Part 2-5 Losing Battle 負け戦
The Ritz-Carlton, Washington, D.C., 23:19 21th Dec. /
Queens Midtown Tunnel New York City, NY.,23:04 21th Dec.
12月21日23:19ワシントンDC ザ・リッツカールトン ・スイート
12月21日23:04 ニューヨーク州ニューヨーク市クイーンズ・ミッドタウン・トンネル
送られてきた防犯カムのラプス映像を眼に焼きつけてマリア・ガーランドは電話掛けてきたルナに礼を伝えた。
「ありがとうルナ。確証が欲しかったの」
『マリア、殲滅してはいけない。できる限り全員捕らえ司法に引き渡すと約束してください』
プレジデンシャル・スイートのリヴィングで豪華で柔らかなブライドルレザーのソファに腰掛けたマリア・ガーランドは殺され決して元に戻せない傷を負わされた人々を思いテロリストらを決して許せないと思った。
「ダイアナ、このフラストレーションをどう収めればいいか私にはわからない。NYを混沌に落とし込んだ連中がアメリカにすべているとは思わない。その決断を下し指示を出したものを喩えどこの国家にいようとどれだけの兵に護られていようとこの地上から消し去る」
「それが私の────決定だ────」
『そうですか。貴女を押さえ込むには事象の地平線に放り込むしかなさそうですね。地球を潰されるより良しとしましょう。ああそれからヘラルドの上院聴聞会に私も出席できますが、いかがいたしましょう?』
マリーは一度深く息を吸い込んでゆっくりと吐き出すとルナに応えた。
「パトリシアから知らせを受けたわ。NDCが開発した特許全ての出所を上院は疑っているけれど、あり得ないと考えた上院議員を動かしたホワイトハウスの大統領首席補佐官プリシラ・メイクピースはボスを拘束するように国家安全保障局に指示を出してる。聴聞会は荒れるわよ。私はボスを護りできる限り状況悪化を避けます。ルナ、NYに帰り情報部とセキュリティの指揮をお願い」
『マーサに相談持ち掛けてみますか?』
「いえ、彼女が板挟みになるからマーサの判断に任せます」
『それでは御武運を』
「あなたも────」
通話が切れるとマリーはすでに今夜、NDCのセキュリティが動くように手配済みだと思った。まず爆弾の電子基盤を発注受け取りをした男がニューヨークに潜伏するテロリストらにいることを確認し、寝込みを襲撃し全員を拘束するようにすでにエレナ・ケイツに指示出してあった。捕縛した連中を警察の手が及ばない施設で個別に尋問する手配もしてある。
問題はどのレヴェルまで命じた人物を洗い出すかだった。
サウジアラビアの時のように最高位が指示出していれば、また都市一つ灰燼にしてしまうことにも繋がる。
首をすげ替えることを容認するか。NYの人々の苦しみと同じものを味あわせるか。
市民には様々な思想があれど、他国に甚大な被害を齎す力も金も組織力もない。
トップが入れ代わることを受け入れ、指示出したものがどうなるか見せしめにしなければ、とMGは思った。
ふとマリーは聴聞会に銃を携帯すべきか迷った。隠しての携帯許可はD.C.とワシントンで取ってあるので問題にはならないが、議会の警備員はきっと金属探知機で身体検査するはずだった。
今では銃に限らず精密でかなりの大きさの物でも容易に現界させることができる。
シルフィー・リッツアの故郷の異世界で対戦車ヘリ・アパッチですら機能する物として無から一瞬で構築できた。
もしもヘラルドを拘束しようと政府が動くなら武力行使も仕方ないとマリーは思った。
NDCはただの巨大複合企業ではない。今では対テロ非正規戦の基盤であり予算の多くを収益から得ている。だがヘラルドが拘束され政府の都合よいように確約取らされ、さらにNDCに政府が介入してくるようだと最早対テロ非正規戦が崩壊してしまう。
ホワイトハウスの思うようにしてはならいと考えてマリーは立ち上がるとリヴィング一角のバーへ行きジャックダニエル・ブラックを見つけ手に取り封を切りショットグラスに注ぐとそれを一気飲みした。
父マイクの好きな酒だった。
芳醇な薫り楽しむよりアルコールに任せ一時でもいいから痛心から逃れたかった。
一杯で止めるつもりがもう一度注ぎ、今度は味わいながらゆっくりと飲んだ。
明日は朝から頭をフルに回さなければならない。
ウイスキーのボトルにキャップを閉めマリーはリヴィングの照明を消して何時でも外を出歩けるようにスーツ姿のままソファと壁の間に入り手をソファの前に回しクッションを一つつかみフローリングの床に横になった。
