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Part 4-2 Evasion 逃避

Oval Office, The White House, 1600 Pennsylvania Avenue, NW 20500, Washington, D.C., USA 19:25 Dec. 21th/

40th Independence Avenue SW, Capitol Hill, Washington, DC. USA 10:15 Dec. 22th


12月21日19:25 アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ノースウエストウエスト20500 ペンシルベニア通り1600番地ホワイトハウス大統領執務室/

12月22日10:15 ワシントンDCキャピトル・ヒル インディペンデンス・アベニュー南西40番地







 ベネズエラと麻薬組織に対する側近ら首席補佐官、国家安全保障担当補佐官、大統領顧問、大統領法律顧問、国防長官の5人と大統領執務室で協議していた第46代大統領ダニエル・トンプソンは執務室ドアがノックされ入ってきたホワイトハウス職員がクリフォード・ハッチングズ国防長官の方へ歩き寄るなりそばで報告した。



「閣下、国防総省(DOD)から御電話です」



 言われるなりハッチングズ国防長官は大統領へ振り向き願い出た。



「閣下、協議中失礼いたします。御電話お借りします」



 そう告げハッチングズ国防長官は輌袖の執務デスクに載った暗号化通信回線の電話機受話器を取り上げ返事した。



「私だ。C・ハッチングズだ────」



 一分ほど無言で通話先のものの話し聞いていたハッチングズ国防長官は眉根しかめると一言命じた。



「逐次報告しろ」



 そう通話先のものへ言い彼が受話器下ろし大統領へ振り向くと、その表情を眼にしたデスク奥の椅子に深く腰掛けたトンプソン大統領は火急の難事が起きたことを悟った。



「どうしたクリフ? 何事だ?」



 国防長官は言い辛そうに報告した。



「二十五分ほど前に第七艦隊の駆逐艦二艦がグアムに近い海域で交戦に巻き込まれ現在戦闘中です」



 交戦中と国防長官が言ったからには相手があるということだと大統領は考え中国が台湾侵攻の為にグアムを封じに攻撃に踏み切ったのかと眼を細め国防長官に問うた。



「中国なのか?」



「いえ、国家でのものではないと海軍は──大統領閣下、テレビとPCをお借りします」



 そう告げハッチングズ国防長官は執務室のテレビ電源を入れ、執務デスクに載ったPCへ入力切り替え大統領のかたわらへ行き国防総省(DOD)のサーヴァーに繋いだ。



 クリフォード・ハッチングズは三十桁ほどのパスワードを打ち込みサーヴァーに繋がると、それを海軍へのリンクに切り替え記録動画ファイルの一つを選び再生した。



 執務室の6人の男らはテレビに注目した。





 映し出された晴天の海洋に突き出た岩礁のように精巧で巨大な鏡状の球体の一部が浮き上がっており、そこに湾曲する水平線手前に艦尾向ける艦船が小さく映り込んでいた。





 だが小さいからといって遠い訳ではないとトンプソン大統領は気づいた。その海面から突き出した鏡状の球体があまりにも巨大で艦船との対比からそう離れていないと思った。



「何だこれは、クリフ?」



 そうハッチングズ国防長官にたずねると彼が状況を簡素に答えた。



「わかりません。ただ海中から浮上したあれが無線交信にも応じず敵意を持ち、駆逐艦の一艦が攻撃を受け交戦規定に基づき反撃し二艦で数十発のミサイルを打ち込んだのですが効果がないとのこと」



 敵意だと!? とダニエル・トンプソン大統領は思いクリフォード・ハッチングズ国防長官にさらにたずねた。



「敵意あるならあれを開発し隠していた国があるはずだ。中国でなければロシアか!? 北朝鮮には到底無理だろう!」



「まだ戦闘が始まり半時間ほどです。駆逐艦が照射する強力なレーダー波を完全に反射しないと報告を受けました。現場報告で完璧なステルスだと。ですが中国もロシアもそのような技術を持ってません。それに二マイルもある球体が現在空中に飛び上がり浮き上がっているそうです。外殻がいかくの厚みは不明ですが、最低の重量見積もっても動力源やエンジンでは浮遊は無理だと国防総省(DOD)では今のところそう分析しています」



「二マイルだと!?」



 プリシラ・メイクピース主席補佐官が驚き声を上げそんな巨大なものが飛べるのかと困惑した。



「浮いてるだけなら駆逐艦一隻の損害には眼をつむり他のどの国も被害受けてないのが現状でしたら、大統領閣下──ここは様子見で我が国トップの艦隊を危険に曝す行為は控えられた方が得策だと思われます」



 そうヴィンス・オハラ国家安全保障担当補佐官が大統領に進言した。



「クリフ、駆逐艦の乗員に被害はあるのか?」



 問われ国防長官は尾ひれ付けず報告することにした。



「いえ大統領閣下、艤装ぎそう機材の損害だけらしいです。目下オーストラリア海軍艦艇と合同演習中だった第七艦隊が巨大球体へ向かっていますが、現場海域に到着するのは早くて半日掛かります。大規模な交戦をなさるか、中止なさるどちらでもまだ十二時間猶予はあります。大統領閣下、如何いかがいたしましょうか?」



