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Part 1-2 First Attack 初手

118 WallyPower Motor Yacht Caribbean Sea, British territory, 23 nautical miles south-south of Montserrat, Caribbean Sea 07:39 Dec 21th 2021/

34th Street Penn Station, Eighth Avenue Line Express A , Manhattan Subway New York City, New York, 07:51 Dec 21th 2021/

Meeting Room 8th of NDC HQ-Bld. in Chelsea Manhattan, 08:26


2021年12月21日07:39カリブ海英国領土モントセラト南南二十三海里カリブ海ウォーリーパワー118型高速艇

2021年12月21日07:51 ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン・サブウェイ 8番街線急行A系統34丁目ペン・ステーション駅/

08:26マンハッタン・チェルシー地区NDC本社ビル第8会議室







 群青の海原を長く伸びるウェーキ引き連れ、派手な波飛沫(しぶき)を上げバウンドし続けるの黒い高速艇に男ら六人が乗り合わせていた。



 そう大きくない船体の腹に座る3基のガスタービンエンジン──TF50ベリコールは毎時三千五百リットルの馬鹿喰いで一万六千八百馬力を発揮しカリブ海で類を見ない六十ノット(約:110km/h)という凄まじい高速で疾走していた。



 乗員は七人。そのどの男らもアサルトライフルやRPGで武装しており積まれた二千二百ポンドの梱包物を守っていた。



 苦虫を噛み潰したような面もちで操縦席の横に立ち遠くに見える島々の影から不意に行く手を阻む船が出て来ないなか警戒の眼差し向け続けるのは、ベネズエラ最大の麻薬カルテル──ビンクロ・デ・マルテ・カルテル(:死の結束)のリーダーの親族の一人ミゲル・エンジェル・エレーラだった。



 そのリーダーに男らの中でも古参のギャングスタであるエレネストが声を掛けた。



"Miguel, por favor, descansa. Ningún barco puede alcanzar a este."

(:ミゲル、休んで下さい。このボートに追いつける艦艇はいやしません)



"Aquellos que bajen la guardia no sobrevivirán."

(:油断した奴は生き残りはしない)



 そう。



 それは裏稼業で寝首()かれない鉄則。



 南米一の麻薬カルテルに成り上がったエレーラという一族の鉄則は油断という言葉を決して認めなかったからだった。



 ミゲルは水平線から視線下ろし航海レーダーのモニタ・ブリップを確かめた。



 十三海里(かいり)内に数十の漁船やヨットが明滅していたが、大型の艦艇はなかった。多大な賄賂をつかませているベネズエラ政府は海軍を派遣しはしない。



 問題は合衆国沿岸警備隊や海軍だった。



 賄賂はきかず、有無を言わさず強力な武力で拿捕してくる。そのために金に糸目つけずこの高速艇を造らせたのだ。



 これまでは先にそれら艦艇を見つけ逃げ遠回りしマイアミ沖へ回り込んで密輸していた。



 これまではそれで上手くいくことがわずかだがあった。





 これまでは────。





 それは微かな甲高い音を引き連れてやってきた。



 高度FL350──三万五千フィートの高空飛翔するP8ポセイドンの第1ハードポイントから射出されたペイブウェイIVはGPSモードで高度エネルギーを毎秒九百フィートの爆速に転換し、九千フィート下層を飛翔するMQー4Cトライトンへ制御系をシフトするるとレーザーが打ち込まれる洋上の高速艇へと微分しながら4枚の動翼を巧みに操り誘導したMk82──500ポンドを高速艇の数フィート頭上で近接信管がトリトナール混合爆薬を起爆した。











 ニューヨーク市の地下鉄は通勤ラッシュアワー時のみ運行される路線系統がある。8番街線急行A系統もその一つで概ね9分以内の間隔で運行されている。



 その系統の利用客が多い34丁目ペン・ステーション駅は、合衆国で最も利用客の多い駅ペンシルベニア駅の近くにあり、アムトラック、 ニュージャージー・トランジット、ロングアイランド鉄道にも乗り換えることができる。



