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18/21

Part 4-3 Sabotage 破壊工作

Simon Bolivar International Airport, Maiquetia District, Vargas City, Vargas State, Caracas, Venezuela, 18:23 Dec.21th


12月21日18:43 ベネズエラ カラカス バルガス州 バルガス市 マイケティア区シモン・ボリバル国際空港







 入国審査を受けて目的を問われたM-8マレーナ・スコルディーアは陽気に応えた。



"Señorita, ¿cuál es el propósito de entrar en el país?"

(:お嬢さん、入国目的は?)



"¡Sí! ¡Es para detener la conspiración internacional!"

(:はい! 国際陰謀の阻止です!)



 入国審査官の職員は短く笑い問い返した。



"¿Cuál es el verdadero propósito, no detener la conspiración?"

(:陰謀阻止ではなく、本当の目的は?)



"Estas son mis condolencias para la anciana que no me cae bien. Llevo medio año tratada por cáncer."

(:嫌いなおばあ様のお見舞です。癌でもう半年も治療受けているんです)



"Anímame."

(:励ましておあげなさい)



 そう告げて審査官がパスポートを渡してくれるとマースはお辞儀した。



 到着ロビーへ歩きながらバックパック一つ背負いマースは入国審査でのやり取りにミスがなかったことを演算しながらフロアの映像を解析した。旅行者に混じり手荷物のない人らの視線を観察すると内二人が人の顔だけでなく所作まで監視していることにベネズエラの公安職員だとマースは79パーセントの確率で判断した。



 入国する敵対国のスパイでも捜しているのだと仮想した。



 さて、とマースはルートを検索した。



 今、合衆国へ大きく麻薬を密輸しているビンクロ・デ・マルテ・カルテルのアセット(アジト)は幾つかあるが、リーダーのアントニオ・G・エレーラの家屋がアンソアテギ カピタル・シル・アルトウル・ンク・グレゴルの街エル・チャパロ北東の山間にあった。



 タクシーに乗って行く。



 無理だわ。子供一人の旅行者だと知られるなり、金品を取られギャングらに引き渡され売春街に送り込まれるか、どこかの成金に身を売られる。



 大人しくそうされるつもりはないけれど。



 マースは到着フロアから空港建物の外に出て道路を二本渡り広い駐車場へ出ると停められた多くの車を見渡し目立たぬフォード・フォーカスの2007年モデルだと衛星経由のネットワークから拾い上げた。



 塗装は傷みまだらのようになっている。



 道路に出ても目立たないと仮想し、バックパックからピッキング工具を取り出しドアのロックを二十秒ほどで解除し車に乗り込んだ。



 ハンドルポストのイグニッションキーをピッキングし始めて角度からなかなか回すことができずマースはキーホルダ取り出し短いペーパーナイフを広げそれを強引にキーシリンダーに打ち込み回してエンジンを始動した。



 エンジンはすんなり火が点き、マースはシートベルトを掛けるとオートマをドライブに入れ駐車帯から車を出し駐車場西の料金場へ向かい車止めると係員へダッシュボードに置かれていたチケットを手渡した。



 係員が金額を告げ運転席にいるマースを眼にして驚いた。



"El cambio está bien con propinas."

(:お釣りはチップでいいわ)



 そう少女が告げると料金場の係員は何も言わずゲートバーを上げたのでマースは車を道路に走り出させた。



 運転しながらネットワークからダウンロードしてきた地図からルートを演算構築しカラカスの西カグアを通る1号線を選び2号線を通りずっと南下してエル・チャパロへと着くのに六時間ほどだと仮想した。



 有料の1号線に入りマースはパトカーに止められないように法定速度の10パーセント増しで車を流した。



 マリア・ガーランドからの指示は明確で、ベネズエラ最大の麻薬カルテルの武装破壊だった。



 単独での侵入工作は大きな危険伴うが、信頼に応え実績を積めばMGがもっと良いボディに換装してくれると約束してくれていた。



 チタンの攻殻であれど多数のマシンガンから放たれる銃弾(ブレット)、対マテリアル大口径銃弾(ブレット)、喰らえば作戦失敗、貴重な筐体きょうたいを失うことになる。



 ましてやわれからだ──柔軟な攻手組み上げるためにシリコンを多用している。



 狙撃、包囲は禁忌だと自動人形(オートマタ)は仮想した。



 ルームミラーから撮影した画像──追い越し車線にいる六台後方のメルセデスの運転手、国際空港の到着ロビーにいた監視していた男だとマースは5次元メモリクリスタルに保存し続ける膨大なデータから引き出した。



 ロビーで目立つ行動をしたか!?



