表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/22

あの日が浮かんで消える


 まばゆい光で、視界が奪われる。

 早く、ディル様を止めなくてはいけないのに、と慌てて伸ばした手が温かい手に掴まれる。


「ルシェ……」


 そっと、引き寄せられた触れたのは、ディル様の頬なのだろう。

 そこは、涙に濡れていた。


「ごめん……」

「ディル様?」

「あんな風に泣かせたかったわけじゃないんだ」

「それはいったい」


 光が消えても、まだ視界はハッキリ見えない。

 だから、手の平に感じている温かい肌と、冷たい雫だけが、ハッキリと感じられる。


「――――あんな風に冷たい雨の中でいつまでも泣いていたら、風邪を引いてしまう」

「え……」


 雨の日に泣いたなんて、たった一回しかない。

 そして、その涙をディル様が見ることなんて出来るはずがない。

 だって、あの時もうディル様は、どこにもいなかったのだから。


 それなのに、あの瞬間を見てきたみたいに聞こえる。


(ううん、もしかしたら本当に……)


 私たちに起きた不思議な出来事から考えれば、あの場面をディル様が見たとしても、なにひとつおかしくないように思えてくる。


「あんなに泣かせるなら、意地なんて張らないで、最期までそばにいてもらえばよかった」

「……ずっと、ディル様のそばにいたいです。これからも」

「うん。まっすぐに気持ちを伝えてくれるルシェに、あんなにも救われていたのに、きっと信じ切ることが出来なかったんだ。……君の気持ちを」

「好きです。ずっと大好きです」

「うん。俺こそ、ルシェのことを愛している。だからずっと……」


 視界が戻ってくる。目の前にいるディル様の美しい森の影絵みたいなコバルトブルーの瞳からは、今も涙がこぼれ落ちている。

 大好きなディル様は、その涙すら愛しい。


 私の胸に戻ってきた呪いうごめいている。

 ディル様の心臓には、もう何も絡みついていない。

 そして、私には確かに光魔法が戻ってきている。


 元通りになったのだ、とホッとすると同時に、辛そうなディル様に胸が締め付けられる。

 図らずも思い通りになって、ディル様を巻き込まずに済んだはずなのに、どうしてこんなにも辛いのだろう。

 ディル様が、本当に私のことを思ってくれているのだと、今さらながらに思い知らされるようだ。


「――――ごめんなさい。泣かないでください」

「……」

「ディル様、私から離れていかないで」

「もう離れられるはずなんて、ない。それに、君のことをあんな風に泣かせたくもない」


 今まで、どんなに強く抱きしめてくれても遠慮があったんだって、今さらながらに思い知らされる。

 それほどまでに、私たちの距離は近い。唇が何度も触れあっては離れていく。


「こんなにも、そばにいて欲しい人は、ルシェだけなんだ」

「私も、ディル様だけです」

「そう。じゃあ、俺に全部ちょうだい」

「……はい。私も、ディル様の全てが欲しいです」


 その夜、どちらともなく寄り添った私たちは、本当の夫婦になったのだった。



 

最後までご覧いただきありがとうございます。『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