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砂の街  作者: oz
4/5

黒い大蛇は、永和を焼き殺そうと黒炎を吐いた。

炎は砂漠を舐めるように焼いていく。

そんな中、永和は舞うように炎をかわしていた。


彼は横目で、黒炎が触れた地面を見る。

砂漠が泥の様に溶け、沸騰していた。


「……これ、熱いどころじゃ済まないじゃん」

永和は、軽口を叩きつつも、確実に大蛇の攻撃を見切っていく。

しばらくして、永和は避けていく中で分かったことが一つあった。


大蛇は、大きな火球を放った後にわずかに隙があるようだった。

そこを狙えば、一気に倒せそうだ。

つまり、火球を撃ってくるまでしばらくは、攻撃を避け続けなくてはならない。

永和は今一度、気合いを入れて走り出した。


大蛇は、大小いくつもの火球を放つ。

しかし、永和に全て避けられてしまっていた。

しびれを切らしたのか、一際巨大な火球を作り上げ始めた。

まさしく、闇の業火を集めたような炎。

周囲の温度が、数度上がったような錯覚がした。

熱波が少し離れた永和の所まで押し寄せる。

これほどの巨大な火球、必ず隙が生じるだろう。

待っていた絶好の機会に、永和は口の端を上げて笑った。


その時、大蛇がすさまじい轟音と共に巨大な火球を放った。

永和は、すぐさま蛇に向かって駆け出す。


黒い火球が迫る中、ぎりぎりの所で身を投げて避けた。

永和は転がる体を制御し、直ぐに体勢を立て直す。

その勢いのまま砂を蹴り、大蛇へ向かって疾走した。


永和は走る最中、剣をしっかりと握り直して大蛇を見上げる。

予想通りに、大蛇は火球を生み出すのに時間がかかっているようだった。

永和は、一気に大蛇の懐に入り込んだ。


素早く鱗の間を狙い、剣を蛇の腹に深く突き刺す。

「はぁっ!」

そのまま、剣を横に薙払うように力を振るう。

剣が硬い肉を切り裂いた瞬間、黒い血が溢れた。

血はすぐに、砂漠に黒い染みを作っていく。

大蛇はのた打ち、甲高い鳴き声をあげた。

永和は、すぐさま剣を抜き、大蛇から距離をとった。

これで少しは動けなくなるだろうと、彼は蛇を見やる。


しかし永和は、瞠目した。

「あれは、ちょっと……」

彼の視線の先。

大蛇は全身を激しい黒炎で包み、激しく暴れだしていた。


大蛇は怒りで我を忘れているようだ。

永和を見ることなく、当たらない支離滅裂な攻撃をしている。

本来ならこの隙に乗じたいところだが、纏う炎で近付くことができない。

「……ヤバイなぁ」

剣に付いた蛇の血を振り落とし、もう一度大蛇を見る。

しばらくして、大蛇は滅茶苦茶な攻撃を止めた。しかし、冷静さを取り戻したその目は憎悪で溢れている。

よく見ると、先ほど斬られた大蛇の体も再生し始めていた。

大概の傷では倒すことは無理そうである。

永和は小さく舌打ちをして、蛇を見た。

数秒間の静けさの中、ついに大蛇が動いた。


大蛇は、己の炎を纏った尾を鞭のよう振るう。

永和は避けるが、炎が徐々に肌を焦がしていく。

一度かなりの距離を蛇からとると、彼は剣を握り直した。

蛇は、また火球を放つ準備を始めた様だ。

「どうしたものか……」

彼は、忌々し気に蛇を睨んだ。


その時、朱螺の方から強い光と冷気が流れてきた。

朱螺の詠唱が完了したようだ。

永和は、彼女がいた場所を横目で見た。



「これで大丈夫だな」



永和は口の端を上げて、蛇とは逆方向へ走り出した。

大蛇は、逃走ともとれる彼の動きを止めるべく、火球を永和に向かって放つ。

しかし、彼を止めることなど出来はしない。


彼は火球を避けながら、少女の様子を伺った。

少女は光を纏っている。

そろそろ、彼女の魔法が発動する頃合いだろう。


巻き添えを食らってはたまらないと、永和はただ遠くに走る。



その時、最強の少女が動き始めた。




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