幻想入り
……はじめまして、僕の名前は小宮山友則です。
今は7月の終わり、中学に入って最初夏休みに入ったところです。
この時期なら大概の人は早めに課題をしたり部活動をしたり小学校を引きずって遊んでいたりするでしょう。
そんな僕が夏休み最初の出来事は……
……幼なじみの四十九日でした。
僕の幼なじみ、横地花梨は幼稚園の頃からアニメや漫画の類が大好きで、小学校3年あたりから何かと僕にアニメなんかをを観るように押し付けてきた。深夜アニメも録画して観るように言ってくる。
正直何が面白いのか全くわからないが、観ないとすぐ話しが止まりバレてしまう(僕1人の部屋がないので逃げられない)のでいつも仕方なく見る毎日が続いていた。
中学に入ってお小遣いが上がったことを見計らった花梨はあろうことかテスト1週間前の休みに秋葉原へ買い物に行くと僕を半ば無理やり連れ出して出掛けた。少し裕福な花梨が若干羨ましく思った。
漫画や人形をたくさん買った花梨(僕は荷物持ちになった)は少し汗をかきながら前を歩いている。僕はかなり汗だくで若干ふらついてきたが、花梨には絶対疲れたことは気付かれないように気張ってついていった。
最寄り駅まで文句一つ言わずにいたが、その階段を降りようとした時にすれ違った学生のカバンと僕の荷物が軽くぶつかった。
たったそれだけの小さなアクシデントだが丸1日荷物を持ち歩いた僕の足は崩れ落ち、2、3段先に降りていた花梨を巻き込んだ。
結果的に、花梨の体は僕を衝撃から守り僕は擦り傷が出来た程度だが、花梨は僕が上乗っかっている状態で二人分のダメージを受けて、血がドクドクと出てきて、いくら呼びかけても返事を返さなくて、救急車が来て隊員に花梨は助かるのか聞いても僕に顔を向けず、答えも返さないまま花梨を連れて病院へ向かった。その時、何故かサイレンは全く聞こえなかった。
僕は初めて人……生物の死を目の前で見、受け入れなければならない。
僕は学校を休んで花梨の葬儀に参加した。今の僕にはテストよりも重要な事であったから。
四十九日が終わった日の夜遅く、僕は1人墓場に足を運んだ。理由はなんとなく……とは流石に言えない。
ただ、何かによばれたような、みせられたようなそんな感じが残りここにいた。
ただ何かをする事もなくぼーっと空を眺めていると、流れ星が1つ見えた。
初めて流れ星を見るが、どうしてわかったのかというとぼんやりとした光がゆっくりと、でも他の星よりは速く動いているように見えたのだ。
しかし、次第に他の星と変わりない程動かなくなり目を擦っただけでわからなくなってしまった。
そろそろ帰ろうと諦め、家路につく途中、少し開けた場所まで進んだ辺りでゴオォとそんな音が聞こえた気がした僕はふと止まり、辺りを見た。が、その次の行動を僕は起こさなかった。起こせなかった。
僕のすぐ耳元でとてもヘンテコでおかしな音が聞こえた。その音を聞いて、聞いたと理解する事が僕に出来た最後の行動だから。
……ふと意識が戻り目を開けると、目の前に白い服を着た人達が並んでいて後ろを向くと目に生気がない人達が並んでいて、僕もその列に並んでいる事がわかった。
周りを見渡すと、白い霧が薄くかかっていて草は全く生えていない。
少し経って僕は僕が死んだとわかった。○太郎の実写でこんな感じのシーンを思い出したからだ。
つまりこのまま進んでいけば恐らく地獄に僕は行くことになるだろう。見たところ死人以外に近くに人はいない、そう確認した僕は列から外れ最後尾に向かって歩き出した。
……僕は列から外れてからどれくらい時間が経ったのだろうか。
注意深く歩き、何かの気配があれば列に割り込みやり過ごす。ずっとコレの繰り返しで精神が疲弊仕切っている。それでも遠くにずっと聞こえてくる音を聞いた事で気力を振り絞って頑張って歩いた。
聞こえてきた音の正体は流れる水の音、三途の川だ。暫くここで待機してチャンスを待とうと思う。
歩いた時より数倍は我慢しただろうか。死人を連れてくる人がほとんど同じ方向から来るので見てみると、小船が何槽もあり対岸から漕いでくるのが見えた。
隙をついて渡りたいが、其処までがまた時間がかかりそうだ。
……死んで眠る必要がなくなったのは、常に相手の行動を見れる反面他の感覚、特に時間に対しては凄く鈍くなったと思う。まぁ少なくとも今はそれで良かったと思うが。
それからまた暫く経っておそらく飽きたのだろうか、見張りが船を漕ごうとしたのであえて堂々と対岸に渡ろうと思う。
「あの、すみません」
「ん?……ハァ、はいはい死人は早く列に並んで下さいね」
「違います。閻魔様に『アナタは何故此処にいるのです。早く戻りなさい』と言われたので来ました」
「まさか、映姫様がそんな事いう訳ないでしょう。嘘をつくと罪が重くなりますよ」
「あと、サボっている死神にうんたらかんたらも」
「……映姫様ですね。わかりました向こう岸まで送ります」
この死神はいつもサボっているのか。だからこういう不祥事を起こすのだろう。
「はい、着きましたよ」
「ありがとうございます。怒られないようにして下さいね、それでは」
「はい、通行料払って」
誰?このお婆さんは。
「お金持っていません」
「じゃあその服を頂こうか」
「え?」
思わず僕は死神に顔を向ける。
「アナタ奪衣婆を知らないの?」
……あ、なるほど確かに。
「ところで一緒にいるはずのお爺さんは?」
「あいつは最近持病が悪化して今はいないよ」
あの世って……緩いな。うおっ!
「い、いや、流石に下着は勘弁してくれますか」
「なにいってるんだい下着も立派な服じゃないか。仕事はちゃんとするよ」
「ううっ……死神さ〜ん」
「あやつはもういないよ、あんたがさっき『それでは』と言っただろ」
……諦めるしかないのか。
Q、主人公はどうして現世に還るのか理由がわかりません。
A、一応還る理由となる設定は存在しますがまだ教えられません。
なので現時点では物語の都合上とさせて頂きます。