 そのホームに入って来た通勤車輌の一両が自動ドアを開き降車客を吐き出し、乗車客を受け入れ始めた。



 日本のように降車客が降りるまで待つ人は少なくすきがあればどんどん乗り込むし構わず降車客が降りて雑踏になる。



 その三番車輌の乗り降り口(そば)の座席の際に焦げ茶色の電話帳がぎりぎり入りそうなボストンバッグが置き忘れていることに乗車したラテン系三十代の女カロリーナ・パニアグアが気づき、周囲の客に声を掛けて誰の持ち物か確かめた。



 だが誰も知らぬ顔で、自動ドアが閉まり、カロリーナはボストンバッグに触りたくなかったので少し避けて椅子端から天井に伸びるステンレスパイプにつかまり発車に備えた。



 ボストンバッグの中には加速度センサーの付いた基板がデジタル回路で加速と減速を減算カウントしておりペン・ステーションでメモリの値がゼロになっていた。



 電車がガクンと揺れ加速し始めた一閃いっせん、32ボルトの電源を元にする回路のリレーが閉じて数本差し込まれた信管が発火すると、百二十オンスのスカーレットが瞬時にそのボストンバッグの中で爆膨し秒速二万七千フィート余りの勢いで三千四百の鉄球が乗客達諸共、車輌外殻(がいかく)を打ち破りそばの自動ドアの一枚が衝撃で脱落し脱線しホームと走行車輌の隙間すきまに刺さり派手に火花散らし数輌の照明が落ちた。



 十九名が即死し四十三名が重傷を負って助け求め、散らばった暗い車内で叫び声が重なってうごめいていた。



 はっきりとした衝撃を感じた運転手は異常事態を認識し即断で緊急制動を掛け、電車の半分の車両がまだホームに残り停車してホームにいる人々は騒然となった。







 その爆発は事の始まりに過ぎなかった。







 クリスマスを前に八百万余りの市民が呪われてしまった事を多くが自覚した。











「────でありまして1200カ所余りあるすべてを核融合に換えるのには費用のみならず、炭坑職員や天然ガス掘削の職員の雇用問題や国と州の認可と危険視するロビースト団体対応の────」



 NDCニューヨーク本社の七十四階にある会議室に早朝から三十九人の各部所の責任者が集まり、ルナを始め数人の部長を従え報告を聞いていたマリア・ガーランドはぼそりと指摘した。



「要するに本気で巻き返してないだけでしょ」



 絶句した開発総括担当は努力が認められないばかりか、担当をすげ替えられると危機感を抱いた。



 その開発総括担当はなんとか社長(COO)に理解してもらおうと州ごとに異なる方針で強固に抵抗するロビーストに対抗資金がさらに必要であり、さらに技術的に原子力発電所軽水炉の設置設営よりも時間が必要な事を認めてもらおうと躍起になろうとした。



「ですが社長(COO)────」



 会議室ドアを開いて顔をのぞかせたのが情報二課のレノチカ──エレナ・ケイツだと視線だけ振り向けたMGは彼女にあごを振って見せ呼び込んだ。



 レノチカは並んだ様々な部所の部長や課長並ぶ席の後ろを足早に歩いて来ると、ルナと経営部門の統括部長リズ──エリザベス・スローンにはさまれて座ってるマリア・ガーランドのかたわらに寄り腰を折りマリーの耳元に顔を寄せ小声で報告した。



「7時53分34丁目ペン・ステーション駅とブルックリンのノストランド・アベニュー駅、ブロードウェイ・ジャンクション駅の三駅で同時刻爆発がありました。現在各駅は閉鎖中、FBIが臨場もしくは急行中。テロの可能性が高いです。それと合衆国海軍がカリブ海でベネズエラ船籍のボートを国際法に違反し爆破しました」



