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Part 5-4 The Essence of Understanding 理解の本質

Brooklyn Bridge Promenade Brooklyn Bridge NYC NY. 04:19 22th Dec./

NDC HQ-Bld. in Chelsea Manhattan NYC, NY. 04:37


04:19 ニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン橋ブルックリン橋遊歩道/

04:37 マンハッタン チェルシー地区NDC本社ビル



 合同庁舎にある国家安全保(NSA)障局NY支局事務所をダスティン・スパージョンに任せマーサ・サブリングスは爆破されたブルックリン橋に臨場していた。



 先に来ていたシーナとドゥウェインが消防局や市警と協力しかなり調べていたのでマーサはとにかく現場を見ることに集中した。



 ブルックリン橋はマンハッタン島の西イースト河に掛かったブルックリンとを結ぶ百四十年余りになる多層の巨大な橋だった。



 上層中央には板敷きの遊歩道があり一段下の下層には北側と南側に多車線一方通行の車道があった。



 橋脚中間の車道中央車線で中型コンテナトラックが爆発を起こし車道が抜け、直後に遊歩道が引き込まれ陥落した。



 遊歩道を制服警察官に案内されマーサ・サブリングスは見て行ったが40ヤード離れると被害ないことに驚いた。



 恐らくはテロリストらが用意できた爆薬がコンテナ一杯ではなかったのか、使った爆薬がETNでなくTATPかゼリグナイトかもしれなかった。



 FBIと市警の鑑識が残留物を採取しているが、容易に爆薬物の特定に至り使い回してるグループが幾つかリストに上がってくる。それは爆薬物成分の微妙な違いから指紋のように正確に推定できる。



 投光器の明かりに照らされたイーストリバーに市警のボート複数と沿岸警備隊のセンチネル型カッターが1艘がいて水没した乗用車の運転手らを引き揚げていた。



 マーサはその活動を見ていて腹立たしく感じた。



 3つの駅、タイムズスクウェア、ブルックリン橋で多くの人が死傷しFBIはまだ犯人らの手掛かりをつかんでいなかった。



 ふとNSAニューヨーク支局長は親しい女友達のことを思いだした。



 マリア・ガーランドらの組織の方が何かしら糸口を見つけだしているはずだと具体的には何も知らず漠然とマーサは思った。



 ことテロリズムに関してはNDCは膨大な資金投じて世界中の情報を収集している。



 ただ彼女は今日上院聴聞会にNDC会長と召還されておりワシントン入りしてるはずだった。何かと大変なのだろと思った。



 彼女はこの火急時にワシントンにいるのだ。



 スマートフォンをスーツのポケットから取り出しマリーの右腕であるルナに電話しようとしてハンズフリーにして灯った液晶画面に人さし指をおよがせた。



 こんな時刻だ。寝てるかもしれない。



 ましてや紹介したFBI訓練施設からまだ戻っていないことも考えられた。



 いやブルックリン橋爆破を報され急遽本社に戻っているかもしれなかった。



 彼女のセリーの番号を記憶便りにタップしコール音に耳を傾けると2回目に声が聞こえマーサは驚いた。



『こんばんはマーサ、何でしたでしょうか?』


「ルナ、夜分恐れ入ります。今、ブルックリン橋に臨場し被害状況を見て回ってます」



『報告を受けクワンティコから緊急に戻り先ほど指揮室入りしています。犯人らの情報提供ですね』


 鋭い女だとマーサは苦笑い浮かべた。



「ええ、そうです。ブルックリンを襲撃したのはあなた方セキュリティでしょ?」



 もおかずルナが応えマーサはどこまで先読みできるのだと一瞬考えた。



『テロリストら情報に関しては貴女あなたにメールでお送りしたものが現状です。ブルックリンの襲撃は裏を掻かれ失敗でした。おとりをつかまされました。付け加えますとマリアからまだ連絡がありません』


 優秀なテレパスのいるNDCですらテロリストらに振り回されている。FBIでは検挙は無理だとマーサは思った。だがテロリストらは絶対にテレパスの存在を知らないはずだ。どうやって、とマーサは困惑した。



『言いにくいのですが──テロリストらの最終的な攻撃目標はNDC本社でMGの抹殺を企んでいるので彼女が戻るまでは攻撃を受けません』


 そう聞いてマーサは顔から血の気が引いたのを感じた。



 マリア・ガーランドがねらわれることはここ数年で何回もあった。だが今度のテロリストらが彼女を殺すためにグラス・シャトーを爆破するのなら並大抵の爆破テロではないはずだ。被害は数区画になる!