 いいやそれはない。



 大人なら入国してくるのを警戒するだろうけれど、子供一人のツーリスト──目を付ける理由はなかった。



 ベネズエラの司法すべてはカルテルの下にあり莫大な賄賂に傘下さんかにある。



 金に動かせぬものはなく、金に人は動かされる。



 目を付けられたからには、ビンクロ・デ・マルテ・カルテルに報告されているとの上で対処が必要になってくる。



 交通量の多いこの場で仕掛けては来ないだろうとマースは仮想すると、座席前に座り直しアクセルペダルを強く踏み込んだ。



「司法であれ賄賂でつながれている連中も排除して構わないとマリアは命じたわ」



 マースは追い越し車線を爆走してくる大型タンクローリーの前に加速させながらフォード・フォーカスを割り込ませさらにハンドル切って路側帯に狭い車体を入れ急ブレーキを踏んだ。



 一気に横をタンクローリーが抜け、その後方にいる数台の追い越し車線走る乗用車らが抜いて行き、公安のメルセデスが抜こうとした寸秒、アクセルペダルベタ踏みでその尾行している車のトランク横にハンドル切り乗る小型車のフロントフェンダー先を押し当てた。



 メルセデスは急激に右へテール振り、そのままフォード・フォーカスに押し切られ後輪滑らせ真横を向くとマースはそれを走行車線からかわし加速しながら追い抜いた。



 横向いたメルセデスに後続車がノーブレーキで突っ込みメルセデスは浮き上がって横様に回転し大破するのがルームミラー越しに見えていた。



「さて、ぶつけたこの車を何人もの運転手が見ていたはずだわ。このまま2号線走り続けるとパトカーに止められてしまう」



 そうマースはつぶやき、先のエル・トコという小さな町でハイウェイを出た。



 二十分もかからず全ての道を走り抜けられそうなほど小さな町だったが路駐車が何台かあった。



 マースは年代ものの灰色したピックアップの後ろにフォードを路駐させるとバックパックつかみ車から下りてピッキング工具を取り出しながらピックアップの運転席ドアの外に立ちノブを動かしてみた。



 ドアは施錠されておらず開いたのでマースはすぐに乗り込みエンジンスターターのキーシリンダーをフォード・フォーカスと同じ要領でペーパーナイフで回しエンジンを始動した。



 ピックアップはマニュアル車でシートの前端にマースは座りペダルを操らなければならず閉口した。それにかなりの年式車でエンジンの調子が悪く2号線に戻るのを躊躇ちゅうちょしたが迂回路はなくだまし騙しハイウェイに戻った。



 ハイウェイといっても1号線に比べ単車線で道も悪かったので通行車は比較的にゆっくり走っていた。



 マースは古びれた幌付きのトラックの後に付いて走り始めた。



 ピックアップを走らせながらマースは衛星経由のネットワークでニュースを閲覧し始めた。



 ニューヨークで夕刻に爆弾テロがあり多くの死傷者が出ていた。



 ああ、大変だ。今頃情報部とセキュリティは振り回されているだろう。マリア・ガーランドはヘラルド・バスーンの上院聴聞会に共に出席するために夕刻にD.C.への旅客機に乗っていたし、ルナはFBIのクワンティコの訓練地に出ていて、本部を切り盛りするレノチカは顳顬こめかみに青筋を浮かべているだろうとマースは仮想した。



 被害者の身を案じるサブルーチンはあるし、怒りを推し量ることもでき全てを数値で把握できるが、最近マリア・ガーランドらの感情をそれらコードを用いなくとも予測できるようになっていた。



 このベネズエラでのこの作戦が麻薬カルテルと関係あるのかと仮想し、時系列でそれはないとマースは一度仮想した。



 MGがベネズエラに行くように命じたのは駅の爆破テロが起きる前の朝だった。



 ならニューヨークのテロは合衆国による麻薬カルテルの密輸船爆破よりも前であり首謀者は中南米でない可能性が高く中東を端に発するものなのかとマースは仮想した。



 911と異なり世界中のテロリストらは合衆国全土でなくあからさまにNDCと会長や社長を狙う傾向が高くなっている。









 空港を出て五時間余り車走らせベネズエラ中部のエル・チャパロという街を抜け北東の低い山間に向かい荒れた道をピックアップ走らせた。



 衛星写真からビンクロ・デ・マルテ・カルテルのアセット(アジト)の近くまで車で行くことは不可能だとマースは仮想した。



 遮蔽物は少なく小高い土地に屋敷構える麻薬カルテルの本拠地から車は丸見えになる。



 その防御に有利な立地に場所選んだのは丸わかりだった。



 一マイルほど歩くことを想定し、さらにエル・チャパロを抜けてからマースはライトを消してピックアップを運転した。



 時刻は深夜の零時を過ぎ、車止めてマースはバックパック背負い荒れ地(デザート)をランニングスピードで移動し始めた。



 麻薬カルテルのアセット(アジト)辿たどり着くのは深夜になる。



 ギャングらの警備のレヴェルはわからないが、軍の要衝並みの警戒線があると想定すべきだとマースは仮想し、ビンクロ・デ・マルテ・カルテルのアセット(アジト)へ五百ヤードに近づくとマースはバックパックに入れてベネズエラに持ち込んだ迷彩服に着替え、体内に保存している液体窒素を使い放射熱を抑制し足音殺し傾斜地を登り始めた。