 そう国防長官に問われダニエル・トンプソン大統領はもう一つ返した。





「交戦させるにも十二時間は二艦の駆逐艦だけにこんな危険な状況を負わせるわけにはゆかないだろう。たたけと命じたら乗員に被害出さずああんなものと戦闘継続できるのか?」





「現在、現場海域に空母ジョージ・ワシントンから爆装した艦載機が向かっております。その戦闘攻撃機が打開できるやも────ですがわたくしはあの球体にできれば武力行使を中断し目的を探ることを優先させることを望みます」



 大統領は呪われたような眼つきでしばらく思案し指示をだした。



「臨検すると球体に警告し、従わないしくは応答なき場合は駆逐艦らに全力でたたけと命じろ。艦隊もそれにそって対応させるんだ」



「了解致しました、大統領閣下」



 クリフォード・ハッチングズ国防長官はそう応え大統領へ一礼するとテレビに繋がる執務デスクのパソコンの国防総省(DOD)へのリンクを切るなり執務室を後にした。



 国防長官がドア閉じると、ヴィンス・オハラ国家安全保障担当補佐官が大統領にたずねた。



「大統領閣下、グアムに近いその謎の球体がもしもグアム攻撃をするようでしたら核を用いても阻止すべきだと思います。このままグアムだけでなくハワイへも攻撃されるのを防ぐ手立てを講じるべきです。遅きに失し西海岸に上陸されることになれば核攻撃もできません」



 そう国家安全保障担当補佐官の提言にダニエル・トンプソン大統領は真摯に応えた。



「核をか!? 通常兵器では駄目なのか? 地中貫通爆弾(バンカーバスター)を撃ち込むとかできるだろ」



 するとオハラ国家安全保障担当補佐官が穏やかに厳しいことを進言した。



「二マイルの構造体です。その外形を持ち上げ維持するには相当な強度が必要だと思います。球体はそれが一番簡単なのですが、外殻がいかく素材が何か分かりませんが重量比でわずか3万ポンドのMOPは弾かれ逸らされる可能性があります」



「3万ポンドもある爆弾が命中するのに滑り落ちるのか?」



「戦車はそれを期待しエネルギー砲弾の避弾径始ひだんけいしを狙い設計されます。球体は全方位に対し緩やかな避弾径始ひだんけいし性を持ちますし風船に対し棘ほどにもサイズのないGBUー57は恐らく役に立たないでしょう」





「大統領閣下、どんな国にも引け取らない我が国の軍でさえ最早残されている手段が核攻撃です」







 ダニエル・トンプソン大統領はうなりベネズエラ侵攻の会議を続けるためプリシラ・メイクピース主席補佐官に政権転覆の為の説明を命じた。











 上院聴聞会開かれていた議会議事堂から抜けだしたマリア・ガーランドとヘラルド・バスーンは議事堂のあるキャピトル・グラウンド南に隣接するインディペンデンス・アベニュー南西40番地の南側の歩道を目立たぬよう航空宇宙博物館の方角へと目立たず万全に普通に歩いていた。



「これからどうするつもりだ?」



 ヘラルドにそう問われマリーは彼が身の行方を心配しているのだと思った。



「ニューヨークに戻りたいのだけれど、たぶん空港と鉄道は警察か存在無しの(NSA)機関が手を回しているから無理ね。他の陸路を探しましょう」



「長距離バスかい? あれはいい。まったりと目的地へ行ける」



 マリーは横目で歳の釈然としない会長を見るとそのまま半身振り向き顔を巡らせ片側4車線ある通りを見回した。



 後方から警察やNSAの車両が来ないよう反対側の歩道を選び歩いているが同じ暗い色合いの連なる大型SUVやバンが走ってくることはなかったので前へ顔を戻した。



「長距離バスは駄目。司法に簡単に止められて──ヘラルド、セル出して」



 そうマリーが言うとヘラルドはトレンチコート捲りをスーツの内ポケットに手を差し入れスマートフォンを取り出しマリーに手渡した。



 するとマリーは歩きながら爪を立てスマホのトレー引き出し通信用SIMを取り出し車道に投げ捨て、トレー閉じてセルをHBに返した。続いてマリーは自分のセルにも同じことをして携帯をスーツの内ポケットに仕舞ってヘラルドに告げた。



「これでNSAは追跡できないわ」



「マリア、君はいつもつけられることを心配するのか?」



 ヘラルドにたずねられマリーは片唇を一瞬吊り上げ応えた。



「10年もシールにいたのよ。状況注視は無意識にやってしまうわ────私たちは上院議員を侮辱し聴聞会を台無しにしたわ。通常役人はそのような行為を見逃さない。こっちが正座し頭下げるまで集団リンチでなぶるのよ」



