おのれ、イケメンめっ。
イケメン転校生のマロンくんが、さっそくあたしの作品……じゃなかった、ルルルンの作品に目をつけたあげく、よりによってルルルンに話しかけた。
くっそぉ。ルルルンはあたしの大親友なんだぞっ。そのポジションを奪おうなんてゆるせるはずがないっ。
しかも綺麗な顔していても男は男。ケダモノであることに変わりはない。
「あの、マロンくん。この子、あたしの親友なので許可なく話しかけないでくれます?」
言ってからルルルン以外の女子になんてことを言うの、とばかりに睨まれた。いいもん。あたしにはルルルンがいるもん。
「へぇ? きみは?」
「あたし!? あたしはリティシアだけど、なに?」
「するとこっちの個性的な作品がきみのものだってことだね? 素晴らしい才能だよ、リティ」
「なっ!?」
驚いた。イケメンなら、初対面のあたしに省略名称で呼んでもかまわない、とでも思っているのだろうか!?
とにかくも、むかっぱらがたってきた。
「リティシア、です」
「ごめんよ、リティシア。つい、親近感がわいてね」
なんだか知らないけど、また女子に睨まれてるぞ。ちがうんだって。そんなのじゃないんですって。
「リティの作品はいつも個性的なのよ。見せたかったわ。お題が向日葵だった時のこと。あれもう家に持って帰ったのだったかしら?」
「あ〜、うん。そう」
なんだかなぁ。まさか委員長からリティと呼ばれることになるとは。しかも、あの向日葵は、ルルルンにしてはきなり大胆に遊んで刺したものなので、余計に感慨深い。その作品は今、ルルルンの家にあるけど。
委員長、まだ目が怖いよ。
「それより。これはわたしの作品よ」
なんて、委員長をはじめ、女子たちが自分の作品を褒めてもらおうとマロンくんがひっちゃかめっちゃかになっている。ちょっとウケた。
そんなこんなで担任の先生がぽかんとしているけど、あっという間に授業開始のチャイムが鳴った。
そして従順な子羊たちもとい、従順な生徒たちはそれぞれの席に戻る。
「うん、ごほん。え〜。では今日は、増えすぎた魔力を抑える方法について勉強しよう」
そう。ここは魔法学校。故に男の子は少ないけど、みんなそれぞれ楽しく勉強している。
ああ、それにしても眠い。増えすぎた魔力を抑える方法なんてあたりまえのことじゃない。
だって、ねぇ?
おや? ルルルンがいつにも増して真剣な顔で授業を受けている。まさかルルルン、魔力が増えてきたの?
つづく