ゼルヘブンに言った。

総長も隊長も、それぞれの拠点で仕事をこなしている。どういった仕事なのかは知らされていないが、基本戦場には出てこない。テリバーさんの言い方なら、出てこさせないという方が正しいのかもしれない。それくらい彼らは重宝された存在なわけだ。つまり、デトランの中での最後の切り札となる。そんな存在の彼が自ら動くと言いだすのに対してテリバーさんが止めるのは、確かに頷ける。まあ、僕としては隊長も戦うべきとも思わない事もないけれど。

だがミスター・ゼルヘブンは穏やかな笑みをたたえてテリバーさんを手で制した。

「私もデトランなのだよ、テリバーよ」

「そ、それはそうですが……」

「そろそろ体が怠けてきた。この機会だ、先輩として前代未聞の事件の先頭に立とうとしようじゃないか」

「僕も少し興味があります。おともしますよ」

そうワイナーがミスター・ゼルヘブンに言うと、アースが呆れた様に笑った。

「全く、好奇心旺盛なのは昔から変わらぬな」

「もちろん文句は言わせませんよ、アース」

「何を言っても聞かんだろう?ディールよ」

ふふっ、とワイナーが笑った。一部の女性デトランから感嘆の声があがる。

「ならばヴァイスとディールに何人かの護衛をつけて、一番気の強い悪魔を追ってもらおうかの。さすがに手練れと言えど強い気を抑える事は難しいはずだ」

「わかった」

ディールが短く了承する。

「ふむ、テリバーよ、心配せずとも彼らを信用してやれ。手強い敵であったとしても無傷で帰ってくるとも」

「……かしこまりました。ですが、もしもの時はすぐに連絡を。こちらからすぐに援護を出せる様にいたします」

「もしもの時なんぞない。安心しろテリバー」

ミスター・ゼルヘブンの言葉にテリバーさんは躊躇いがちに頷いた。

「デトランの諸君よ、話はこの通りだ。不安な事も山ほどあるだろうが、気を長くして結果を待っていてくれ」

それでは、とミスター・スカイウォーナがしめくくる。

「以上だ、解散!」


「護衛とか選ばれたら最悪だよな。隊長二人の護衛だぜ?どんだけ責任重要なんだよ」

「ワイナーもいるしね。ありえないな」

集会が終わっても人が少し減るまでまだ座って話をしていた僕らは、あまり周りに聞こえない様に話しをしていた。

「ちょっといいかな、ロト」

……まさか。高らかな足音で近付いて来たその男、ミスター・ルーカスに呼ばれた事で全身に悪寒が走る。嫌な予感しかしない。

「……はい」

「君を護衛の一人にしようと思うんだ」

やっぱりね。あなたが近寄ってきた時点でそうなると思ってましたよ。

けれどここは僕も反抗した。

「僕には隊長を護衛するほど力が備わっていません。もっと他に長年務めてきたデトランを護衛にした方がよいのでは?」

「なんとなんと!」

ミスター・ルーカスはその言葉に大げさに驚くと、人差し指を左右にふった。

「そんな謙遜しなくていいんだよ。ロト、君はかなりいい腕をしている。ここ最近の任務でそれを見させてもらったよ。君はふさわしい」

「しかし未熟な部分で逆に足手まといになるかもしれません」

「はっはっは、隊長の足手まといになる様な戦士を私は選ばないさ」

そう笑うとミスター・ルーカスが僕の肩に手を置いた。……なんだか少し力が強い気がする。

「これはとても名誉だよ。君にとっても、ソルジャーにとってもね。報告は後日改めてしよう! それじゃあ体を鍛えて準備しておいてくれ」

僕が口を挟む暇もなくミスター・ルーカスは足早に去って行った。

「…………ロア」

「なんだよ」

「……まぁ、その、なんだ」

ぼすっと左肩に重みがかかる。

「頑張って来い」

パンっと僕はグラルダーの手を叩き落とし、足音も荒く乱舞の間を出た。











その夜知らされたテリバーさんの報告を受けたのは、僕ともう一人の護衛役、ギルティだった。ギルティもギルティで不満らしく溢れるオーラに肌がピリピリする。だが僕も負けじと物凄いオーラを放っていることだろう。

報告を受けた後、ギルティにいつもの様に話しかけてみた。ギルティの受け答えに表向きの態度は変わらない。だがやっぱり内側に閉ざされた心は同じままだった。何かあったのか聞いてもきっと流されるだろうと思い、後は何も言わずそっとしておいた。今回の護衛任務ではギルティの様子をまた見張る様にしよう。


「重い任務だ……」

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