「言い方がよくないぞマリア。認めるまでだろ」



 いきなりマリーが立ち止まったので、ヘラルドが遅れ立ち止まり振り向きたずねた。



「どうした?」



 マリーは四百ヤードほど先の交差点から4台の黒塗りのサバーバンが連なって曲がって来るのを見て立ち止まり半身振り向いて寸秒後方確認すると同じ仕様の黒のSUVが3台連なり歩道に近い車線を走ってくるのを眼にした。



「まずいわ」



 そうヘラルドへ顔を振り戻しマリーはつぶやくと彼の片腕をつかみすぐ先の交差点から左の方角へ自然に曲がるとヘラルドに告げた。



「NSAよ。7台、10数人程度」



 そう言いながらマリーは歩く歩道沿いに向かって並ぶ路駐車の列を見流し目的に合いそうな車を選んだ。



 その赤色の日本車の真横へ小走りに二人で駆け寄り、ヘラルドを歩道側とは反対の助手席外に立たせ、マリーは運転席側のドアへフロントから駆けて回り込んだ。



 ドアの錠前へ手のひらをかざし深く息吸い込み意識集中すると機構が現実に見えるもに重なり意識に浮かび上がった。



 複数のピンをコントロール。



 シリンダーを回す。



 簡単にドアロックが外れる音が聞こえマリーは急ぎドア開いて運転席へ乗り込み身体傾け助手席のロック開錠しノブに指掛けドアを押し放ちラルドへ乗るように怒鳴った。



 彼が乗り込む前からマリーはハンドルポストにあるイグニッション・キー・シリンダーに手のひらをかざしドアの時のように同じ手順を踏んだ。



 マリア・ガーランドがこの旧式のWRXを選んだのには理由があった。



 最近の車は電子式キーレスエントリーでドアやエンジンスタートをコントロールできる。何度か試してみてその様な電子デバイスにたよらない以前の車の方が簡単に服従できることを経験し知っていた。



 エンジンが掛かると低い排気音が聞こえだしマリーはシートベルトしヘラルドに告げた。



「シートベルトして。乱暴な運転するけど心配しないで。ビクトリアの経験と感覚を取り込んであるから」



 そう告げアクセルを踏み込んで浮かせエンジンを一吹かしさせマニュアルシフトをローに入れ、ブレーキをつまりで踏みもう一度アクセルを今度はかかとでベタに踏んでクラッチミートしながら片手のひらでハンドルを回した、タイヤから爆煙上げながらWRXを急激に路駐車の列から出すと、歩いてきた交差点方から四台の黒のサバーバンが曲がってきた。



 車道の中央車線越しまでノーズ出した勢いで全輪を空転させながら一気に反転させ南側へ蛇行させながら急激に加給させ加速させ数秒で40マイル/hを越え先の交差点へ出ると左から宅急便のUPSバンが走ってきた。



 とっさにマリーはサイドを引きダブルクラッチでシフトダウンし四輪を流しながら大きくWRXの向きを急激に不自然に変えきわどく横からのバンをかわし配送業の運転手へつぶやき謝った。



「失礼!」



 ハンドル操りながらマリア・ガーランドはレベル7でデイープシンクロし得たヴィッキーの感覚でこの初乗りの車を完璧に操れてると思った。



 ルームミラーに小さく交差点へ出てくるサバーバンが見えていた。すでに距離離した上に加速力で勝る日本製スポーツカーに追いつけるはずがなかった。



「マリア、君は普段からこんな乱暴な運転を────」



 両手でつかめるものを押して助手席のシートに深く身を沈めているヘラルドが問い質した。



「乱暴? ジェット戦闘機操るのに比べたら赤ちゃんのハイハイだわ」



「ジェット戦闘機!? いつからだ!?」



「一年半、ああ気にしないで。この車のように合衆国空軍から盗んだわけではないの。ヴィッキーが所有するFー16に私が乗って、彼女のシルフィと模擬空戦をやるけど本家の方が技術的にも機体的にも上だから勝ったことがないの」



「空戦だって!? そんなレヴェルで戦闘機を操れるのか────」



 つぶやいたヘラルドが感心してるのか困惑してるのかわからないとマリーは思った。



 この人の感情はいつだってつかみ辛い。



 しかも思考がまったく読めない。テレパスの能力を使っても。あのパトリシア・クレウーザでも読めないらしい。どんなデバイスで超空間精神接続(ブレイン・リンク)をオミットしてるのだとマリーは思った。



 だいたい人は一つや二つの隠し事を持ってるものだけど、ヘラルドはとんでもないことを隠してるとマリーは思った。





「マリア、NSAを巻いたようだが存在無しの連中は警察を手配したみたいだ」





 そうヘラルド・バスーンが警告した刹那せつな、前方の鉄道高架の先のT字路右から白黒ツートンの色をした赤青を交互にフラッシュさせる警察車両が3台曲がってきた。







 マリーはそれがどうしてヘラルドにわかったのだと警察車両の出現よりも動揺させた。












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