『マーサ、街も本社ビルもマリアも大丈夫です。我々は次の襲撃で確実にテロリストらを狩りだします』


 まいった! パトリシアかミュウを使いルナは考えを読まさせていたのだとマーサが思った直後、ルナが付け加えた。



貴女あなたも大丈夫です。特殊情報職員などに貴女あなたの考えを読まさせたり致しません。わたくしが話しの先読みしてるだけです。他になければ失礼したいのですが』


 マーサは冷静さを取り戻しルナに礼を述べた。



「ありがとうルナ。何かあれば連絡を頂戴」



 そう告げ通話終了のアイコンをタップしマーサはセリーをスーツのポケットに戻しながら思った。





 ダイアナ・イラスコ・ロリンズを国家安全保(NSA)障局に引き抜きたい。





 だがそれをマリア・ガーランドが許すはずもなかった。



 マーサは投光器が作る自分の前の影にもう一つ影があるのに気がつき半身振り向くと斜め後ろにいるシーナ・ウィトンが微笑んだ。



「支局長、お電話中でしたのでお声掛けしませんでした」



「──何、シーナ? ドゥウェインは?」



「ああ、彼でしたらブルックリン橋の監視カメラの確認に管理事務所に行っています。支局長、こんなものを拾いました」



 そう告げてシーナがマーサに片腕差し出しマーサは部下から受け取った。



 マーサが手のひらを見ると金属球だった。



 汎用ベアリングだとマーサは気づいた。



「どこで拾ったの?」



 そうマーサが問うと夜勤当番の部下がすぐ近くの板床を指差し答えた。



めくれた床板の裏に刺さっていました。真球度から出所がわからいないかなと」



 そこまで言われマーサは手のひらに乗せた金属球が爆発元のトラックから飛んだ被害拡大させる鉄球の一つだとようやく理解した。



 汎用ベアリングは規格上幾つかの精度に別れる。爆破で消耗する破砕片としてのベアリングに高級品を使うわけがなかったが、逆に工業品として何かの回転軸に使う場合安物はほとんど用いられない。簡単にベアリングとしての機能失うからだった。



 そこが眼の付け所だった。安物のベアリングを多量に購入すれば購入者の記録が残っている可能性が大きいとマーサは思った。



 それにこんな遊歩道の床板の裏にベアリングが突き刺さっていること自体があり得なかった。



「爆破に使われたかはわからないけれど調べてみましょう」



 そう告げマーサがスーツポケットからファスナー付きの証拠品入れビニール袋を取り出したのでシーナが驚いた。



「支局長、そんなもの持ち歩いているんですか!?」



 マーサは袋にベアリングを落とし入れナイロンファスナー閉じ摘み上げシーナに見せて言った。



「我々は鑑識じゃないけれど拳銃を押収したりするから持っていた方がいいわよ」



 するとシーナがにこにこしながら両手のひらを揃えてマーサに差し出したので支局長は問い返した。



「何?」



「ご褒美もらえるか、と」



 マーサは微笑み返した。



「いいわ。あなたとドゥウェインに朝食を奢りましょう」



 そう言いながらマーサは背後の海面で引き揚げ作業するものらの音聞いていて思った。







 河に車で落ちて亡くなった人たちはもう朝食を食べられないのだ。











 ルナはエレナ・ケイツにねぎらい声をかけ彼女に任せ作戦指揮室を後にして副社長室に戻った。



 執務デスクについてスマートフォンを机に置いてそれをじっと見つめた。



 MGはワシントンに聴聞会のためボスと共にいる。



 テロの事案ひとつ一つすべてを連絡入れていては彼女自身の仕事が回らなくなる。



 テロリストが残した遺留品から一人の顔が割れ安心した直後にこれだ。



 しかもこのビルとマリアが標的とされていると想定した以上、手をこまねいているわけにはゆかなくなった。



 テロリストらはいまだに野放しであり、NDCがねらわれるまでにマンハッタンにまだ被害与える可能性が大きかった。



 捜しだし徹頭徹尾(たた)かなくてはとルナは思った。



 だがパトリシアもミュウもテロリストらを捉えていない。テレパスの距離が短いミュウならまだ理由はわかるが、パトリシアがなぜテロリストらを見つけ出せないとルナは考え込んだ。



 パトリシアは嘘どころか抑圧に深層心理に隠された事実も見抜ける。しかも北半球を網羅して人の意識を探ってくる。



 なのにニューヨークにいるはずのテロリストらを見つけだせない理由はなに?



