その家族、不思議なり
お友達のルルルンに手伝ってもらって、課題はようやく片付いた。
「ふぅ〜。出し切ったぜ」
「リティシアはほとんどぼんやりしていただけじゃない。ほぼわたしが作ったんたからね。下手でも感謝してよねっ」
「もちろんだよ、ルルルン。もうあなたに足を向けて寝られないです」
「それは方角的に無理なのでは?」
「あ……」
そうだった。あたしのうちと、ルルルンの家はそんな感じのご近所さん。もうあたし、ルルルンのいない生活なんて考えられない。
「ルルルン、将来あたしと結婚しないかね? なんなら家事育児洗濯掃除のすべてを任せてもいいと思っているのだよ」
「そりゃパワハラというものではないのか? リティシア」
「そうかもしれない」
でもさぁ。このずぼらすぎるあたしが魔術師になれるなんてちっとも思わないわけなのだよ。
そうなると自然と実家の食堂を継ぐしかないわけで。
「もう、リティシアは仕方ないなぁ。そうだ、今度また、食堂の貸切頼んでもいい? お兄ちゃん、また奥さんの子供ができたって、パーティーするから」
「子供、何人目だっけ?」
ルルルンには、十歳年上のお兄さんがいる。それで、子供ができるたびに、うちでパーティーをしてくれるありがたぁ〜い顧客様なのだ。
「五人目。このままだと、村一番の大家族になりそうな予感がする」
そんなわけでお兄さん夫婦共々、実家のお手伝いをして生計を立てているってわけ。ちなみに大工見習い。奥様は経理担当。
「そっかあ。それじゃあまた、貸切の話しておくね。今日は本当にありがとう、ルルルン。もう大好きすぎて本当に結婚しない?」
「あなたとはないわぁ〜。じゃ、またあした学校でね。ばいばい」
「ばいばい」
まったく。ルルルンってば本当に面倒見がいいんだから。
って、あれ? なんか枯木に人影が見えるような?
あわてて目をこすると、影らしきものはどこにもなかった。
「やっぽり見間違いか。お父さん、ルルルンのうちで貸切パーティー予約入ったから」
部屋を出るなり、大声で予約を伝える。この時間から、食堂はにぎやかになるから、あたしも手伝わなくちゃ。
しかし、五人目かぁ。なんだか不思議だなぁ。
つづく