異次元の観測
ここは宇宙。
私は宇宙を彷徨っていた
誰も知らない
宇宙のどこかを。
もう、お腹がすくことも、楽しいこともなくなった。
ただ一つ願望があるとすれば、この何もない時間を終わりにしたい。ただそれだけだ。
目の前に広がるのは漆黒ただそればかり。
ぼうっと空間に身を任せていると、目の前に光が差し込んでいることが分かった
ひさしぶりの刺激に体が喜んでいることを実感する
数十年ぶりか数百年ぶりかあるいは数日ぶりか。定かではないが、この光が私の退屈を埋めてくれることは考えるまでもなかった。
私は流れに身を任せ光の方向へと向かった。
気が付くと私は光の根源に到着していた。
そこは、最初にみた映像とは大きく異なるものだった。
緑、緑、緑
見渡す限り、そこは緑で埋め尽くされていた。
きれいだ。
久しぶりの感情だった。
心が浄化される感覚、これは初めての感情だった。
あぁ、ここへ来てよかった。
数千年、数億年、どれだけの時間宇宙を彷徨っていたのかはもう覚えていなかった
私の感覚のすべてがこの地を感じていた。
どれだけの時間がたっただろうか。
私は瞬間を楽しんでいた。
時間を、空間を、緑を楽しんでいた
しかし、その時間は長くは続かなかった
その地には、物体が存在していた。
私のように、考え、動き、生きる物体。
いつしか、その物体は知識をつけ、進化し、悪に染まった。
私の地を破壊し始めたのだ。
私の好きな緑を、時間を、空間を。
なぜだ。どうして。なんのために。
私は存在するだけで幸福を得ることができた。消費をせず、生産もせず。
しかしその物体はそれだけでは、足りなかったようだ。消費し、生産し、それでも、足りぬ足りぬと私の地を汚すのをやめることがなかった。
緑を消し、異色の物体を生成し続けた。
その物体に私は、緑を見た時と真逆の感情を抱いた。
だめだ、このままでは。
そんなことを思考している間にも緑は消費される
私が私ではなくなる。
かわりに、物体が生産される
私は決めた。
かつての感情を取り戻すため。
この地に緑を取り戻すため。
人間を消す。