寝室にはヘラルド・バスーンの寝息が聞こえており、マリア・ガーランドは腰の脇後ろにクリップでとめているホルスターからFN─FivesveNを引き抜きスライドを僅かに引いて薬莢のリムとプラグキャップを確かめ装填されていることを確認すると銃握を握ったまま眠りについた。
よもや前日に国家安全保障局がヘラルドの確保に動くとは思えず、今夜はそう神経質にならずに眠れそうだった。
それでも用心のためスイートルームの出入り口ドアにワイヤーを半抜きしたセーフティピンに回し固定した手榴弾を一組現界させるとそのトラップを意識して眠りについた。
意識が落ちる寸前にこれが大企業の社長のすることかと、僅かに腹立ち覚え眠りに落ちた。
十台の黒のGMCユーコン・デナリが同じ車間距離で列車のように車の少ない街道を走り抜けクイーンズ・ミッドタウン・トンネルを抜けブロンクスに入って行くとすぐにハイウェイを下りて21番ストリートに入り43番アヴェニュを抜け夜更けの街道を法定速度よりやや速い毎時三十マイルで走り抜け五分余りで目的地近隣に到着し、その内三台が別の目的地へ目指した。目的地近隣のハワード・アヴェニューに次々に路駐し、辺りの歩道や車道に人がいないことを確認し、二十七人がユーコン・デナリから次々に下り立った。
その男女はいずれも都市迷彩服にボディアーマーの上にチェストリグを装着し弾薬ポーチやナイフ、その他の装備入れたポーチをリグと腰ベルトに多数装着しコンバットグローブ付けた手にはマグプルのMVG/MーLOKバーティカル・フォアグリップ、アッパーレシーバー・レイルの45度オフセットアダプタに載せたトリジコンRMRタイプ2光学ダットサイト、レシーバートップにトリジコンACOG4x32ライフルスコープを装着したFN SCARーHを握っていた。
先頭のSUV後席に一人残っているミュウが車の傍にいるリーダーに声を掛けた。
「ロバート、今から標的のアジトと周辺建造物をスキャンします」
「ああ頼む。チーフから送られてきた映像の男がいるか先に確認してくれ」
そう第二セルのリーダーであるロバート・バン・ローレンツが開いたドアの傍らから覗き込みそう言うとミュウが頷いた。ロバートが本作戦の指揮を取っていた。
NDCのセキュリティらが目立たぬように影に身を潜めている間だ、別れた三台のSUVはテロリストらの爆弾工場を目指していた。
「ロバート、アジトの奥に電子基盤を受け取った男を確認。アジト内に合わせ九人の中東人らしい男らがいます」
それをミュウから聞いたロバートは別働隊が爆弾工場へと到着するのを待つ間、第一中隊二十六名に配置に着くように無線で指示した。しばらくして別働隊からの無線通信をロバートは受信した。
『こちらブラボウ1、目的地に臨場。突入準備完了。状況グリーン』
「アルファ1だ。こちらもオール・グリーン。2320に状況開始2320だ」
『了解2320了承、以上』
街中だ。撃ち合いになれば付近の住宅から多くの人が姿現しコラテラル・ダメージが派生する。被害は最小限にコントロールするが、インドアアタックから百八十秒で鎮圧しないと第二手段に切り替える必要が出てくる。
テロリストらの隠れ家を爆破するのは最終手段だったとロバートは思った。
爆破すればテロリストらを生きて拘束するのは難しくなる。チーフは司法に渡さず捕虜を取ることを指示していた。親玉を炙り出すつもりだ。少なくとも九人の内三人は生かして捕らえる必要があるとロバートは無線で二十六名に命じた。
建物は長さが六十五ヤード、奥行きが三十二ヤード高さ十五フィートの典型的な箱物の倉庫の様な店舗だった。出入り口とシャッターはあるが窓はなく衛星写真から背後に物置になってる建物の敷地半分の庭があった。
二十六名の内十名が裏手に回り、残り十六名とロバートが表出入り口とシャッターをブリーチングして突入、裏手は出入り口一つありそこから十人がインドアアタックを掛ける。
────ロバート、各出入り口ドア内側、シャッターにトラップ。ロシア製対人地雷MON─50です。
「了解したミュウ」
「全員へ、出入り口及びシャッター内側にBT──MON─50。送れ」
一斉に返信が入りAIが員数をカウントしロバートのヘッドギアのスピーカーで報告した。
