表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂の街  作者: oz
1/5

見渡す限りの、砂。

そんな黄土色の世界に、白い点が2つ。

それは旅人だった。

小柄な者と、長身の二人組。

小さい人間は判らないが、長身の方は体格からして、男だろう。

彼らは日差し対策に厚手の服を纏い、腰には剣を提げていた。

顔は、目深にフードを被っていて見えない。

二人共、背中には大きな鞄を背負っており、長旅なことが伺えた。


長身の方が、懐から羊皮紙の地図を取り出した。

地図は古く、所々の文字がかすれている。

沢山の町の名前がある中、指で辿る先は、「エフェ」と書かかれていた。


――――エフェ。


砂漠の中の、砂の町。

町の周囲には、砂嵐が絶えることはない。

その特異な環境に、案内人無しには、たどり着けないと言われる町である。


地図を見ていた男は、ため息をつくと、地図を適当に折ってしまいこむ。


そして、立ち止まるとフードをゆっくりと上げた。


その顔は17、8歳の美しい青年だった。

髪は、光の加減で金にも見える茶色。

長さは肩に届かないくらいで、癖なのか少しはねていた。

瞳は、その髪に映える様な明るい空色。

少し垂れ気味の目が、人懐っこい印象を与ていた。


しかし今は、単調な砂漠の景色に飽きたのか、つまらなそうな顔をしている。


彼は、少し先を歩き続ける相棒を眺めた。

朱螺(しゅら)、町はまだかなぁ」

朱螺と呼ばれた、小柄な人物が立ち止まった。

朱螺は、大きな溜め息をついて、自分のフードを乱暴に持ち上げた。


フードからこぼれ落ちた長い髪は、焔の様な緋色。

瞳は、髪よりも深いざくろの様な紅。

その印象的な瞳を、引き立てる様に整った顔立ち。

年齢は16、7歳ぐらいだろうか。

彼女は、美しさを純粋に集めた様な少女だった。


しかし、振り向いた彼女は、明らかに機嫌が麗しくなかった。

麗しいどころか、眉を寄せて彼を睨んでいる。

けれど、その表情は怖いというよりは、むしろ愛らしいとさえいえた。

「………永和(えいわ)、さっさと歩いて」

朱螺は赤い瞳で、後ろを歩く永和をきつく睨んだ。

彼は苦笑いして、彼女の後をゆっくりと追う。


彼女は、背筋をすっと伸ばして歩いてゆく。

それは永和がこの3日間、ずっと見続けた姿だった。

歩調を早めて朱螺に追いついた永和は、その背に話しかけた。

「もう俺、限界を超えてるんですけど……」

「あら、私は大丈夫よ」

彼女は、笑顔で言う。

その笑みは綺麗だが、どこか恐ろしいと彼は毎回思ってある。

「ははっ……」

とりあえず、引きつる笑顔を辛うじて返せたのが幸いだろう。

朱螺は、彼の様子に小さく笑うとさっさと先に歩き始めた。


それにしても。

永和は、腰に手をあてて遠く光る太陽を見た。


実際、彼は歩き通しでかなり疲れていた。

延々と変わらない風景にも、数時間前から飽きている。

つまらない。

ため息をこぼすと、また前を向き朱螺の後を追う。

何もない砂漠。

歩く以外に何もすることもない。

永和は、手持ちぶさたな両手を頭の後ろに回すと、今までの旅を思い出していた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