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ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ  作者: 髙橋彼方
第三章『リヴァイアサンの魚介醤油ラーメン』
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『リヴァイアサンの魚介醤油ラーメン』2

 テーブルの前で龍拓は息を整えていると、包丁の色が元の青色にゆっくりと戻っていく。

 すると、オレンジ色のオーラが緑色へ変わり、龍拓の方へ向かって飛んでくる。


「うっ!」


 龍拓が身構えると、体に緑色のオーラが入っていった。


 疲労感が治っていく……。

 この光は一体?


 すっかり、体が元通りになると龍拓は包丁をじっと見つめた。


 後でリプイに話を聞くまで絶対触らない様にしよう。


 龍拓はテーブルの上の肉に視点を移すと食器棚からボウルを三つ取り出す。


 とりあえず、作業に戻るか。


 解体した特殊個体のギウマニールを部位ごとに黙々とボウルへ分けていく。


 お、これは立派な横隔膜(ハラミ)だ!

 それに、(ガツ)や小腸も立派だ!

 こりゃホルモンを使ってラーメンを作るのもありだな!

 それに、他の部位も油が乗っていて普通のギウマニールよりも旨みが詰まってそうだ!

 背脂もこんなに集まった!


 ボウルには山盛りの背脂が盛られている。


「前回は豚骨ラーメンだったしな……。

 よし、今日はホルモンラーメンを作ってみるか!」


 そう言うと蛇口の流水でホルモンをよく洗い始める。

 次に丁寧に洗ったホルモンを塩揉みして、魔術鍋に水を入れる。


「前回は加減を知らなくて燃え上がったからな。

 力を抑えて……」


 龍拓は備え付けのタヌーに向かって手をかざす。


「ラロット!」


 呪文と共に火がついて、火力が中火程度で安定する。


 「よし、出来たぞ!」


 蓋を閉めて設定を行うと魔術鍋の水はあっという間に沸騰した。

 そして、下処理したホルモンを次々と沸騰した湯の中へ入れ、生姜と酒を加えて蓋をした。


 このくらいかな。


 龍拓は目盛りを設定すると、再びテーブルへ向かった。


「煮てる間にまずはタレ作りだ!」


 ガラスの小さなボウルに濃口醤油、薄口醤油、みりん、酒、水、昆布だし、塩を加えて混ぜ合わせるとスプーンで味見をする。


「うん! いい味だ。

 あとは、スープと香味油だな」


 アイテムボックスから龍拓は鍋を取り出すと、中には綺麗なスープが既に入っていた。


 夜中に仕込んでおいた鶏がらスープだ。

 ホルモンが出来上がったらこれを温める。


 龍拓は鍋をテーブルに置いて皿にチューブのニンニクとホルモンの油を入れ、鶏がらスープの表面に浮いている油を丁寧に御玉で掬って皿に入れる。


「これをフライパン五分煮る」


 空いているタヌーにフライパンを置き、呪文で火をつけて弱火にする。

 そして、温まったフライパンに皿の合わせ油を移して煮た。



 寝室でいびきをかきながら寝ていたシュリルの鼻にギウマニールとニンニクの食欲を誘う旨そうな匂いが台所から届く。


『クンクンクンクン』


 鼻をヒクヒクと動かしてシュリルは起き上がると、意思とは関係なく自然と台所へ向かって行った。



 龍拓が黙々と仕込みの作業をしているとドタドタと明日が聞こえて振り返る。

 すると、目を見開いたシュリルが立っていた。


「ど、どうかしたか?」


 龍拓が尋ねるとシュリルは満面の笑みを浮かべる。


「床がちゃんと見えるぞ!

 龍拓が片付けをしてくれたんだな!」


 台所の綺麗さに感動したあまりシュリルは手を差し出して無理やり龍拓と握手をする。


「ありがとう! 

 この部屋暫く使えなくて困ってたんだよ! 

 リプイは俺が物を触ると壊れるから止めてって怒るからさ!」

「そうなのか。

 喜んでもらえて何よりだ。

 あと、そろそろ作業に戻りたいから手を離してほしいな」

「ああ、すまんな」


 シュリルが手を離すと龍拓は作業に直ぐ戻る。


「一体、何を作ってるんだ?」

「特殊個体ギウマニールのホルモンラーメンだ」

「おお! 旨そうだな!

 後どのくらいで出来るんだ? 俺腹減っちまって……」


 自身の腹をシュリルは軽くさする。


『グルルルルルルル』


 腹のまるで狼の威嚇の様なイカつい音が台所に響く。


「もう少し待ってくれ!

 あと二十分程すればホルモンの方が出来上がる」

「二十分だな! 

 実は俺、内臓系が大好物なんだ!

 だから匂いに釣られて起きちまった。

 あ~ぁ。この匂い、待ち切れないぜ!」


 シュリルはテーブルの下にある椅子を引くと、まるで子供のように端をパタパタとさせながらラーメンの完成を待ち始める。




× × ×




「腹減ったぁ~!」


 シュリルは顔を机に伏せながら、空腹のあまり涎を垂らしていた。


「龍拓、まだなのか?」

「あともう少し待ってくれ」


 そう言うと、龍拓は空いているタヌーに新たな水がたっぷり入った鍋を置く。


「ラロット!」


 呪文を唱えると、火を中火に調節して水を沸かし始める。


『ピピピピピィ!』


 魔術鍋から音が鳴り、シュリルは目を見開く。


「出来たのか!?」


 すかさず魔術鍋の蓋を開け、中の状況を確認する。


「よし、完璧だ!」


 魔術鍋から出る豚油の芳醇な香りは二人の食欲を掻き立てた。


「うわぁ! なんて香りだ!

 早く食いてぇ!」


 カタカタと音が聞こえて龍拓が振り向くと、シュリルが食欲から小刻みに震えていた。


「もう直ぐの辛抱だ! 耐えてくれ」


 龍拓は素早く沸騰した鍋の湯で麺を茹でると、どんぶりにタレとスープを注いでいく。


『チャッチャッチャッチャッ……』


 そして、網を使って見事な湯切りをすると麺を盛り付け、その上にホルモンを麺が見えなくなるまで乗せていく。


「これで仕上げだ!」


 更に盛り付けたどんぶりの上へ熱々に熱した香味油をかける。


『ジュワァ!』


 その瞬間、台所全体に鼻を突き抜ける濃厚な香りが突き抜ける。

 待ち切れずにジタバタするシュリルの前に龍拓がどんぶりを持って行く。


「特殊個体ギウマニールのホルモンラーメン、一丁上がり!」


 シュリルはどんぶりいっぱいに盛られたカロリーの塊に目をキラキラとさせる。


「いただきます!」


 フォークで巻きとるように麺を取ると、口を大きく開けてかぶり付く。


「んっ!!!!!!」


 口に含んだ瞬間、特殊個体が普通のギウマニールでは味わえない下にまとわりつく様なコッテリとした旨みが爆発する!

 あまりの衝撃からシュリルは眼をパキパキに見開くと、全身の筋肉が脈打ちだした。


『パァァァァァァァァァァァァン!』


 大きな破裂音と共にシュリルの体から蒸気が噴き出すと、龍拓の視界は真っ白に覆われた。

 堪らず龍拓は自身の目を腕で覆った。



To Be Continued…

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