Part 3-2 Nubes Oscuras 暗雲
FBI Training Facility Dormitory Quantico VA. 23:58 21th Dec./
Port of Guanta warehouse operated by the state-owned company Bolipuertos Anzoategui Venezuela, 15:18 Dec 22th/
USS DDG-65 Benfold, Destroyer Squadron 15, U.S. 7th Fleet Mariana Trench Challenger Deep, Local Standard Time 09:13 22th Dec.
12月21日23:58 ヴァージニア州クワンティコFBI研修施設研修員寮/
12月22日15:18 ベネズエラ アンソアテギ 国営会社ボリプエルトス運営グアンタ港 港湾倉庫/
12月22日09:13マリアナ海溝チャレンジャー海淵海上米国第7艦隊第15駆逐戦隊所属ミサイル駆逐艦DDG-65ベンフォールド
研修員寮のプライベート一室で、ベッドに腰掛けたダイアナ・イラスコ・ロリンズ──ルナは耳に当てたシェリーで報告を受けていた。
『──ブロンクスの二カ所のアジトは偽物でした。捕らえた連中十六人は似てはいるのですが、全員が防犯カメラに録画されているテロ実行犯と顔認証で不一致でした』
陰鬱な表情のNDC副社長は通話先のエレナ・ケイツに優しく問うた。
「現場に自爆用の爆発物はなかったですか?」
『ありました。ですが対応が早く最悪の事態は回避しました』
それを聞いてルナは小さくため息漏らしもう一つ問うた。
「レノチカ、マリアには報告しましたか?」
『いえ、社長にはまだ。どう報告すればいいか考えあぐねいています』
「構いません。MGには私から報せます。皆をねぎらい休ませなさい。レノチカ、あなたも過剰労働ですよ。休みなさい。明朝まではテロリストらも攻勢にでないでしょう」
『ルナ、ありがとうございます。失礼します』
通話が切れると、ルナはシェリーをベッドに置いて立ち上がりテーブルに立たせたラフロイグのミニボトルを手に取り封を切りコルク抜くと一気に飲んでコルクを戻した。
一度荒く口から息吐くとルナはミニボトルを強くテーブルに立てて引いた顎上げてカーテン開いたままの窓外の闇を睨み据え悪態を口にした。
"That's bloody brilliant!"
(:大したものだわ!)
そうしてダイアナは姿勢ただし腹の前に両手指を重ね呼吸落ち着かせると踵返しベッドに戻り静かに腰下ろしてシェリーを手にしてマリア・ガーランドの通話番号を片手で素早くタップした。
ワンコールでマリアが出るなりルナは謝った。
「お休みのところをすみません。取り急ぎ報告を──」
『構わないわルナ。襲撃が思わしくなかったのね』
「はい。全員拘束しましたが、実行犯は一人もいませんでした。敵はデコイを用意周到に我々につかませました。今夜この時点までテロリストらはまったく名乗りを上げておらず、まだテロは続きます。恐らく────」
言いよどんだ副官に通話先のマリアが気を回した。
『いい。ルナ、私が言い当てましょう。テロリストらは大勢の市民に犠牲を出しながら最終目標がNDCか、私にあると考えられる。正解だわよね』
「合ってます。マリア、激怒しないで──いえ貴女はすでに相当腹に据えかねています。ですが────」
通話先でMGが鼻で笑ったように聞こえルナは一気に青ざめた。
『全員捜し出し、トップダウンで指令したものまでこの地上からのすべての権利を奪います』
その物言いにルナは目眩を感じて左手指を額に当てた。ことの発端は決して合衆国内ではなく南米か中東の何れかの国であり、ヘッドハンティング出来ないとなると通話先の女はまた確実に都市ごと殲滅しようとする。
すでに魔法抑制首輪は彼女に意味がなく高位次元の力は太陽系さえ簡単に崩壊させるほどの上限知らずのキャパシティを見せ始めている。
だが問題は、どれほど巨大な力があってもマリア・ガーランドが俯瞰して人すべての細事を掌握できないというジレンマにある。
リヤドのことを忘れてはならない。十マイル以上ある大都市をまるブラックホール押しつけたように爆縮させたのだ。一部の残された郊外の家並みがすべて中心地区へ向かい倒壊して殆どの市民がいなくなった。
マリア・ガーランド以外にあんなことをやれるものがいるもか!
