表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星に願いを、異世界に拳を  作者: シンゲン
34/44

憧れ

当時の俺は、イルミナの聖光騎士団に所属していた。自分で言うのもなんだが、真っ直ぐな気性でな。国を……民を護りたいとその一心だった。


騎士団はイルミナの各地に部隊を派遣し、駐留させているんだが……ある時、俺が所属する部隊に緊急の報が入った。近くの町が賊に襲われた、とのことだった。たまたまその町に向かっていた行商人が異変に気付き、急いで引き返して事態を伝えたらしい。その商人が言うには、町の警備隊だけではとても長くは耐えられないだろうと。


とにかく一刻を争う状況だった。即刻部隊を編成してすぐにでも出立しなければならない。……その筈だった。


図体がでかくなると、動き出しが遅くなるのはどこでも同じだろう。誰それへ許可を、どこそこへ通達を、武器の使用は承認が……うんざりしたな、あの時は。一人でも飛び出そうかと思ったほどだが、それで何ができるわけでもない。騎士団と言う組織の恩恵がなければ、俺には何もできなかった。


ようやく騎士団が動けるようになった頃には、報が入ってから半日は経っていた。これでも……早い方だったのかもしれないがな。辺りはすっかり暗くなり、夜闇の中を隊列を崩さず町へ向かった。足元も見えづらく、急ぎはするが速度は出せない。俺は気が気でなかった。


結局事が起こってから騎士団が町につくまでに、ほぼ丸一日かかってしまった。間に合ってくれとは思いつつも、胸中は絶望と無力感でいっぱいだった。


そしてようやく見えた町からは大きな煙が上がり、炎の明かりが照らしていた。外壁は無残に壊されていたよ。頭に血が昇るのを感じたが、それでも突撃しないよう必死に抑えたよ。


団員は各自戦闘態勢に入り、いよいよ戦場へと乗り込んだ。


……だが、何か様子がおかしい。異様に静かだったんだ。街の周辺には既に死体が山ほど転がっていたが、その大半はどう見ても賊の連中だ。叩き潰されたような、そんな有様だった。


特に戦闘もなく町に入ると……、町の中央部、大きな焚き火を囲んでいる町の人達がいた。何があったのかと困惑していると、一人の男が部隊長に近づいてきた。


大柄で、女性を1人付き従え、そして、巨大な戦鎚を担いでいた。何を言うのかと部隊長は身構えていたが、彼はあっけらかんと言い放った。


「全部片付けたが、勢い余って外の壁を壊しちまった。直しといてくれ。そんだけだ。行くぞ、シノ」


それだけ言って彼は町を後にした。


後に分かったことだが、別箇で冒険者ギルドも動いていたらしい。ギルドからの依頼という形で、動けるものを送り出したようだった。……とは言え、その内容は賊の壊滅と言うより、騎士団が事態を解決するまで出来るだけ被害を抑えろ、といったものだったらしいが。


その後、町の人や残っていた他の冒険者に話を聞いてみれば、賊は戦鎚の彼が殆ど一人でなぎ倒したのだと言う。


話を聞くほど、その全てが俺の理解の外だった。勿論規格外の人間の存在は、知識として知ってはいた。なんなら聖光騎士団の団長もその類だと言う話だしな。


だがその人間が起こしたであろう事象を実際に目の当たりにして……俺は……圧倒的なまでの自由を感じた。それに酷くおののき……そして同時に、憧れたんだ。俺も、その自由を手にしたいと願った。


騎士団にも騎士団の役割はある。けして否定するわけじゃない。だが……騎士団ではあの人の背中は追えない。俺はすぐに騎士団を退団し、冒険者ギルドへ足を運んだ……。


〜〜〜


「……と、言うわけだ」


「なるほどなぁ……」


ミルドラルの無茶苦茶具合には何度でも驚かされる思いだが、確かにやっている事はヒーローじみている。マコトとしても尊敬できる所ではあるし、憧れるというのも理解できる話だ。


(まぁ、俺の場合は勘違いの一撃から始まってるからなぁ……)


出会い方が違えば、マコトもバルドのようにミルドラルに憧れていたかもしれないが、今のところヒーローというより細かいことを気にしない豪快おじさんという印象が強い。


さておき、バルドの性根の部分が垣間見えるような話だった。人を助ける為に戦いに身を投じるというのは、生半可な覚悟でできることではないだろう。要するに……良い人なんだな、とマコトは思った。


「ありがとう、良い話が聞けた。それに……人の為に行動できる、そんなバルドを先輩として頼って良かった」


「バカ、むず痒くなる事を言うな。……少し話しすぎた。あまり慣れてないからな、こういうのは……」


そう言いつつも、バルドの口元には少しばかりの笑みが浮かんでいる。夕焼けに照らされながら静かになった平原を歩き、一行は町へ帰っていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