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しばらく歩いていたら湖についた。でもよく見たら湖の水は歩いてきた山から流れてきているので当然だと思う。


しかし、湖の先にはまるで見てくれといわんばかりの紅い建物が建っている。このあたりの地図があればいいけど……。


やっぱりこのあたりは土がぬかるんでいて歩きづらい。ぬかるんでいないところも足が滑りやすくてやっぱり歩きづらい。


……いっそのこと泳いで渡ろうか?まず無いけど。


ピキピキッ。僕は今怒っていない。怒っている人も近くにいない。誰も怒っていない、凍っているだけで。


夏なのに何故かいきなり湖が凍り付いて足場がぐちょぐちょの僕がいる場所も凍り身動きが一瞬にして取れなくなった。氷は運良くももの辺りで止まったが当分動けそうにない。










半日以上は経ったと思う。もうすっかり夜になったが湖は溶ける気配をみせずに表面から冷たい冷気を出している。ずっと立っているのが少し辛い。










日が昇り昼頃になったが湖に変わりはない。どうやら僕が足止めされている場所は人通りが少ないようだ。










更に1日経ったが紅い建物が僕の位置から見えない所で何か壊れたようだ。建物の周りの空気が紅くなっている。










2日経ってその紅くなった空気が僕の周りに流れて来た。空気がなんか鉄のような血のような匂いがして気持ち悪くなったが、吐いてもどうにもならないので我慢した。










その夜、ずっとこの気持ち悪い感覚は収まらず吐いてしまった。だが吐くような食べ物など無く涙が出るほど、そしてそれ以上の胃液を吐いていた。










日も昇り、吐く体力もなくなった僕は力無く立っていた。それも立っていたのは氷が倒れる事を許さずにいたおかげで氷の影響がない上半身は前屈のようにダラーッとしていた。


「…………これは酷いぜ」


僕は誰かきたことがわかったがその足音も聞き取れなかった。


「……この天狗は偶々巻き込まれたみたいだな。弾幕も撃てない下級妖怪が何でいるのかは知らないが……」


「……ガハッ、ゴホゴホッ、ゲホッ」


僕は喋ろうとしたが胃液で喉を痛めたのでその痛みで咳や血が出るばかりで喋れない。


「なっ!まだ生きてるのか!?ちょっと待ってるんだぜ!」


そういうと彼女は僕の周りの凍った土を吹き飛ばして氷ごと僕を箒で運んでいった。










全く、今日はツイてないぜ。茸の採取へと久し振りに外に出たら(念の為にいっておくがずっと研究していたからだぜ)空気が紅くなっているし、何かの異変が起こったと思って取り敢えず湖の方に向かって森を出たら妖精に絡まれるし(そこはきっちり伸してきたぜ)妖精の被害者に遭うし……ちょっと鬱ってきたぜ。


「あ、さっきのまほうつかっ、ちょっとなにすんのよ!はなしなさいよ!」


「チルノちゃん!?」


「煩い!お前のせいで天狗が一人ひどい目に逢っているんだから大人しくしてるんだぜ!」


「あんたこそうるさいのよ!さいきょーのあたいにさしずするんじゃないわよ」


「だったらこの天狗の足を見ても同じ事がいえるのか?」


私は箒に括り付けた天狗を見せるが、この妖精は態度を全く変えない。


「あたいはわるくない!わるいのはちかくにいたこいつなんだから」


「ならこの天狗が目を覚ますまでお前が近くにいればいいだろ」


「うえーん、まってよーー」


「あんたはあたいを……あたいを……えと、なんだっけ?」


おい、数秒前のことだろ!


「お前はこの天狗のそばにいればいい妖精だってことだぜ」


「こいつといればさいきょーになるの?」


「おう、なるぜ」


「そっか、さいきょーになるのか」


「ぐすっ、えぐっ……まって、まってよ……」


「わかった。あたいこいつといっしょにいる」


「よしっ。ならとっとといくぜ」


やっぱり妖精だな、楽勝だぜ。


少し妖怪の山に寄り道するけれど、それくらいならあいつより早く解決して研究資金を稼げるぜ!










なにかあたたかい感じがして目を開けると広がってきた景色は同じ茶色でも凍った土でなく、木の天井であった。


まわりを見るとそこはどこか見覚えのある間取りで、知っている顔や知らない顔があり全員僕が起きた事に気付いていない様子だった。


外と見ると夜の闇に包まれているので僕は身体の疲れを取るためにまた眠った。










また目を覚ました時はほとんど真上に昇った時だった。


「あ、おきましたか?」


近くにいた彼女が僕が目を覚ました事に気付いて声をかけてきた。


「はい、……えっと、此処まで運んでくれたのは貴女ですか?」


「いえ、わたしではないですよ。いまはここにいませんから」


「そうですか……ではその人の名前か特徴を教えてくれませんか?」


助けてくれたらお礼をするのは基本だからね。


「………………えっと、…………その……………………あっ!チ、チルノちゃーん!おきたよーー!」


どうやら僕を助けてくれたのはチルノさんのようだ。恩人を相手に横になったままでは失礼だから多少無理をしても立って挨拶をしてこよう。


ドサッ。足に力が入らなかった。一体何日動かしていなかったんだろう?


「ほら、チルノちゃん……だ、だいじょうぶですか!?」


「大ちゃん、こいつおきてるの?」


僕の失態で空気が一気に冷え込んだのが手に取るようにわかる。この山ではろくなことにならないな。


「あーいきなり変な姿ですみません」


「あ、おきてた」


「チルノさん、助けてくれてありがとうございます」


「あ、うん」


「それで……何かお礼がしたいと思っているんですが」


「…………………………」


……何か喋って。それかせめて顔に出してくれないかな?


「それで?(素)」


冷たい!空気が凄く冷たいよ!冷や汗が止まらない、誰か助けて下さい!


「あの、ほんとうにだいじょうぶですか?かおがわるいですよ」


心配気味に罵倒されたのは初めてだよ。


「だ、大丈夫……多分」


「……やっぱりあたいがいるから」


「ち、ちがうよ。チルノちゃんはわるくないよ!」


せ、精神力が……ポーカーフェイスが……


「……あたい、かえるね」


「チルノちゃん……あ、あなたもげんきになってください」


気付いたら2人が部屋から出て行き、緊張が収まったのか冷たい空気は収まって静けさに包まれた。椛さんにもお礼はいうべきなのでまた一晩お世話になるだろう。

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