謎が謎呼ぶマロンくん
そんなわけで、マロンくんの尾行をすることに決めたあたしだけど、彼の魔法力があたしよりも多いことから、簡単に気づかれる確率が高い。
それでも、お互いの魔力を相殺するように過ごしてきたあたしとルルルンだから、なにげにふたりで話しながらのだらだらとした尾行になった。
「ルルルンや、尾行を恥と思わなくていいからね?」
「いや、そこは恥だと思うよ?」
あっさり言い負かされてしまうほど、あたしとルルルンの仲はとても良好なのだった。
時おりマロンくんの視線を感じたのだけれど、ふたりして知らんぷりを決め込んでいたせいか、特に変わった様子はない。
それでも尾行をつづけていたら、さすがのマロンくんが決意を決めて振り向いた。
「どうしてふたりして尾行するの?」
「楽しいから。楽しいこと優先させてるだけなのよ。おっほほほほほっ」
だがこんなふざけた言い訳をゆるしてくれるマロンくんなはずは――。
「尾行が趣味? だったら聞くけど、どうしてふたりの作品が入れ替わっているの? そこから聞いてもいいとおもうのだけど?」
「あら、やっぱり気づいてたのね? だって、マロンくんだってあたしのルルルンに声を送ったんでしょう? あんまりじゃない」
それに、とあたしはつづける。
「きみの目的を聞かせてもらいたいのよ。マロンくんほどの魔法力があれば、わざわざ学校に来る必要ないのでしょう? それに、作品の交換までわかっておきながら、どうしてルルルンに近づこうとしたのかも教えて欲しいの」
マロンくんは、ふぅと息を吐き出した。
「単刀直入に言うよ。僕はきみたちのうちのどちらかを選ぼうかと思ったんだ。だけど、実際に魔法力があるのはリティシアだけだよね? だから僕はリティシアを選ぶよ。お願いだよ、リティシア。どうか僕と一緒にお城まで来て欲しいんだ。そこで共に働きたいのだ」
……意味がわからないな。どこからどうしてどうなって、城? で働くなんて言葉が出てくるのだろう?
「実は、まだお腹の中にいるお子様の魔法力が多すぎて、王妃様はとても苦しんでいるのだよ。だから、そのお子様が生まれる前に、お子様付きの侍女長を探しておきたかったのだ」
あたしにはさっぱりわかりません。だとしたら、あたしみたいな中途半端なものでなく、その道に長けた侍女さんを長に据えればいいのではなかろうか?
「そう、ふつうはそう思うだろうけど。王妃様は敵が多いのだよ。なにしろ王様は若いうちから玉座についていたからね。しかもかなりの色男ときている。政略結婚だったにもかかわらず、王妃様は王様の寵愛を受けているのだから」
なるほど。それで外部から、と? でも、なんであたしなの? もっと年上の人でもよくないのかな?
つづく