同じ過ちを彼女に繰り返させてはならない。
コントロールするのだ。
闘神のような女を掌握するのだ。
「マリア──すべてを手繰り寄せるには犠牲を伴う猶予が必要です。それをご承知の上、私にお任せ願えれば────貴女に刈るべき首を差し出しましょう」
通話先でMGが小さく笑い声を漏らし、ルナは一時だが次手打つ時が稼げたと思った。
「それとマリア──ボスの上院聴聞会ではくれぐれも────」
いきなり通話切られルナはエメラルドグリーンの瞳丸くしてシェリーの液晶画面を一度見ると通話切られたことを今一度自分に認めさせ、打ち手を誤ったと素直に認めた。
「だけど、知力でこの私に貴女は勝てはしないのよ」
そう呟きルナはシャワー浴びる準備を始めた。
エグゾセを受け取ってすぐにも作業は始められた。
まず日中に四十積載重量トンの大型漁船を四艘、港のポートに大型クレーンを二台用意し、邪魔な漁船の艤装を取り払い、カモフラージュネット掛けた射台に載ったミサイルごとクレーンで吊り上げ載せに掛かった。
武器商人らが立ち去り一時間もたたずに麻薬カルテルのビンクロ・デ・マルテ・カルテル(:死の結束)戦略情報責任者──ロレンツォ・ラミレスは指揮を取り人が集められ14:30前に作業を始めると半時間後にボスのアントニオ・G・エレーラが様子を見にきた。
"Lorenzo, ¿te irá bien en un barco como este?"
(:ロレンツォ、こんな船で上手くいくのか?)
そうボスに問われ任されているロレンツォは専門用語を簡単な言葉に代えアントニオに説明した。
"Incluso un pequeño barco pesquero puede ser confundido con un barco de contrabando por el ejército estadounidense dependiendo de cómo se mueva."
(:小さな漁船でも動き方次第で密輸ボートと米軍に思われます)
"Sin embargo, si hay cuatro barcos pesqueros más grandes en las aguas cercanas, el ejército estadounidense seguirá realizando una búsqueda temporal en el mar."
(:ですがこれ以上の大型漁船だと近海に4隻も集まるとやはり米軍は海上臨検捜索をします)
"El ingeniero preparado por el traficante de armas solicitó que el barco pesquero no pudiera lanzar un misil a menos que fuera de este tamaño."
(:漁船はこれぐらいの大きさでないとミサイルを打ち出せないと武器商人の用意した技術者が要求してきました)
漁船にクレーンで吊され載せられる様子を見ながら、メッシュシートの傾きからミサイルが後方を向いていることにまだ不安げな様子のアントニオがロレンツォに尋ねた。
"¿Cómo diriges los misiles hacia el lateral de una nave?"
(:ミサイルは船の横へどうやって向けるんだ?)
問われロレンツォは頭振った。
"No se pueden disparar misiles a los lados de barcos pesqueros.Los misiles solo pueden lanzarse directamente detrás de barcos pesqueros.Parece que si disparas de lado en un barco tan pequeño, volcará y no podrás guiarlo tras el lanzamiento."
(:ミサイルは漁船の横へは撃てません。ミサイルは漁船の真後ろにしか発射できないんです。こんな小さな船で横へ撃つと転覆し発射後の誘導ができなくなるらしいです)
アントニオは唸り声を漏らすとロレンツォに命じた。
"¡Bien! Sería bueno. Te dejo todo a ti. ¿Habrá un ataque al ejército estadounidense esta noche?"
(:よし!いいだろう。お前にすべて任せよう。米軍への襲撃は今夜やるのか?)
