Part 3-3 Senate Hearings 上院議会聴聞会
Specialist Committee Office, North Wing of the United States Capitol The National Mall Washington D.C. 09:17 22th Dec.
11月22日09:17 ワシトンD.C.ナショナルモールアメリカ合衆国議会議事堂北棟上院議会専門委員会室
ワシトンD.C.の合衆国国会議事堂の駐車スペース──多くの駐車場らしくない赤煉瓦敷き詰められたスペースに白い煉瓦でチェック模様をデザインされた議事堂東のキャピトル・グラウンズ前に設けられたエリアに運転手付でレンタルしたリムジンで乗り付けた三人は、まず下りてリムジン・フロントを回り込んだ運転手がドアを開くとNDC契約弁護士事務所の弁護士エドガー・シェフィールドが大きな鞄下げて最初に下りて会長のヘラルド・バスーンが下りると彼がマリア・ガーランドに手を差し伸べてMGが下りた。
正面にある議事堂ドームの東玄関は参観者センターなので、左翼の連邦政府庁舎から入り警備員に上院聴聞会に召還されたNDC会長のヘラルド・バスーンと社長のマリア・ガーランド、弁護士のエドガー・シェフィールドだと名乗りエドガーが身分証を見せると、警備員がセキュリティ・ルームに無線で問い合わせ、しばらく待たされると奥から上院議会事務官の一人が歩いて来て身分を名乗った。
「上院議会一等事務官のスタンリー・オグレイディです。聴聞会の準備は出来ています。ご案内します」
ヘラルドと並びマリーは歩き出し、まさかホワイトハウスだけでなく国会議事堂に来るなんてと落ち着かず内装に眼を游がせた。
殆どの壁はオフホワイトで仕上げられており合同庁舎だというのに壁の天井際や柱にコリント調の彫刻で仕上げが入れられておりマリーは愕いた。
真っ直ぐに議事堂ドームの方へ向かい多くの柱で囲まれたドームを見上げその北側に通じるドアを抜け一目で議会室とわかる奥に四十、横幅が百十フィートほどの個別テーブルと椅子が百ほどの会議室だった。
片側壁の中央に二段高い議員席があり、マリーはその席の少なさに上院議員百名が収まりきらないと思い弁護士のエドガーに尋ねた。
「あそこに議長が座り、私達の周囲を残りの上院議員が取り囲むの?」
「いえ、ガーランドさん、聴聞会の多くは上院議会全員が参加する本会前に少数の上院議員で行う少数議員の聞き取りから始まります。異議が申し出られないなら、極端な話で聴聞会は正式な議会ではなく上院議員一人でも聴聞会が行われます。ですが、この小議員聴聞会で六桁の議事録コードが知らされ正式な議事録が記録され、議事の行われる都度に末尾の枝番が増えてゆきます」
あの議壇の正面の小さくはあるが高級感のある座席に三人してダンセ被って腰掛け叱られるのだと思いうっかり口にしそうになりマリーは唇を堅く閉じた。
案内してくれたオグレイディ一等事務官に着席する場所を指示されマリーはムッとした。
ヘラルド・バスーンが最前列中央にその右にマリーが座り左に弁護士のエドガーが腰掛けた。
まるで席に着くのをどこかから見ていたように僅かに間をおいて議員と書記官が入室してきて三人で席を立ち議員らが着席するのを待ちヘラルドが座るのを待ちマリーとエドガーが揃って着席すると上院議員らが名乗った。
「本聴聞会議長を勤めますシオドア・クィルターです」
高齢の彼女が名乗り左右に座るシオドアよりやや歳下の男性の上院議員がそれぞれ名乗った。
「議案、複合企業NDCの特許請求権の合法性603ー101の聴聞会を始めます。ヘラルド・バスーン会長勤める世界的企業のNDCが申請する数多くの特許請求には、政府から法的に不正が行われている嫌疑が掛けられています。要約するとそうなのですが、NDC傘下に加盟した多くの企業はその年度から百倍以上の特許申請を行っており、上院で調べただけで八十一パーセントに登る企業が特許という武器を振るうことに邁進し莫大な利益を世界規模で得ています。これは誠にもって独占的搾取を行っていると特許庁からの申告もあり、その絡繰りが正当な研究においての産物でなく不当に得た技術的要因があるということでその究明を合衆国議会として執り行います。まず氏名職務を名乗り議会証言に対しての偽証なき発言を合衆国憲法に乗っ取り宣誓してください」