 聞いているMGのラピスラズリの瞳が細められ三白眼になり、眼にした核融炉発電所建設開発総括担当の部長は思わず視線()らし冷や汗吹き出させうつむいてしまった。





「会議は延期、次回は追って通達します。ルナ作戦指揮室に場所を移す。来て」





 みなにそう告げマリア・ガーランドは立ち上がるとレノチカとルナを引き連れ第八会議室を後にした。



 廊下に出て会議室から離れるとルナが問うた。



「何があったんですか、マリア?」



「同時刻にマンハッタン三駅で爆発があった。これから詳細を確かめる。ルナ、FBIの押収証拠物を国家安全保(NSA)障局のマーサを通じ貴女あなたが確認。全情報収集班を総動員し犯行者を洗い出す。それとホワイトハウスがカリブ海で麻薬カルテルのボートを爆撃する指示を出した。報復の可能性を洗い出せ」



 エレベーター・ホールに向かうマリア・ガーランドがこの時と掛かってきた通話をスーツから引き抜いたセリー(:米でのスマホの俗称)で受け閉じたエレベーター扉の前で通話する内容にダイアナ・イラスコ・ロリンズ──ルナは意識傾けエレナ・ケイツ──レノチカがエレベーターの扉(かたわ)らにあるセンサーに片手近づけるのを見ながら思った。



 こんな早朝に誰をどこに派遣したの、と。





「今、どこにいるの!?」











 M-8マレーナ・スコルディーアは内蔵された通信端末を使い生成音声でマリア・ガーランドと通話していた。



──カンペオンというギャングスタのアジトに潜入中で~す。



────マース、そんな所で何してるの!?



──ドラッグ・ディーラーの顧客リストと仕入先情報と密造銃の仕入先情報の収得だよ。ほめて褒めて! 今朝二カ所目のハック。



────至急戻ってらっしゃい。緊急の任務を指示するから。



──今、動くとまずいんですけど。蹴散らしていいなら。





────死者さえ出さなければ構わない。





──了解です(コピー・ザッツ)




 寸秒自動人形(オートマタ)は天井ボードの裏に転がりで配線されたLANケーブルに接続したハブから自分の手首から伸ばしたケーブルを引き抜きそれを手首内に引き戻すとWiFiの電波で観測した室内のギャングスタ構成員の居場所を探り当て、二人が座るソファの直上に静かに移動し飛梁を両手でつかみ軽く跳び上がりひざそろえ石膏ボードを打ち抜いてソファのギャングスタ頭上に飛び降りた。



 部屋にいる四人の若いギャングスタらはおどろき座っている椅子から跳び離れようとした。



 ソファに座っていた二人の頭に広げたマースの両膝りょうひざが激突し失神するとその二つ頭に両手のひらついて自動人形(オートマタ)は後ろ飛びに一人掛けのソファから腰浮かせてサイドテーブルからグロック17をつかんだ二十代前半の男の顔をかかと蹴りし、男がつかんだグロック17を奪い床に着地する寸前に身体(ひね)り、デスクトップPCが載せられたテーブルの後ろにいる男がS&W─M626振り向けようとする右腕の肩の鎖骨中央を正確に狙い撃ち砕いた。



 リボルバーつかんだ男が椅子ごと背後の壁へ向け倒れ後頭部打った寸秒、マースは床に着地しシングル・ソファにぐったりと気を失った男の肩を左手でつかみ立たせ背後に回り込んだ刹那せつな、部屋唯一の扉が乱暴に開かれ半自動拳銃持ったギャングスタの男二人が駆け込んできて三人が意識失い倒れているのを見て部屋で唯一立っている仲間に怒鳴りつけた。



「どうなっている!?」



 だが立っている男が首を横に傾けまぶた閉じ呆けたように口を開いてる表情に異変を感じた最初に部屋に飛び込んできた男がサタデーナイトスペシャルの銃口をシングル・ソファのかたわらに立つ男へ振り向けた。



 その一閃いっせん、肩つかみ立たせた男のわきから突き出した銃口が火焔と硝煙を吹き安っぽいリボルバー向けたそのギャングスタも肩撃たれからだ振り回し、背後の男がそれを避けようと横に逃げた寸秒、マースは立たせた男をその出入り口に近い男に蹴り飛ばした。



 まるで走ってくる乗用車にぶつかられたように撃たれた男を避けたギャングスタの男は袖壁に激突し壁を半崩壊させくずれ落ちると、マースはグロックの銃口を上に向け出入り口へ小走りに駆け込んで、出入り口すぐかたわらの窓に映った廊下光景を74ピコ秒で解析し廊下をショットガン構え走ってくる男へ出入り口から手首から先を出しグロック17でその男の腰を撃った。