"Los preparativos terminan después de medianoche. Hundiré un destructor estadounidense a las tres de la tarde)"
(:零時過ぎに準備は終わります。深夜三時に米軍の駆逐艦を沈めます)
そう説明し終わりロレンツォはアントニオに申し出た。
"Antonio, mañana por la mañana tomaré un vuelo a la capital de Estados Unidos.Mientras tanto, por favor, ten mucho cuidado. El ejército y las agencias de inteligencia estadounidenses siempre responderán──Aquí Garsotte"
(:アントニオ、私は明朝の航空便でアメリカの首都に向かいます。その間、十分にご用心なさって下さい。米軍や情報局は必ず報復に出ます──ガローテですよ)
米軍の戦艦を沈め、その指令だすトップの首を締め上げ殺す。麻薬カルテルのボスアントニオ・G・エレーラは特殊部隊兵が敵の首をワイヤーで絞め殺すガローテという方法を好んだ。銃殺、刺殺、爆殺────手段は何であれガローテと指示出してきた。舌なめずりした麻薬カルテルのドンは思った。
アメリカ合衆国大統領とて例外ではない。
DDGー85マッキャンベルと共に巡航ミサイル・トマホークを放ったが、それが乗っ取られUターンし洋上に出る前に浮上した球体上空で起爆処理した。
浮上し続ける巨大球体へさらに打撃与えるべくミサイルの種類に関わらずDDG-65ベンフォールドとマッキャンベルは飽和攻撃に打ってでた。
三、四発がハッキングできても種類の違うミサイルを多数撃ち込まれれば対応できまいとの狙いだった。
その二艦合わせ撃ち放った三十以上のミサイルが尽く海上に墜落すると、いきなり浮上し続ける巨大球体の周囲海面が急激に下がり始め滝のように海面を呑み込みそのすり鉢状の周囲に立ち上がった三十ヤード以上の津波がベンフォールドとマッキャンベルを襲い、転覆寸前にまで揺さぶられ津波を乗り切った。
押し切られ海面を滑り落ちたDDG-65ベンフォールドのエドワード・クィンラン艦長とデズモンド・キングトン副艦長はを左へと急速旋回を命じて左翼ウイングに出て球体の下部に落ち込んだ海を目の当たりにして、その盆地状の窪みに浮かぶ巨大な鏡面の球体があまりにも大きく球体だと見えなかった。
「2マイルはありますよ! こんなデカ物に二艦で挑むんですか!?」
副艦長のデズモンドがそうエドワード大佐に言うと艦長は少佐に問い返した。
「この巨大な奴から逃げ切れんぞ。戦うしかない」
そう言い切り大佐は艦橋に戻った。艦の交戦規則でデズモンド・キングトン副艦長は真っ直ぐに戦闘指揮所へと向かいながら考えた。
いくらマリアナ海溝が深くとも軽く2マイル余りの謎の物体が海中に沈んで潜んでいたとは考えられなかった。ロシア艦は分からぬがアメリカ海軍の原潜は定期的にマリアナ海溝を通過していた。
確かに浮上はしてきている。
浮上してきているからとそこに居たのかは言い切れないと彼は思った。
少佐はCICに入るなり、二十六名いる部下らに問い掛けた。
「球体の大きさは!?」
それにイージスの運用情報分析要員がコンソールから振り向き応えた。
「レーダーの反射波が二マイルに渡りブラインドになっています」
索敵範囲がジャミングされレーダーが遮蔽されている範囲が対面する球体の幅を二マイルに見せているということだった。
CICの全員が不安げな面もちだった。
「十八発のミサイルが無効化されました。続けますか?」
戦術管制士官がそうCIC指揮官の少佐に尋ねた。
「艦長はやる気でいる。とても逃げ切れる相手ではない上に敵だと思われる巨大球体は海面をあの大きさで穿った謎の武装を有している」
「ライノは到着まで25分です」
そう戦術管制士官に言われ空母ジョージ・ワシントンから発艦したF/Aー18スーパーホーネットの到着まで25分だったが、少佐あの球体が本気になったらそんなにもたないと思った。
「ミサイルの残総数は?」
そう少佐に問われ戦術管制士官が即答した。
「75本です」
戦闘開始から十二分で十八発を放ち、まだ敵に一撃も有効被打撃与えられず、残り七十五発なら単純にも一時間四十分はいけるという勘定だ。だが、恐らくは幾何級数的に状況が悪くなるだろうからその五分の一の時間が良くて限界だろうと踏んだ。
運が良くて艦載機が来るぎりぎりになる。
艦長の手腕しだいだ。
一方的に押し続ければ巨大球体はどんな手段に出るか予想できずマッキャンベルと二艦でも堪えられない。
「全員、防火装備着用!」
通常戦闘規定ではデフコン1の戦闘開始時には全員が防火服やマスク、手袋を装着し対戦闘操作継続をするのだがコンソール操作に様々な支障来す為にこれまで少佐は未装着を黙認してきた。
そう戦闘指揮所指令に命じられ二十六名が覚悟決めた。




