忌み子と少女
重たい足を、進ませる。
見上げると、そこには空。
「綺麗だね、ティラナ」
初めて見るその青は、僕の心と裏腹に、
とても美しく広がった。
またいつものように村人達が僕を戒めにくる。
「汚らわしい!」
「お前など生まれてこなければ良かったのだ」
「疫病神!」
「薄汚い悪鬼め!」
僕には言葉がわからない。知識を与えてくれる人などいないから。それでも表情や口調などから、それは僕をののしるものだと感じ取れた。
今日はいつもよりも暴力が酷い。殴り、蹴るのは当たり前で。斬りつけられ、骨をへし折らんとばかりにものすごい強さで踏みつけられる。
どんどんエスカレートし、意識が途切れそうになってくる。
「おい、これ以上やったら死んじまうぞ」
「かまうもんか! この忌み子が死んだところでどうでもいいことだ」
意識が飛ぶ寸前、誰かの叫ぶ声がした。
「やめなさいよ!!」
ダレ?
重たい瞼を開ける。
そこには、眩しく輝く金。
「ティラナっ!?おま‥…」
「この子が何したっていうの!?大人がみっともない! 出ていきなさい!!」
慌ただしく小屋を出る村人達に、その金はため息をついた。
そしてくるりとふりかえり僕を見て、そっとしゃがみ込み手を差し出される。
「大丈夫?」
聞いたことのない言葉。意味も何もわからない。
けれどそれは、優しく僕の心に響いた。