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少しくらいならやれそうかな?

 王妃様の個性的すぎるというか、奇抜すぎるというか、素敵すぎる刺繍を見て、あたしはひっくり返りそうになった。


 なんというか、ルルルンを超えてきてる。


「わたくしがこの程度なのですから、共に語り合いつつ手芸をしてみませんか? 侍女たちはレベルが高すぎるのよ」


 なんとなく、王様が王妃様を愛する気持ちがわかってきた。


「わかりました。あたし、王妃様とお姫様の侍女になります。ルルルンもできるよね?」


 まだ涙目で戸惑っているルルルンだけど。王妃様の作品を見せてもらって引き下がることなんてできないよね?


「はいっ。侍女になります!!」


 よし、ルルルンが乗ってきた。学校卒業後は侍女として働き口ができたぞ!!


 やったね。


 自信なんて最初からあるわけがない。


 だから、やってみないとわからない。


 そんな時もあるよね。あたしたちはどちらかと言うと、いきあたりばったりしかないけど。


 がんばろうね、ルルルン。


 と、言うわけで。いきなり刺繍が始まった。


 魔法で刺すのはルルルンの特技だけど、仕上がりが早いだけで上手とは言いがたい。


 かたや王妃様はひと針ひと針を丁寧に刺しているのに、仕上がりは個性的すぎる。


 かというあたしだって、マロンくん……じゃなくて、シエトロン様に比べるとへたっぴだし。


 この中で一番上手なのはシエトロン王子様だ。


 そもそも刺繍というのも難しい刺し方が多くて戸惑ってしまうのだ。いちいちテキストを開くのもダルいんだよね。


「うっ!!」

「王妃様!?」


 シエトロン王子様の講義を聞いているまさにその時、王妃様がお腹を抱えてうめいた。


「大丈夫よ。少し休もうかしら?」

「そうですね。では、今日はここまでにしておきましょう。ふたりとも、駄賃代わりにお菓子を好きなだけ持って帰るのをゆるす」


 やったぁ!! 王宮のお菓子はとっても美味しいし、はじめて食べたものばかりなんだよね。なんならドレスもうけたまわりますが、なんてですぎたことは言いません。


「ありがとうございます。王妃様、くれぐれもお体お大事になさってください」


 おお〜、ルルルンは正義だ。


「それでは僕が、彼女たちの帰りを見送ってまいります。母上はどうか、体を休めてください」


 ありがとう、という王妃様のやさしい言葉を残して、あたしたちは廊下に出た。


「ところでふたりとも。ここで見聞きしたことや、侍女にしたことはくれぐれも内密にしてほしい。できれば家族にも知らせないでほしいのだが、可能か?」


 秘密とは!! なんかわくわくしてきたなぁ。


     つづく



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