Part 1-4 Key Points and Relevance 点と線
USS DDG-65 Benfold, Destroyer Squadron 15, U.S. 7th Fleet 595 nautical miles east of the Philippines in the Pacific Ocean., 01:43 Dec. 22/
Gregor Neighborhood Anzoategui Capital Sil Altour Nku Venezuela, 08:17 Dec 21/
NDC HQ-Bild. Chelsea Manhattan NYC. NY. 13:27 Dec. 21
12月22日01:43フィリピン東方太平洋海上595海里 米国第7艦隊第15駆逐戦隊所属ミサイル駆逐艦DDG-65ベンフォールド
12月21日08:17 ベネズエラ アンソアテギ カピタル・シル・アルトウル・ンク・グレゴル近隣/
12月21日13:27ニューヨーク州ニューヨーク市チェルシー地区NDC本社ビル
船殻の激しい揺れに合わせAN/SQQー894/6統合対潜システム場所換えしワークチェアの背もたれにふんぞり返っていたガブリエル・ルイス:大尉中等ソナー技術官はコンソールのスペクトラム画像を漠然と見ていた。
百三十三海里走り、チャレンジャー海淵が近づくと予測したよりも海温上昇値が顕著で水中音の伝播を担う収束帯の設定マップが大きく崩れていた。
水中の艦影を探るには伝播してくる音波の方角と減衰して伝わる温度や海水塩分層の判別から距離や深度を判別する。
その作戦域の海水温や塩分などの不純物濃度、海底状況などを水測予察器で対潜水艦戦闘用電子海図に構築し、長距離伝播のトンネルである収束帯のエリアを作成する。
その収束帯分布図が精密に作成されているほどに自動目標運動解析の精度が上がり対潜水艦戦闘で優位に立てる。
ガブリエル・ルイス大尉はこの海域ではもう収束帯が崩れ二海里ほどにしか正確に潜水艦を捕捉することができないと危機感を抱いた。
この方面の外洋にまで最近は中国の潜水艦が頻繁に徘徊しており、合衆国空母艦隊のは神経を尖らせていた。
ガブリエルは主任ソナー・テクニシャンを起こすか迷っていた。
朝になり主任が顔を出したら青ざめるだろうと大尉は思った。
二十四時間前に計測したチャレンジャー海淵から三百十海里離れているこの海域ですら前回の測定から千フィート深海の水温が七度も上がっていた。
もうこの作戦域の海温上昇は海底火山ぐらいしか原因が考えられなかったが高速で航行しているのでソナー長波帯ブロードバンドしか使い物にならず、地殻振動波の聴音はまず使い物にならなかった。
いきなり一キロヘルツのノイズ帯が東の海域からブラインドになり始め大尉は驚いた。
その円形の一部に見える欠けの規模を知るために同じコンソールの上のモニタを切り替え聴音波帯をより長波帯の五百ヘルツまで下げ表示させると広域の影響されたノイズ消失の形状が表示され、それが正確な球状に見えることにガブリエル・ルイス大尉は困惑した。
海底地形や塩分濃度、温度変移があっても数マイルに及ぶような正確な形状を形成することは有り得なかった。
フライIAのベンフォールドは後期フライト型の同型艦より破天海域での速力が速いが、細長い船体はロール傾向が強くしかもVLS増設でトップヘビーなため艦測ソナーの聴音が乱される傾向があった。
CZが不確かなため、接近しピンを打ち正確な聴音データを取る必要があるが、今、出来ることは少なく規定通り彼は艦長に報告を上げた。
『ブリッジ、艦長代理キングトンだ。どうした?』
「ソナー、ルイスです。おおよそ三百海里先にノイズ消失の領域が拡大してます。現在球形の壁に塞がれた状態ですが、こんな現象は初めてです。すぐに危害はないと思われますが、九時間後ピンを打ち確認取ろうと思います」
『減速して精密聴音してもいいぞ』
「いえ、艦長代理。チャレンジャー海淵の状況が最も懸念されるのでこのまま維持でお願いします。以上です」
『ブリッジ了解だ』
艦内通話を切りガブリエル・ルイス大尉はノイズ消失域の直径が九海里に及ぼうとしてると苛立ちを募らせた。
メイド達が朝食の準備している最中、戦略情報を担当させているロレンツォ・ラミレスが足早にリビングへ入って来て、ソファで新聞を読んでいたアントニオ・G・エレーラはロレンツォから声掛けられた。
"Jefe, por favor mire las noticias."