議長に言われヘラルドが立ち上がり右手を左胸に当て宣誓した。
「私、ヘラルド・バスーンは複合企業NDCの会長であり、国内外のあらゆる敵から合衆国憲法を支持し、擁護することを厳粛に確約します。私は憲法に対し真の信念と忠誠を尽くし、何ら精神的留保や回避の目的なく、自発的にこの義務を負う。そして、これから就こうとする議会証言の義務を忠実に、誠実に履行することを誓う。神よ、私を助けたまえ」
何が神だと思いながらボスが着席するとMGが壇上を睨み立ち上がり同じように宣誓し着席し、弁護士のエドガーが宣誓した。
開催される聴聞会の議事録には、すべての証人の証言、聴聞会の質疑応答、および上院が証人に要求した全ての資料が含まれています。聴聞会が開催される場合、通常は数か月、場合によっては数年かかる場合がありますが、これほど早急に議会が開催された理由は上院だけでなくホワイトハウスや政府各省庁が危険視しているからに他なりません。他のほとんどの議会文書とは異なり、上院または下院文書室から議事録を聴聞会は利用できません。つまり前例を持ち出して上院に抗おうとしないで下さい。
そう弁護士のエドガーから昨夜警告されており、流れは私と弁護士事務所に任せて欲しいとエドガーからマリア・ガーランドは頼まれていた。
だが私は飾りではないとマリーは思っていた。
聴聞会の種類には、立法──法案に関する事実、意見、またはデータを収集目的。承認──大統領候補者(裁判官、公務員)の資格、利益相反、および政策見解の審査。監督──政府機関または法律の施行を監督の為に開かれるとエドガーが説明した。
つまるところ聴聞会が開かれたのは規制法案に関する事実と政府、国民に対しての利益相反が大きいと弁護士事務所では見ていた。
「上院作成の資料をご覧になって下さい。まず複合企業NDCは特許を盾に膨大な収益を政府や国民に還元しておらず、多額の資金で多くのロビーストを遣い独禁法を回避し、市場を特許で席巻しているのが数値から確認できることにどの様な反論をお持ちなのか?」
そう議長が問うと、ヘラルド・バスーンが応えた。
「聴聞議会議長、数値への反論は行いません。我々は全ての傘下企業の財務記録と統計的数値判断、市場判断のデータを議会に提出していますが、それが件のご質問の本質的解答ではなく、政府を代表する議会に告げておきたい事があります」
昨夜の打ち合わせとまるっきり違うとマリーはヘラルドの横顔を見つめると、反対側から弁護士のエドガーが強ばらせた顔で会長を見つめていることに気づいた。
「全ての奇術には隠されている技術があります。それを観客は受け入れるしかない。世界の国々に暮らす市民は市場を形成していますが、企業などの送り手から出されたものを受け入れるしかないのです。では市民は搾取されているのかと言うとそれは違います」
それを聞いているシオドア・クィルター上院議員の右横に座る男性の上院議員がヘラルドに尋ねた。
「市場と奇術がどの様な繋がりかこじつけでないとしても、全ての経済が消費だけで回っているなど当たり前で低い認識を吹聴するなら、NDCのレヴェルも市場を支えるに価しないと取っても仕方のない事だと御認めになるのですか──会長────殿」
ああ、そうだわとマリーは思った。
この五年間でヘラルド・バスーンが何かにキレる事を一度も眼にしてないのだとマリーは思いだした。
あの議員は政府の一任者で有りがちな国民からの乖離を如実に言葉にしているだけではない。最初から一から叩き上げたヘラルド・バスーンの努力もの権威も蔑ろにする最低の輩だとマリーは小さく鼻を鳴らした。
そのボスを本気で怒らせれば、政府の歳入三割近くを左右するNDCの莫大な税金負担がどうなるか、軽く考えてみても熊を刺激するということに気づかぬ愚かさを思い知らせてやろうと口を開きかかると、ヘラルドが喉を鳴らしてそれを制した。
「本聴聞議会の狙いはNDC傘下の特許申請の研究開発の真の姿を上院議員の方々が知るところにあり、経済施策の色合いを話し合う為に私を呼ばれたのではないと思いますが、提出している資料にNDCの根幹である研究開発の種類、進捗状況が一切ないと上院議員の方々は既にお気づきでしょう。なぜなのか────」
マリーは聞いていてこれがヘラルド・バスーンの立腹の仕方だと気づいてラピスラズリの瞳を游がせた。
この人は本気で政府に喧嘩を売るつもりだ!
