ぬいぐるみたちと、ハロウィンパーティー
「さあみんな、今日はハロウィンよ。私特製のこの衣装に着替えてみて」
私はそう言って、ぬいぐるみたちの前に衣装を広げて見せた。
「スゴー!これ全部ママンが作ったの?さすがママン♡」
と、うさぎのぬいぐるみのうさろんは、衣装を広げて褒めてくれる。
「最近ママさんがダダダダ(ミシンのこと)してたのは、これを作っていたのですね」
と、ヘビのぬいぐるみのスネービーが言う。
「洋服か…我輩は洋服はきゅうくつで苦手だにゃん」
と、茶トラ猫のちゃとにゃんが、衣装を綿のお手てでツンツンしながら言う。
「ところでママ、『ハロウィン』ってなんでしゅか?」
と、くまのぬいぐるみのくまくまが聴いてきた。
「う~ん、みんなで仮装してワイワイしたり、子供たちは『トリック・オア・トリート』って言ったら、お菓子もらえたりするパーティーみたいな感じかな?まあ本当は、収穫のお祝い?とか、先祖の霊をお迎えするとともに悪霊を追い払うお祭り?らしいけどね」
と、私が言うと。
「何ですか、その雑な情報は。ほんとあなたはてきとーですね」
と、柴犬のぬいぐるみの柴田さんが、腕を組みながらえらそうに言った。
「まーまー何でもいいから、はい、柴田さんの衣装はこれね」
私が柴田さんに衣装を手渡すと。
「…僕の衣装ですか?」
「そーよー、柴田さんに似合うかなーって、柴田さんのことを想って作った衣装だよ。だから着てみて♡」
と、私がそう言うと。
「僕のことを想って…べっ、別に嬉しくなんてないですが、せっかく作って下さったものですから着てあげますよ!」
そう言って柴田さんは、ふいっと私に背を向けると、ちぎれそうなくらい尻尾をぱたぱたとさせていた。
ぬいぐるみたちに衣装を渡し。
「じゃあ、その衣装に着替えてね。私、後ろ向いてるから」
「「「「「はーい!」」」」」
ぬいぐるみたちが元気な返事をすると、私はぬいぐるみたちに背を向けた。
すると。
「なにこれ!チョーかわいいんですけど~!」
「我輩より、もっさもさな洋服だにゃー!」
「ボクの衣装は、よく絵本に出てくるキャラでしゅね」
「カッコ良すぎて、な、なんだか、私には不釣り合いな衣装…」
「ちょっ!?何ですかこの衣装はーーー!!!」
後ろから、そんなぬいぐるみたちの声が聴こえてきた。
「みんな着替えた?見せて~」
そう言いながら、私はぬいぐるみたちの方に振り向いた。そして。
「わあぁ…みんなチョーかわいいっ!似合ってる!」
くまのぬいぐるみのくまくまには、魔法の杖を持った、魔法使いの衣装を。黒いローブのフードからぴょこんと飛び出てるまあるいお耳がかわいい。
うさぎのぬいぐるみのうさろんには、妖精の衣装を。ふるふるとゆれる透明の羽が、うさろんによく似合っている。
ヘビのぬいぐるみのスネービーには、吸血鬼の衣装を。艶々の赤い裏地に、表が漆黒色のマントが、しろへびのスネービーの白さを際立たせていて、普段のやさしい雰囲気から、カッコいい雰囲気になっている。
茶トラ猫のぬいぐるみのちゃとにゃんには、狼男の衣装を。狼をイメージした、灰色のもっさもさの衣装…というか、着ぐるみは、怖いと言うよりかわいい感じになってる。
そして、柴犬のぬいぐるみの柴田さんには、かぼちゃの衣装を。体が、かぼちゃのおばけの顔になっていて、頭には、かぼちゃのヘタの帽子。
「ちょっと!僕の衣装だけおかしいというか、笑いをとりに行こうとしてません!?てか、ちゃとにゃんさんの衣装って、狼男ですよね?狼ってたしか、犬の仲間なんでしょ?だったら、犬の僕が狼の衣装を着るべきではないでしょうか?」
と、柴田さんが抗議する。
「えー?なんで?柴田さんの衣装が一番の力作なのに~。それに、すごくかわいいよ」
と、私が言うと。
「…本当ですか?」
と、柴田さんは私のことをじっと見る。
「うん!ほんと、かわいい。めっちゃウケる…じゃない、めっちゃかわいいよ!」
ぷふっと、私が小さく笑いながら言うと。
「めっちゃウケるってなんですか!?てか、今笑いましたね!!!」
と、柴田さんは怒鳴って、ぷんすこ怒る。
「でも、ほんとにかわいいよ!柴田さんも、くまくまも、うさろんも、ちゃとにゃんも、スネービーも。みんなみーんな、かわいい私の愛するぬいぐるみだよ!」
私はそう言って、ぬいぐるみたちを抱き上げると。
「大好き~の、もふもふぎゅっぎゅっ!」
ぬいぐるみたちをぎゅううっと、抱きしめた。ふわふわでやわわかい、綿の体。気持ちよくて、癒される。
私が抱きしめると、ぬいぐるみたちはきゃっきゃと嬉しそうにはしゃいだ。
ハッピーハロウィーーンでしゅ!☆彡