(:ボス、報道を見て下さい)
そう言いロレンツォがボスの座るソファ前の硝子テーブルからテレビのリモコンをつかみ取り操作して韓国製の大型液晶テレビを点けチャンネルを切り替えた。
"──Según un comunicado de la Casa Blanca, la Armada de Estados Unidos atacó una pequeña embarcación con bandera venezolana en el Mar Caribe frente a las costas del territorio caribeño británico de Montserrat alrededor de las 7:00 de esta mañana..."
(:────アメリカ合衆国ホワイトハウス発表によりますと、合衆国海軍は今朝07時ごろカリブ海英国領土モントセラト沖のカリブ海でベネズエラ船籍の小型ボートを攻撃──)
"...Se cree que explotó."
(:爆破したとされます)
ロレンツォがボスへ振り向くとアントニオ・G・エレーラは新聞を硝子テーブルに叩きつけ立ち上がり朝食の配膳していたメイドが驚いて下がって行った。
"¡¿Mataste a Miguel?! Miguel──"
(:ミゲルが殺られただと!? ミゲルが──)
アントニオが見つめるテレビ画面には波飛沫上げるボートのモノクロの俯瞰画像が映っておりそれが凄まじい火花を放ち、殆ど破壊し煙り上げ始めるのをループし放送しキャスターが一生懸命何かを告げ続けていた。
"Os advertí que el país tendría un nuevo presidente y la Casa Blanca cambiaría de rumbo."
(:大統領が変わりホワイトハウスが方針転換すると警告したでしょう)
"Si alguien me hace algo, yo lo devolveré.Lorenzo, prepárate para contraatacar.Mi familia tomará represalias incluso si el oponente es una gran potencia."
(:俺様はやられたらやり返す。ロレンツォ、反撃の用意しろ。我が一族はたとえ相手が大国だろうと目にものみせてやる)
そうアントニオが押し殺した声で言い切るとロレンツォは説得にかかった。
"Jefe, no es buena idea luchar directamente contra ese país.Ellos lucharán indiscriminadamente."
(:ボス、正面切って争うのはまずい。あいつらは見境なく反撃するだろう)
"¿Así que lo que?"
(:それがどうした)
"Aquellos que nos hagan daño serán castigados, ya sea el presidente, la Casa Blanca o un invitado."
(:我々に手を出した連中が大統領だろうとホワイトハウスだろうと客だろうと関係ない)
ロレンツォ・ラミレスは腹括らないと親族を殺されたアントニオ・G・エレーラの感情が収まらないだろうと思った。
ベネズエラ統一社会党の暗殺を担っていた男はこれが好機だと考えた。
長年エレーラの一族が牛耳ってきた麻薬取引を始めとする売春やギャンブル、殺人、身代金目的の誘拐などを生業とする構成員八千人を越える大犯罪組織は転換期にあるとロレンツォは考えていた。メキシコや他のカルテルの影響力は増しビンクロ・デ・マルテ・カルテル(:死の結束)の先行きは見えていた。
これは天の恵みだとロレンツォは考えた。
繰りだされる凄まじい浴びせ蹴りを激しく振る手の甲で弾き返す。その残像すら見せぬ鉄壁の防御を押し切りられアン・プリストリは後退さらず得なかった。