ヘッドギアのフェイスガード内側のマルチプル・データ・モニタ隅に映し出されるデジタル表示の減算クロックが突入まで二百秒を切り、二十七名の男女がバトルライフルのボルトを後退さ薬質に覗く薬莢の尾低を確認し、数名はチェストリグに取り付けた鞘とFN─FivesveN入れるホルスターのフラップを開き、数名はバトルグローブを手首に引っ張り指に馴染ませ、数名は爪先や踵を地面に押し付けコンバットブーツ馴染ませた。
それぞれの突入口のデッドボルトや蝶番、シャッターレールにC4を貼り付け終わり、バトルグローブの手首外側の外側のタッチパネルに指先を掛けリモート信管の操作を待ち、トラップ破壊のため数名がフォスター・スラグ弾装填した590Mショックウェーブをミュウの送ってくる壁裏のイメージで壁越しにMON─50対人地雷を狙い定めた。
セシリー・ワイルド──セスは他のものらがトリガーガードに人さし指を載せ事故を回避するが、彼女はトリガーに人さし指を載せ最初の抵抗を感じるまで軽く引いていた。インドアアタックでは最初に屋内に飛び込み、他のものらが確認し呼称する間に必ず二名の敵の額を撃ち抜くのが習慣だった。
他が肩や腰を狙うのを嫌いセスは必ずタップシュートで室内の脅威の胸に一発で動き止め額に二発送り込み処理する。それを戦術担当士官のルナは咎めるがチーフは黙認していた。
それで後から突入する数人の安全が担保されるのだ。文句は言わせないと最初期突入員の役割だとセスは自負して頑なにスタイルを維持していた。
フェイスガードの残秒カウントが十を切り、残り一秒でトラップを撃ち抜く専属がフォスター・スラグ弾を二発連射し壁越しに爆弾を破砕したの同時にドアやシャッター周囲を爆破し、袖壁に待避していたセスは素早くステップ踏み換えドアを蹴り抜いて倒れた扉を中腰で踏みしだき、最初に見えたソファの男が跳び起きてアサルトライフルを振り上げようとするのを胸骨の中央に一発M118LRを撃ち込み心臓破壊してなお額に二発徹甲弾撃ち込んで背後の壁に男が脳髄を撒き散らし時には、セスはすでに他の脅威を氷河の色青白い瞳でイージスのレーダーの如く索敵して後続に大越で告げた。
「S──KIA!」
(:敵、射殺!)
すぐにセスは倉庫から奥の事務所へと突き進み同じ要領で二人殺し二人の腹を撃ち抜き否脅威にし背後の仲間にそれを略語で伝え、さらに隣室へ入り込もうとして肌の浅黒い男が出入り口際の袖壁に拳銃を構えているのが視野の隅に見えセスは膝を床に落とし銃口避け振り向けたバトルライフルで男の腰から腹に掛け三発撃ち込んで、部屋にもう一人いた歳嵩の男へ左手で引き抜いたスローイングナイフを投げ肩に刺すとその歳嵩の男が手にしていたAKー47を床に落とし背後の椅子に座り込んだ。
セスはその顔を確認しフェイスガードのマイクに告げた。
「ナンバー2、指定標的確保」
最重要のターゲットを捕らえながらセスは眉根寄せ鼻筋に皺刻み椅子に座り込んだ歳嵩の男の顎髭を左手指でつかみ引っ張ると髭がごっそりと剥がれセスはさらにマイクに告げた。
「ナンバー1、様子がおかしい。こいつらの抵抗は素人そのものだ。捕らえたターゲットは資料画像に似ているが変装した別人だ。全員ここから退去しろ!」
踵返し他のセキュリティらが壊されたシャッターやドアから走り抜け出て行くのを見つめ全力で駆けるセシリー・ワイルドの背後から急激に広がる火焔と爆風に飛ばされ彼女は車道飛び越し反対の別の建物の壁に激突し肺の空気すべてを絞り出し歩道に落ちた。
座り込んでバトルライフルのバットプレート肩付けしたセスが振り向くとインドアアタック掛けた建物の出入り口だけでなく天井も抜け火焔と煙りがもうもうと夜空に立ち上っていた。そのブリーチングした出入り口から火達磨になった男が一人歩き出てくると燃える建物の傍に倒れ込み焔上げ続けた。
それを見つめ爆薬だけでなくガソリンまで仕掛けていたのかとセスは唸った。
彼女が辺りへ視線向けると飛ばされたのが自分だけでなく数人のセキュリティらが起き上がりかけており無事だった仲間が駆け寄り助け起こしていてそれを見ながらセスは思った。
作戦は見事なほど失敗だ。
雌ゴリラがこれを知ったら激怒するぞとセスは苦笑い浮かべた。
テロリストらは警察の特殊部隊の襲撃を警戒し仕掛け爆弾を仕込んでいたのだろうか?
いや捜査がこんなに早く矛先を向けるとは奴らも思いはしまい。
ならNDCにスパイがいるとまで言わないが、本社そのものが見張られていた可能性がある。
彼女が傍に来た人影に顔を上げるとロバート・バン・ローレンツが右手を差し出しセスに告げた。
「君のお陰でこちらに死者が出なかった」
手を握り返し立ち上がりかけたセシリー・ワイルドがリーダーに告げた。
「本社を見張っている奴がいるぞ」




