お茶会、そして……
本来ならば、あたしがお茶を注ぐ係りなのだと思うけど、なんといきなり王妃様がポットを持ってしまった。
「あ〜! あたしがやりますので」
「あら? いいのよ、今は。わたくしもこういう作業が好きですもの。ふふっ。リティシアはおやさしいのですね」
妊婦さんだからとか、王妃様だからとかでなく、本当にあたしがやらなければならなかったのに、気がきかないな。
こんな時のルルルンは……っと? なんでこんなに思いつめた顔をしているの?
「す、すみません。わたし、やっぱり無理です!!」
あたしが茶器を受け取っている間に、ルルルンぎ立ち上がってしまった。
「どうしたの? ルルルン」
「だって、わたしはお茶をいれることもできなければ、課題の手芸ですらまともに作ることができないのです。それなのに、お姫様のお世話なんて、とてもじゃないけど怖くてできません。もし、失敗したら、取り返しがつかないんです」
あら? と、王妃様は顔を曇らせる。
ルルルン、本当にそう思ってるのなら、あたしもおなじ考えだよ? だから、ふたり一緒にスカウトされたんじゃないの?
シエトロン様は、そんなルルルンを一度椅子に座らせるなり、でも、と口を開いた。
「僕はふたりを指名したんだ。課題を交換しているとわかった上でね。それは、楽しい遊びのひとつなのだろう? だとしたら侍女という役目を楽しめばいいのではないか?」
「課題と侍女とでは、役割の責任が天地ほどの差があります。課題はバレたら笑われておわりですけど、侍女ではとても責任がとりきれません」
そこでシエトロン様は、少し待っていてくださいと言い置いて、席をたつそして奥の部屋から額を持ってくると、あたしたちに渡した。
こ、これはまた。ルルルンの課題以上に個性的な刺繍だわっ。
「これを刺したのは、母上……王妃様です。ですから、ルルルンとも話が合うのではないかと思ったのだが。かえってプレッシャーを与えてしまったのなら悪いことをした」
ルルルンは、自分が魔法で刺した刺繍を思い出すように、額の中の刺繍の絵を見つめた。
それはもはや、子どものいたずら書きのようにも見えて、芸術家ならよろこびそうなものだった。
「これを、王妃様が?」
「はい。ともに学びませんか? 魔法と手芸とを」
……もしや、この個性的すぎる刺繍のせいで、侍女たちから孤立させられているのではないかと思い始めてきたのだった。
つづく




