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ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ  作者: 髙橋彼方
第三章『リヴァイアサンの魚介醤油ラーメン』
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『リヴァイアサンの魚介豚骨ラーメン』9

 リプイは目を大きく開いてヤーハンを見つめる。


 そんな施設があるなんて知らなかった……。


 ヤーハンは店内の奥にある本棚の方へ歩き始める。


「このポータルを使うのは何年振りだろうか……」


 本棚の年季が入った青い一冊の本に手を掛ける。


『ガチャ!』


 本を手前に引くと、本棚が横にスライドして秘密の通路が現れた。

 そして、真っ暗な通路にヤーハンが入ると壁につけられたランプが一斉に点灯する。


「こんな仕掛けがあったのかよ!

 スゲェー!」


 シュリルは目をキラキラさせて感動すると通路に駆け込む。

 通路にリプイと龍拓も入り、前を歩く二人に着いて行くと壁には白い奇妙な文字で様々な呪文が描かれていた。


「この壁に描かれている呪文……。

 古代魔族語(アティック・シェド)よね」

「流石、リプイちゃんじゃな。

 実はワシが居た勇者のパーティーには一人魔族も加わっていたんだ」


 あまりの衝撃にリプイは思わず目を丸くする。


「魔族が居たですって!?

 でも、魔王以外の魔族はとっくの昔に居なくなったんじゃ……」

「そんな事はないぞ。

 魔王の愚行に嫌気がさしていた者たちは、国を抜け出して人が住む村などでひっそりと暮らしていたんじゃ」


 リプイはヤーハンの話を信じられずに仰天した。


「村が魔族を受け入れるなんて信じられない! 

 戦争で最後の足掻きに遺伝子改造で造ったS級モンスターを解き放ったことによって、一体何人が犠牲になったか……」


 ヤーハンはリプイの発言を聞くと、悲しそうに少し俯く。


「都合の悪い多くの真実は権力によって、いつの時代も揉み消されてしまうもんなんじゃよ。

 魔族の皆が悪者なんてことはない。

 ちゃんと人間の味方をする優しい奴らだって大勢居たのさ。

 それに、S級モンスターは人間と魔族が共同で造ったものなんだ」


 すると、日頃から陽気なシュリルがあまりのショックで思わず立ち止まる。


「一体、それは何のためにだ……」


 俯くシュリルにヤーハンは口籠る。


「戦争のためじゃよ。

 魔族という共通の敵を見つけるまでは、人類は四つの国で覇権をかけて戦っていた。

 そして、魔族が人間界を支配するために現れ、各国の王に魔王は遺伝子改造の方法を教えた。

 王たちはその技術を使って各国を倒すためのS級モンスターを造ったんじゃ」


 目を見開くとシュリルは怒りで拳を握る。


「遺伝子何ちゃらみたいな難しい話は分からない。

 だけど、これだけは分かった。

 俺たちが民を守るために必死で戦っていたヤツらは、俺たちの王が作り出したって事だよな……」


 その時、リプイは頭の中に一つの大きな疑問が浮かんだ。


「でも待って! 

 なんで魔王は各王に技術を教えたの?」

「それは、魔王が食すモンスターを人間に造らせるためじゃよ。

 魔王は勇者たちと同じく(・・・・・・・・)食したモンスターの力が強ければ強い程パワーをアップさせられるんじゃ。

 リプイちゃんたちが出る大会には各国の色んな思惑も交錯(こうさく)している。

 だから、ワシが教えられる技術は全部伝えておきたい」


 ヤーハンが先導して通路を更に進むと、大きな魔導陣が描かれた行き止まりに着いた。


「ここから飛ぶぞ。

 三人ともワシの肩を掴んでくれ!」


 それを聞いたリプイたちはヤーハンの肩を掴む。

 ヤーハンは魔導陣に向かって両手を突き出すと呪文を唱えた。


「ラトゥース!」


 すると、魔導陣は激しく発光して四人を吸い込んだ。



 木々が生い茂る澄んだ空気。

 そして、風によって心地よい葉音が包む森へ四人はワープしていた。

 龍拓が足元を見ると、先程見た魔導陣が描かれている。


「此処は?」


 シュリルが質問するとヤーハンが三人の無事を確認する。


「さっき話した裏山だ。

 頂上に施設がある」


 辺りを見回しているリプイは山の景色に驚いていた。


「これが裏山?

 私たちが知ってる裏山は採掘と伐採で禿山になっていた筈なのに……」

「外から見るとそう見える筈じゃ。

 元々禿山だったのをワシらで蘇らせたんだけど、そうと知ればまた伐採されてしまう。

 それに、此処には亡命してきた魔族も居る。

 見つかれば殺されてしまうだろう。

 だから、禿山に見えるよう仲間が山全体に魔法をかけたんじゃ」


 リプイはその説明でハッとする。


「山全体に魔法をかけるなんてことが出来る魔法使い……。

 もしかして、パーティーに居た魔族は!?」


 ヤーハンは笑みを浮かべると、山を歩き出す。


「三人とも着いてきてくれ」


 山道をスタスタと歩くヤーハンに遅れないよう三人は着いて行った。




× × ×




 険しい山道をしばらく進むと山小屋がいくつも現れた。


「此処で本当に住んでるんだ」

 

 リプイが山道を見上げると、頂上付近に霧がかかった邸宅が薄っすら見える。


「よし、もう少しだ。あっ!」


 息が抜けるような声を挙げるとヤーハンは腰を抑えて蹲る。


「大丈夫!?」


 急いでリプイたちはヤーハンに駆け寄る。


「すまんな。ちと張り切りすぎた」

「もう。無理しないでよ」


 リプイは内ポケットから杖を取り出すと呪文を唱える。


「レセゲット!」


 すると、杖は黄色に発光して痛みから顔を歪めていたヤーハンの表情が和らいでいく。


「今は薬草を持ってきてないからひとまず痛み止めをしたわ。

 シュリル、ヤーハンをおんぶしてくれる?」

「ああ! 任せろ!」


 シュリルが屈むと、龍拓がヤーハンの体を持ち上げると背中に乗せる。


「ありがとう」

「気にするな! 

 で、目的の場所はどれなんだ?」


 リプイは霧がかかった邸宅を指差す。


「あれだよね」

「ああ、そうじゃ」


 龍拓とシュリルは目的地が分かると笑みを浮かべた。


「あそこなら直ぐに着きそうだな」

「よおーし! どんなヤツが居るのか楽しみだぜ」



To Be Continued…

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