 一瞬ルナはパトリシアが壊れたのかと心配になった。



 そうじゃない。



 わたくしが気づいていない理由があるはず。



 正直言ってパトリシアやアリス、ミュウの人智を超えた能力の仕組みがわかってないので根本原因を推し量ることができない。



 脳波や脳の様々な活動などを医療機器で測定してもテレパスや遠視能力(クレアボヤンス)の力がどうして成立するのか科学では解明のしようがなかった。



 どうやったら優秀なテレパシストの眼を逃れることができる?



 そもそもテロリストらはNDCに特殊情報職員が居ることすら知らないはずだと考えてルナはその前提が誤っている可能性に気づいた。



 テロリストらが何らかの方法でパトリシアら特殊能力者の情報を知り得て何らかの対策を取っていたら。



 異空間を使った知覚をこの世界の物理的事象で遮断は出来はしない。



 もしかしてパトリシアらが知り得ることで相手の情報に量子的変異が生まれるのかとルナは考えそれを否定した。



 これまでそんなことは一度もなかった。



 もしもそうなら、アリスとミュウの遠視能力(クレアボヤンス)が現実を変えてしまっていることになり、この次元の人は誰も結果を眼にするだけでそれを知覚はできない。



 たった一点の変化が波動し世界におよぶ多くの変化をもたらすなんてスーパーストリングでも不可能だと直感できる。



 テロリストらは巧妙にパトリシアの異空間脳干渉を回避する術を見つけだした可能性。



 ルナは考えながらざわざわと胸騒ぎを覚えた。



 どうやれば意識下の情報を隠蔽できるかと考えながらヘルメット(LWH)でと海兵隊の装備一瞬思ってルナは苦笑い浮かべた。



 情報の隠蔽は、その情報自体を覆い隠すことになる。



 たとえば戦闘機のステルスは電磁波という情報を得る方法に対しその電磁波を送り手に返さないという手段を使う。



 それは反射波の強度を落とし戦闘機全体の情報をひずめてつかませる。



 だが人の意識に電磁波吸着剤などのコーティング技術や外殻がいかくの設計上の技法は有り得ない。





 なら情報そのものの改変は、とルナはふと思った。





 必要な情報が形変えられていたらすくったものは指の間から滑り落ちるだろう。





 思考や意識は目的や方法を立てた途端にそれがシナプスの連鎖に刻み込まれてしまう。それは洗脳でも痕跡が残るので催眠術などで探りだすことができた。



 刻み込まれて────。







「ああ、そうか────そういうことか」







 潜伏しているテロリストらは誰一人自分が何をしているか断片としてしか理解してないのだとルナはデスクトップのセリーを見つめ思った。



 理解の本質。



 知り得た情報はたとえ他の情報に触れても絶対的な情報に生まれ変わらない。確信を持っても絶えず心には疑いの念があり事実と想定を分け、自己を完結している。



 時には眼で見たものすら信じない。



 テロリストらは自身が聖戦に加担していると意識しても爆破の現場に訪れるなにがしはただバックの一つをどこそこに置いてこいと上意下達じょういかたつで命じられるままに動きそれを聖戦だとは想像してみても現実の外にある。



 パトリシアは他人の意識をのぞき込んで干渉すらできても膨大な情報に飽和しないようにフィルタリングしていると以前感じたことがあった。





 彼女は確定された事実と意識の余分なものは無意識に分けてしまうのだ。





 ニューヨークに潜伏しているテロリスト共はそのリーダー格のものでもテロ行為だとはまったく思ってない。



 それがパトリシアらがテロリストらを見つけだせない回答だとダイアナ・イラスコ・ロリンズは口角吊り上げた。





 明朝からパトリシアの索敵方針を変える必要があった。





 ルナはモバイルフォンを手に取りアラームをセットすると座り心地の良い椅子に深く背を預けアームチェストに両腕を載せてまぶた閉じて意識した。







 我々はそれぞれが精一杯守り抜いている。












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