 ショットガン構えた男がバランスくずし滑り込むように出入り口(そば)に倒れ込むとマースはグロック17を片手で構え顔を左手腕でかばいながら廊下へ踏みだした。



 廊下に倒れた男の握る590Mショックウェーブのピストルグリップ角をM-8は小さな黒いパンプスのかかとで勢い良く蹴り込み跳ね上がったショットガンのスライドポンプ下につま先引っ掛けさらに590Mを回転させ浮かせそれのスライドポンプを左手で握りしめ、片手で銃を上下に激しく一度振って実包をリロードさせスライドポンプを跳ね上げ手放しピストルグリップへ左手握り替え銃口を廊下の奥に振り下ろした。



 そこへリボルバー握った男が別な部屋から飛び出してきて廊下端にショットガンと半自動拳銃構える黒い膨らんだフリル付のスカート広げたゴシックドレス着たくるんくるんの金髪ツインテールをしたまだ十歳ぐらいの小娘を目にしてあわてて出て来た部屋へ戻ろうとして左手太腿(ふともも)を十二番ゲージで撃ち抜かれた。



 派手なツインテール振り上げてリビングへ駆けだしたマースは広げたWiFiの電磁波で他の部屋に残っている七人のギャングスタの居場所を正確につかみなお手にする得物えものの種類も解析していた。



 マリア・ガーランドは死者さえ出さなければ蹴散らして構わないと許可を出していた。



 それはM-8にとって歓喜極まる承諾だった。



 十四人全員を112秒で倒してみせるとダイヤモンドのようなぎらつき見せる瞳で見渡せる総てから100%の情報を解析し圧倒的に駆けるわれにこんなギャングスタなど敵うわけがないとスープアップされたロシア製アンドロイドは爆走した。







 天井を割り降下してから107秒で見せ掛けだけのゴシック少女が玄関扉開き外へ出るとその発砲騒ぎに近隣のどの住宅からも野次馬が出てきていて、あわてて自動人形(オートマタ)は両手の銃を玄関内に放り込んで、野次馬へ振り向き両手でスカートの両端を摘まみ左右に広げ片足引いて深くお辞儀すると頭を上げて両手叩き合わせほこり払いギャングスタのアジトから通りをスキップして歩き去った。











 駅での設置は首尾よく行われるだろうと、実行班リーダーであるアイマン・ムハンマド・ジュファリは最後の設置人を駅出口(そば)の歩道際路上に止めたミニバンの中で待った。



 予定した時刻にサブウェイ駅昇降口から現れた一目で中東人とわかる男が周囲を不信げに見回しミニバンへと歩いてくるとスライドドアを開き後席に乗り込んだ。



 扉閉じられ車が走り出すとアイマンが乗り込んだ男にたずねた。



"هل هناك مشكلة؟"

(:問題はなかっかね?)



"نعم، بحمد الله، لا بأس."

(:はい。アッラーの御加護がありますから)



 そう応えたものの乗り込んできた男は落ち着かず


"فهمت. هذا جيد. الآن، سأعطيك المهمة الثانية."

(:そうか。よろしい。では二つ目の仕事をしてもらう)



 そう言われた刹那せつな、同志見つめる男が目をおよがせ抗議しようと口を開いた。



"ولكن بمجرد أن أنهي تلك المهمة--"

(:しかし、私はあの仕事をやり終えたら────)



"لقد وعدوني بأن يُسمح لي بالعودة إلى بلدي."