トレーニングルームのフローリングの床に溜まった汗が素足の二人は繰り出す攻手と防手のたびに滑らせる足に強引なバランスを取り続けて、僅かでも隙に付け入ろうと狙い続けた。
ガブリエルが殴りつけた拳を前腕の外で逸らし躰揺らし落とし下から天井人の一柱の顎目掛け叩き上げたフックが迫った瞬間、ガブリエルは身を仰け反らせ顎先ぎりぎりで躱した刹那アン・プリストリはガブリエルの片足の踵に己の踵引っ掛け、腰落としたガブリエルはバク転し間合い取って身構えた。
それを見ていた第一中隊のセキュリティらはやんやの歓声を送った。
「やはり貴様、性根腐りきっているな!」
ガブリエルに言い切られアンは鼻で笑い言い返した。
「何をォ言うかァ! 堕天使がァ! ふらふらァしやがってェ! しっかりィ立ちやがれェ!」
寸秒、ガブリエルに摺り足で踏み込んだアンは殴り込むと見せかけ恐ろしい速さでステップ踏み替え膝曲げて溜めを入れガブリエルに回し蹴りを放った。
「止めろお前達!」
蹴り込んだ脚を立てた前腕で受けたガブリエルと蹴り入れたアンはそのままに、離れて座して見ている一柱ミカエルに唇引き攣らせて視線振り向けた。
「マリア様が来るぞ」
そうミカエルが言った傍で、マリア・ガーランドがトレーニングルームの硝子扉押し開き、レノチカ引き連れ口論しながら入ってきた。
「──駄目ですチーフ! ルナが状況が固定するまでセキュリティを出すなと────」
「レノチカ! あなたは誰に雇われているの!? これは爆弾テロとは別件の不正規戦なのよ。情報収集に部隊を送り込まなければ、都市の市民が標的にされるのよ!」
二人の口論を止めるために第一中隊第三セルのケイス・バーンステインが声を掛けた。
「どこに索敵出すのか、チーフ?」
言いかけたレノチカの口元に手のひら押しつけ黙らせたMGがトレーニングルームに集まっている第一中隊の一部のセキュリティ達に言い切った。
「ベネズエラよ!」
即座にクリスチーナ・ロスネス──クリスが指摘した。
「麻薬カルテル絡みなのか!?」
その問いにマリーが頷いて皆に尋ねた。
「今朝、カリブ海で合衆国海軍が麻薬カルテルの密輸ボートを爆破したのはニュースで聞いてる?」
半数のものが頷いたり返事をした。
「うちのの情報部が、爆破されたのはベネズエラの麻薬カルテル──ビンクロ・デ・マルテ・カルテルの密輸船だと断定しており、その組織が米国への報復に出るようならその出鼻を挫くために分隊規模で情報収集と破壊工作に出します」
するとレノチカが話しに割り込んだ。
「冗談じゃないですチーフ! ルナが許可するわけがないでしょう!」
少時、マリーはレノチカの顔に右手の人さし指を振り向け指摘した。
「命令系統の誰が上位か言いなさい!」
スました顔でエレナ・ケイツ──レノチカが言い返した。
「命令系統の上位はチーフですが、一年半前のメキシコの一件の後で貴女とルナの意見の一致がある場合に限ると出撃要項を厳格化しましたよね」
言い返さずにマリーが唇ねじ曲げて顔を背けたので、殆どが派遣なしだと安堵した。
マリーは一人だけ背を向けているレイカに声を掛けた。
「レイカ、何をシカトしてるの!?」
「私はスナイパーです。一弾で麻薬カルテルのテロを阻止出来るなんて簡単に考えているなら改めさせるし────私は熱帯雨林は大嫌いです」
「楽しそうなので我が行くぞ」
床に座り込んでるミカエルへ驚いて皆が顔を振り向けたがマリア・ガーランドが頭振り否定した。
「ミカエルとガブリエル、アンとシルフィーは駄目です」
そうMGが一方的に言うと、ミカエルが絡んだ。
「なぜじゃマリア様、魔物や亜人なら不適もわかるが、なぜ我やガブリエルが外されるのだ?」
「貴方達二柱や、アンやシルフィーは現地で判断が必要な場合、孤立したときに現地の状況鑑みて判断が出来ないからです。NYでさえ問題起こすでしょう」
マリーに言われハイエルフが口にした。
「我は熱帯雨林は好きだぞ」
