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王妃様との対面

 侍女さんがドアを二回ノックした。歩いていた時にも感じたけど、まるで舞踊のようにエレガントな振る舞いに一瞬だけ見惚れる。


「シエトロン様をお連れいたしました」


 わ。この人本当に第一王子様だった!?


「お通しください」


 中から張りつめた感じの女性の声がした。このお声の方が、王妃様なの!?


 うやうやしくドアが開いて、あたしたち三人は室内へと通される。


「失礼いたします」


 おい、シエトロン様。作法はどうすればいいんですかっ!? お〜い!!


 どことなく不安な気持ちを感じて、頭を下げたまま入室する。うぬ、自分の足元しか見えてないのに緊張する。


「頭を上げてください」


 先程の女性、おそらく絶対に王妃様のものと思われる声に促されて顔を上げると、想像していたよりもずっとお若い王妃様が微笑んでいらっしゃる。


 しかも、後光がさしていらっしゃいます。


「よくいらっしゃいました、シエトロン第一王子。そちらがあたらしい侍女として遣わされた方ですか?」

「はっ。王妃様はお元気であられますでしょうか? リティシアとルルルンです。ふたりとも気兼ねなく話をしてくださいますし、魔力もそこそこ。人望的にも人により差別することもなく、公平にものを見れるという逸材にございます」


 逸材!? あたしが? ルルルンもおなじく? こりゃまた、大きく言われてしまったぞ。


「そうですか。ありがとうございます。わたくしはともかくとして、お腹の中の赤ちゃんは、それはそれは暴れん坊ですから。あと数日で産まれるのですよ」


 うっふふっと微笑む王妃様はとてもお美しくて。まるでエルフみたいだわ。エルフに会ったことないけど。


 しかし、あと数日で産まれるのかぁ? まさか、お産婆さんとかはさせないと思うけど、急にプレッシャーを感じて胃が痛くなってきてる。


「わたくしにとってははじめての姫君なのです。今からとても楽しみにしております。ああ、堅苦しいのはなしにしてくださいな。わたくしはただ、生まれてくる姫君とわたくしの話し相手が欲しいだけなのです。姫君のお世話は、乳母がするのですよ」


 話し声まで優しげな王妃様。その雰囲気に飲まれていると、椅子に座るよう勧められる。


 そして、目の前に綺麗なお菓子とお洒落っぽいポットがある。これはもしかして、いきなりのお茶会なのかな?


     つづく



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