押し止めないと事態はとんでもない方向に向かうとマリーは思った。
NDCへの罰金制裁はもとより、複合企業の切り離し、資産の政府差押え、すでに獲得してる多量の特許の認可取り消しと簡単に思いつくだけでも片手指で足らなくなっている。
「────今の市場に出す殆どの特許申請はただの形式であり、市場は私が小出ししている科学、技術の奔流に抗えはしない。なぜなら────」
「私は全て知っていることを切り売りしてるに過ぎないからだ」
え!? マリア・ガーランドは意味をつかみかね、またヘラルドの横顔を見ると彼が僅かに顔を向けオレンジの瞳を流して僅かに微笑んだ。
「バスーン氏、NDCは傘下企業への研究開発は行っておらず、すでに既知のものを申請させていると? 初めから知っていた知識で巨大複合企業NDCを創り上げたそれらはどこから貴方若しくは貴方がたは手にしたと言うのです?」
そう議長のシオドア・クィルター上院議員がヘラルド・バスーンに問うた。
「コロンブスにでなくアメリゴ・ヴェスプッチにお聞きになればいい。未開の原住民に対しての持ちうる知識をどこから持って来たのだと。それともこれを議会侮辱罪として誹りますか、シオドア・クィルター聴聞議会議長?」
「それも可能ですよ。ヘラルド・バスーン。貴方を議会侮辱罪で拘禁刑にすることも可能ですが──」
シオドア・クィルター上院議員が述べている途中でマリア・ガーランドは割って入った。
「国に膨大な利益生みだしている一企業にそうなさるならすればいい。国費歳入の三割を失い十万に近い職員の給料を支払えず、国政は混乱し現政権も貴女の支持母体である共国党は党員の多くを激減させ民州党が政権を簡単にひっくり返す。下院のみならず上院や最高裁のメンバーも比率が大きく民州党に傾き、ライフル協会も支えきれず貴方がたは瀕死の状態で向こう十年以上政権に返り咲くことはない!」
MGが椅子から腰を浮かし一気に言い切った直後、シオドア・クィルター上院議員が警告でなく脅しに掛かった。
「マリア・ガーランド社長、貴女が今、仰ったことは議事録として残り議会脅迫で有罪となります」
マリア・ガーランドは右手を振り出し人さし指でシオドア・クィルター上院議員を指さすとその爪先にラグビーボールほどの火焔を生みだし警告した。
「喧嘩を売ったのは貴方がた政府。今、上院議員──御三方が眼にしているのはラスベガスのホテルステージでよく見かけるマジックなどではなく万物の摂理を操る私の根本的な凶暴さの一つ。この火焔を一瞬でワシントン規模に拡大しキラウエア火山の影響よりも幾重にも焼け冷え固まった溶岩のように何も残らなくさせるか、何事なにもなかったワシントンにするか、貴女がたの謝罪一つで操ってみせる!」
シオドア・クィルター上院議員があからさまに困惑げな面もちになり、壇上から下の机で議事録を作成している議員技官に命じた。
「セキュリティを呼びなさい!」
その技官が驚き顔で駆けだして行くのに合わせマリア・ガーランドは伸ばした指先の焔消してヘラルド・バスーンの腕をつかみ立たせ、その横に座る弁護士エドガー・シェフィールドに言い切った。
「大丈夫、あなたは罪に問われない。問題なのは私たち二人だから」
そう言い切る女社長に苦笑い浮かべるヘラルド・バスーンの腕を引っ張りMGは机の列から彼を引っ張り出し、今、一度上院議員らを流してた手の伸ばした人さし指でさし示し捨て台詞残し議会室の扉へ急いだ。
「貴方たち命拾いしたわね!」
合同庁舎へではなく議事堂正面の参観者センターの方へ急ぎ足で行きながらマリーはヘラルドに問うた
「どうして止めなかったの!?」
「マリア、君を止めても私がああ言っていたさ」
聞き流そうとしてマリーは気づいたことをヘラルドに問うた。
「あなた高次空間のパラメーター操作なんて出来はしないじゃない!?」
「君に及ばないが、それなりの力は持ってる」
マリア・ガーランドはぎょっとして並び駆ける会長へ顔を振り向け、参観者センターから走り出てきた警備員にぶつかり派手に転倒し、両脚振り回し一気に立ち上がりグロック19を抜こうとする警備員の手首つかみ男の背後に腕を捻り上げた。
そうして一つの動きのように銃を奪いマガジンを引き抜き片手指のすさまじい勢いで全弾飛ばし抜くと投げ捨て、銃のスライドを引いて1発薬室から引き跳ばしスライドを引き抜いて役に立たなくなった金属と樹脂の塊を警備員に投げ返しそれを眼にしたヘラルドからからかわれた。
「今のを議員らが見たら青ざめたぞ」
マリーは鼻で笑い彼と参観者センターへと駆け込んだ。
参観者センターにもう二人警備員がおりマリーとヘラルドの前に立ち塞がるとマリーが倒そうと駆け込んだ寸秒、眼の前で警備員二人が大理石の床に膝落とし倒れ込んだ。
それを眼にしたマリア・ガーランドは会長へ振り向くと真顔で問い質した。
「何をやったの────!?」




