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第8話 仲間

「うぇーい! あかりんおはよー!」


「うぇーい! ななちんおっはよー!」


 永吉さんが登校してくると、友人の片桐 奈々(かたぎり なな)さんが片手を上げながら挨拶をする。


 片桐さんはツインテールの女の子で、身長が低く、一部紫色のメッシュを入れているギャル系の女の子だ。


 永吉さんの親友で、よく行動を一緒にしているのを見る。


「あかりん。 昨日のドラマ見た?」


「見た見た! やばいよねあの展開!」


「それな! うち、まったく予想してなかったもん! まじやべーよなあれ!」


 永吉さんと片桐さんは隣でドラマの話を始める。 いいな……俺も混ざりたい。


 リアルタイムで見て、まだ誰とも語れてないから語りたいんだよな。


「高山君もあのドラマ見てるんだって」


「まじ!? 高山も見てんの!? なら、うちらとかたろーや!!」


「お、おう!!」


 俺が羨ましがっていると、永吉さんが俺を会話の輪に入れてくれた。


 片桐さんと話すのはこれが初めてだけど、上手い具合に永吉さんが場を回してくれている。


 だから、俺たちは気兼ねなくドラマについて語ることができた。


「いや〜うちのクラスにここまで話が合う奴いるとは思わなかったわ」


 片桐さんは俺の机にお尻を載せながらケラケラ笑う。 いつも咥えているトレンドマークのキャンディを噛み砕き、上機嫌で鼻歌を歌っていた。


「俺も片桐さんとこんなに語れるとは思っていなかったよ」


「それなー! うちも高山とここまで話が合うとは思ってなかったわー!」


 片桐さんは制服のポケットからキャンディを取り出して食べ始める。 表情はニコニコだった。


「しかも、主題歌歌ってる歌手まで推してるなんて、まじあんた最高だよ」


「それはこっちのセリフだよ。 まさかあの歌手を好きな奴が同じクラスにいるとは思わなかったわ」


 ドラマの主題歌を歌うまでは、あんまり人気がなかった歌手を最初から追っているのはこの学校では俺ぐらいだと思っていたけど、まさか片桐さんが俺の仲間だったとは……。


「俺、この歌手の初ライブ行ったよ」


「まじ!? うち用事があって行けなかったんだよね! ちょっと詳しい話聞かせてよ!」


「いいぜ。 俺も語る相手がいなかったから、語れるならすげぇ嬉しい!」


「なら、今日の放課後語り合おうや! 場所は高山ん家でいい?」


「別に問題ないけどよ、なんで俺の家なんだ?」


 男の家に1人で来るのってけっこう勇気いるだろ。


「だって、高山ならグッズやライブDVDとかも持ってそうだし、語るには最高の環境でしょ!」


「まぁ、グッズとかはけっこう持ってるけどよ」


「なら、決定ぃ! 高山ん家で語るべ!」


 片桐さんは白い歯を見せながらニシシッと悪戯っぽく笑う。 その笑顔を見ていると、邪な心や後ろめたさなどは吹っ飛んだ。


「じゃあ、放課後になったら俺の家行くか」


「おう。 逃げんなよ」


「逃げねーよ!」


 俺と片桐さんは顔を合わせて笑う。 放課後が楽しみになってきたな。


「……ちょっ、ちょっと待った待った!!」


「ん? どしたんあかりん?」


「どしたん?じゃないよ! なんで私を置いて話を進めるの!? しかも、ななちん高山君の家に行くの!? そして、なに高山君も普通に承諾してんの!?」


 永吉さんが慌てた様子で捲し立てる。 その様子を見ていると、やっぱりこの状況は珍しいんだなと再確認することができた。


「別に語るだけなんだから、邪なことなんてしないって。 な、高山」


「おう」


 俺にそういう度胸はないし、好きな人がいるんだから片桐さんに邪なことなんてしないよ。


 ま、好きな人である永吉さんに言うことはできないんだけどね。


「で、でも男の子の家に女の子が1人で行くんだよ!? もしもがあったらどうすんのよ!」


 確かに永吉さんの言う通りだ。


「なら、あかりんも高山の家行くべ! そしたらうち1人じゃないし、危険度は下がるしょ!」


「え"っ!?」


 片桐さんの言葉を聞いて、永吉さんの動きは止まる。


 片桐さんナイスぅ! 確かにそういう理由があるなら、永吉さんが家に来てもおかしくない。


 いいぞ、もっとやれ! 


 そして、好きな人を正当な理由で俺の家に誘えるようにサポートしてくれ!


「で、でも私その歌手のこと詳しくないし……」


「詳しくないなら、詳しくなれるようにうちらがするし! な、高山!」


「嫌にならない程度にしっかり布教すんぜ」


 だから、永吉さん俺の家に来てくれ!!


「な、ならお邪魔しよっかな……」


 よっしゃあぁぁぁぁ!!


「やったぜぇぃ! 高山! これでファンが1人増えるかもしれないなぁ!」


「やったぜぇい!」


 片桐さんの思いと俺の思いは違うけど、結果オーライだ!


「なら、放課後になったら俺のところに来てくれる? 案内するから」


「りょ」


「分かったよ」


 俺たちが話し合っていると、チャイムが鳴り響く。


 少しするとゴリドラが教室に入ってきたので、片桐さんはそそくさと自分の席へと戻ったのだった。


 ゴリドラの点呼が始まる。 俺はゴリドラに返事をしながら、早く放課後にならないかなっと思ったのだった。

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