 襲撃国へ武器持ち込めない場合、武装は現地調達。



 哨戒しょうかいに着く兵から奪う。



 登る道にはなくとも、傾斜した荒れ地(デザート)にトラップは幾らでもあると自動人形(オートマタ)は警戒しながら足を進めた。ワイヤーを手榴弾のセーフティに接続したもの。



 対人地雷。



 赤外線センサー。



 哨戒に回る私兵らは赤外線暗視装備だけでなく増幅系の暗視装備(ノクトビジヴィジョン)を装備している。



 マースは眼球内に複数の液体冷却CCDを持ち極めて少ない熱ノイズの闇夜画像を得ることができ解像度も現行暗視装備(ノクトビジヴィジョン)を上回る受光ができた。



 伏せて高地を見上げるM-8マレーナ・スコルディーアは屋敷周辺を巡る警備の兵士のパターンを計測し分布値を分析し見張られるパターンをつかみ取るとぎりぎりまで匍匐ほふくで近づいた。



 監視兵が手薄になった一瞬、マースは立ち上がり爆走で斜面駆け上がり、ワイヤートラップとフェンスを一気に跳び越え煉瓦れんが敷きの敷地に立ち家屋の陰に身を潜め次の警備兵が来るのを待った。





 眼の前にヘルメットに暗視装備(ノクトビジヴィジョン)取り付けFN SCARーHを手に回って来た頭一つ半身長の高い兵士が現れると、マースはスニーカーの爪先立ちで背後から近寄り首の前に片腕回し兵士の片耳に手を掛け急激に回し切り頸椎けいついを捻り切った。



 マースはその男を家屋の陰に引きり込み、手早く予備弾倉パウチ付属するチェストリグを外しみずからに装着し、グロッグ17を男のホルスターから引き抜き薬室(チェンバー)の装填弾を確認し自分の戦闘服(BS)のパンツのベルトの内に差し込み、バトル・ライフルの薬室(チェンバー)を同じ様に確認して負い革(スリング)でバックパックの横にぶら下げ立ち上がり、リグからコンバットナイフ引き抜き逆手に握り直した。



 そうして家屋の陰に身を潜め次に歩いて来る歩哨ほしょうをじっと待った。



 二人目の兵士が来るとマースは再び爪先立ちで背後から忍び寄って男の襟首つかみ胸にナイフ握った手を回し心臓に突き刺した。



 ビンクロ・デ・マルテ・カルテルの構成員は九千から七千だと予測されたが、このアセット(アジト)に何人いるかマースは予想した。



 二百──多くても三百だと仮想し、このペースでいくと朝になるとマースは苦笑いした。いずれ侵入に気づかれ銃撃になればもっと効率があがるのだがとマースは苦笑いした。



 三人目は待たずにM-8は積極的に倒しに向かい一瞬、頭上の夜空横切るNDC観測衛星を見上げナイフ持たぬ左腕振り上げVサインを示し笑顔浮かべた。



 この工作をNDC作戦指揮室の誰かは見ており、マリア・ガーランドもワシトンD.C.のホテルで確認している筈だった。



 スキップするように爪先のステップ踏み換えマースは急激に加速しながら家屋回り込み、対面し驚いた麻薬カルテルの兵士に跳び掛かり押し倒し、右目へとナイフ打ち込みその切っ先を脳へ差し込んだ。



 痙攣けいれんする兵士を引きり家屋の最初に侵入した側へ引っ張り込み三人目を隠した。



 夜間のアセット(アジト)外周を見張っている兵らは十七人おり、マースはあと十四人と仮想しそれら全員をl殺害《KIA》する前に屋内の私兵らに気づかれるか、外の兵らを倒しきるか微妙な状態だと仮想した。







 M-8マレーナ・スコルディーアは鼻歌を口ずさみながら次々に男らに襲いかかった。











 屋内で待機していたビンクロ・デ・マルテ・カルテルの私兵の一人がテラス窓越しに走る小柄なツインテールの少女に気づき唖然となった。



 テラスの照明に照らされたその少女らしい何ものかはデザート柄の迷彩服を着ておりバックパックを背負いバトル・ライフルを肩の後ろに提げていて右手にナイフを握りしめ軽々とテラスの前を走り抜けた。



 見つけた男がソファから立ち上がりリビングの壁にある警報のボタンを叩きつけ警報が鳴り響き出した寸秒、他の部屋から前傾であごを引いて上目遣うわめづかいで駆け込んで来たツインテールの少女兵が恐ろしい勢いでステップ踏み換えからだを強速で回転させ振り回した脚を男の首に掛け振り回し床に引きり落とし頸椎けいついを折り砕いた。







 他の部屋からあふれ出た私兵らにツインテールの少女兵は抜いたハンドガンで次々に額をダブルタップで撃ち倒し少女兵はツインテール振り上げ男らが出てくる部屋へ突撃した。












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