「それだけが判断の理由じゃないわよ。あなたやアンを行かせると出鼻挫くどころか殲滅戦にしてしまうでしょう。そしたらベネズエラ政府と我が国が非常に混迷してしまうからよ。地域的にベネズエラが反米国寄りになるのは良くないの」
それを聞いていたアンが拗ねたようにマリーに言い返した。
「少佐ァ、何かお前ェ近ごろルナにィ言い回しが似てきてるよなァ。良くないぞォ、お前の持ち味はァ、ストレート勝負ゥなところだろォ」
マリーは腕組みして仁王立ちになるとアンに言い返した。
「ストレート勝負じゃない。ルナは理詰めだが、わたしは直感を信用する。それが大きな違いだわ」
そこへレノチカが横槍を入れた。
「チーフ、もっと全体視野で方針を打ちだして下さい。貴女は銃弾のように命中する先の事ばかり────」
その情報部責任者の言葉で皆が大笑いしマリア・ガーランドが鼻息荒くしてベネズエラへ派兵するメンバーの名を連ね始めた。
北半球のすべての人の意識は、シャボン玉の虹彩のように揺れ動き千変万化して捉えがたい。
そのすべて中からひとつを抜き出すのは、砂
浜から一つの砂粒を見つけだすよりも難しい。
それは知ってる色の粒よりも眼にしたことのないものを見つけだす途方もない困難さがある。
チーフや情報部の人達から頼まれる人捜しのない時にパトリシア・クレウーザは膨大な人々の意識を渡り歩き、どこかの国がテロリストとして捜している人を見つけたり、テロ行為や重大な犯罪行為を捜し出すことを日常としていた。
だがそれは少女の特殊な能力を持ってしても北半球に限られ、赤道よりも南には手が及ばなかった。
しかしベネズエラはぎりぎりで守備領域。
これまでは麻薬カルテル絡みの捜索はマリアにも情報部課長達にも命じられることはなくスルーしてきた。
だけど今日は違う。
レノチカに指示されてパトリシアは見つけ出した人々の詳細をPCのソフトウェアに打ち込み続けていた。
その一人にロレンツォ・ラミレス──ビンクロ・デ・マルテ・カルテル(:死の結束)の戦略情報責任者の今、やろうとしている事と、正確な居場所が記されていた。
男は元ベネズエラ統一社会党の暗殺を担っていたベテランの猟犬だった。
☆付録解説☆
1:CZ=CZ(:Convergence zone)収束帯がよくソナーの解説で用いられるのは次の様な理由があります。水中音が海中を通過するには、表面、底、水自体との相互作用に大きく依存します。パスはたくさんありますが、一般的には次の3 つです。
・1:直接音=これは最も単純な形式で音は音源から受信機(ハイドロフォン叉はトランスデューサー)まで直線的に伝わります。海の層の影響が最小限である短距離で受信が発生します。
・2:海底反射音=多くの場合、音波は受信機に到達する前に海底を反射します。海底構成(岩、砂、泥)は音の反射の質に影響を与え、検出能力に影響を与えます。
・3:サウンドチャンネル=これは、エネルギー損失を最小限に抑えながら音が長距離を移動できる海洋の独特の層内で発生します。サウンドチャネルは、温度、圧力、媒体不純物(微生物も含みます)濃度の組み合わせによって形成され、音が狭い領域を連続屈折して水平に伝播する見かけ上のダクトを形成します。これにより音波発生源から数千マイル離れた場所でエネルギーが検出される可能性があり、この現象は長距離検出に役立つ可能性があります。
CZ(収束帯)とはこのダクトを意味し現代対潜水艦船(含む水中艦船)の多くには、作戦域のCZマップ自動作成機能を有するデータ統合システムが搭載されており航行時に随時、温度、塩分など不純物濃度などを任意の水深ごとにデータ化しCZの発生を予測し受信された音波の到達可能距離や水深を予測します。
CZを伝播する音波距離は一般に数百マイルと過小評価されていますが最長で三千マイルを越える場合もあり実際に検知されています。特にピンを打ったり、潜水艦の圧壊音はdB値が非常に大きく数千マイル規模で受信しますが、機材などの受信能力値が想定されるために受信位置共に公表されません。




