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ミレニアムの夢

作者: 亜久里 恵

生まれたときから、ずっとずっと恋してる。

あなたを見たその時から、私の心はあなたのもの。

あなたに近づきたくて、必死にあなたを追いかけるけど、あなたは振り向くことはない。私を見て、私だけを愛してと、そう思うけど、あなたはこの世界の絶対神。すべての民を愛している。ああ、あなたの光が闇夜を貫く。あなたの愛が光となって、この世を照らす、この瞬間が今の私のささやかな幸せ。


「姫」


私を呼ぶ声がする。でも、それは私が恋焦がれる光の神の声ではない。


「また、光の神を見ていたのですか」


そして、私を抱きしめるあなたが、私は憎い。

見えぬ鎖で私を捕らえ、放さぬあなたが涙が出るほど恨めしい。


「わたくしを解放してください。海の王」


彼の答えは常に同じ。


「それは、できません。愛しき人」


初めて会ったその時から、私の望みを知っているのに、それを阻む海の王。光の神の下へと飛んでいる私をその力で捕らえたあなた。あなたが私を想ってくれていることは、知っている。でも、私の心は光の神だけのもの。受け入れることなどできはしない。


「わたくしは、あなたの想いに答えられません」


それでも海の王の青き瞳は揺るがない。


「わかっています。ですが、あなたを解き放つ事はできません」


「どうして!」


海の王は哀しそうに微笑みながら、いつも同じ言葉を発する。


「あなたがいなくなれば、私は哀しみに溺れ、私が守るべき、地上の命を滅ぼしてしまうでしょう」


「そんなのわたくしには関係のないことです」


そして海の王は私の身体を強く抱きしめる。


「その通りです。あなたに身勝手だと、詰られても、理不尽なことをしていると分かっていても、あなたを失いたくないんです」


そうやって、私はいつもこの方の腕に捕らわれる。

だけど、海の王の腕の中で、私はいつも夢見ている。

光の神とともにこの空で一緒に輝ける『そのとき』を。



            *


腕の中で身体を硬くし、心を閉ざす愛しき姫。

分かっている。姫の心には光の神しかいないのを。だが、姫を一目見たその時から、私の心は捕らわれた。そして、我が手は無意識に姫へと伸び、そして私の傍へと縛り付けた。心が手に入らぬのなら、体だけでもと。


だが、そう思いながらもかすかな望みにすがりつく。


いつか私を見てくれるのでは?


ミレニアム。


新しい世界の幕開け。


わたしは、いつも夢見てる。


姫が私を愛してくれる。そんな世界の幕開けを。


「あなたを一生放さない。愛しています。冷たく、そして美しい白銀の月姫よ」


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