(:国に帰らしてもらえると約束が────)



 すがりつくような目で乗り込んできた男はその歳嵩としかさの男に申し出たが、鼻から顎にかけて白髪髭しらがひげのある男が無言で刺さるような視線を向け、乗り込んできた男はもう終わりなのだと表情をくずした。



 イスラーム教徒の年功序列は厳格で目の前の指示出す歳嵩としかさの男はそれだけでなく宗教学者(ウラマー)としての地位も車に後から乗り込んできた男が言い返すだけで処刑を指示することもできる絶対的な差が存在していた。







 四十歳になる年若い男はアッラーが味方してるなぞ指先ほどにも信じてないと叫びそうだった。











 面会予約をして国家安全保(NSA)障局を訪ねたルナは支局長のマーサ・サブリングスにすんなり会うことができた。



 ルナが支局長室に入るとマーサは両袖机の後ろでソファにも思える事務椅子から立ち上がり両腕広げて世界最大の複合企業(コングロマリット)NDCの副社長を歓迎した。



「お久しぶりです局長」



「局長は止めて下さい。まだ支局長です」



 そうマーサが控え目に言うとルナは否定した。



「いえ、局長確定の抜きん出たい要人に支局長など相応しくなく、今からと言い間違わないようにと」



 そうルナが言うとマーサは一声笑った。



「我が支局最高の珈琲をいかがですか、英国王室のご令嬢ですと紅茶をお薦めしたほうがよろしいでしょうか? それとも早速ご用件をお伺いしたほうが、ダイアナ・イラスコ・ロリンズ様?」



 ルナはこの人もMGと同じほどにやりにくい人物だとわずかに俯いて苦笑いを一瞬浮かべ申し出た。



「七時過ぎにマンハッタンの三カ所の駅で起きた爆破事件のFBI押収証拠品を確かめられるように話し通して頂きたくお伺い致しました」



 寸秒、マーサ・サブリングスは微笑んだまま眼が座ったと抵抗心をその眼差しにルナは気づいた。



「連邦検察局の科学捜査システムはとても優秀ですよ。それを差し置いてお嬢様の顔通しとなるとそれなりの理由が必要になります」



 そんなことは百も承知だとルナはスました顔で内心思った。FBIのどんな鑑識スタッフも私がMITでなし得た学位と肩並べることができる人などいやしない。



「理由など貴女あなたの口利きでどうにでもなるでしょう。局長(・・)殿?」



 そう告げルナは唇の両側を軽く持ち上げてみせ、さらに付け加えた。



「勿論、知り得た情報はFBI捜査班と共有しますし、NSAがつかみ得ていない一年以内のイスラーム国(ISIS)の主過激派十人の顔写真入付きリスト──一週間以内の活動居住地のリストを局長に提供いたします」



 マーサは一瞬鼻で笑い右手の人さし指をルナに立ててみせ片手でキーフォンの受話器を取り空覚そらおぼえでテンキーをリズミカルに打ち込み通話先に出た人物に話し始めた。



「こんにちは局長。マーサ・サブリングスです。ご無沙汰しております。今、少しだけお時間頂けますでしょうか?」



 この人いきなり連邦検察局長官に電話して国家安全保(NSA)障局長官を飛び越えて話し持ち込もうとしてるとルナは生唾呑み込みそうになるのを我慢した。



「──あはは長官、副長官へ引き抜かれるお話しではありません。今朝マンハッタンで同時爆破テロがありNY支局ではイスラーム国(ISIS)のテロリスト十人の関与を疑っているのですが、押収証拠品の確認にクワンティコの鑑識に一人派遣させて頂きたくお電話いたしました」



 ああ、今し方入手確定のリストをそう使うかとルナは目を細め矢張りマリアと同じ手合いの油断できない人だと再認識した。



「ありがとうございます長官。派遣します人物の身分は保証いたします。大ブリテン及び北アイルランド連合王国王室のご令嬢でダイアナ・イラスコ・ロリンズと申します。またパーティーなどありましたら是非お呼び下さいませ」



 そう告げ受話器を下ろすと手練れの支局長はルナに向けて手のひらを差し出したのでルナは小首傾げたずねた。



「何ですの?」



「リストを頂けますでしょうかお嬢様」





 ルナは一度品よく微笑んでみせると少し得意げにマーサに教えた。





「メールフォルダを確認して下さいませ。それではクワンティコのヴィジターIDが入手できましたらよろしくお願いいたします」





 お辞儀する英国王室の令嬢におどろき顔のマーサ・サブリングスはスーツからシェリーを取り出し親指でタップし新着表示のメールの着信時間を見て驚いた。







 NDC副社長が来客予約した時刻よりも前だった。












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