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第56話 ファミレス

「片桐さん。 バイトお疲れ様」


「ん、ありがと。 で、高山。 どうしてうちがアルバイトしているファミレスに、君を呼んだか理由が分かる?」


「あー……うん。 正直わからない……かな」


 体育祭が終わり、今日は振替休日の日。


 体育祭は大いに盛り上がり、大切な思い出の1ページとなった。


 みんな楽しそうにしていたし、灯も《《いつもどおり》》楽しんでいるように見えた。


 でも、体育祭が終わった次の日、俺は片桐さんからSNSで連絡がきた。


 内容は振替休日の日に、うちがアルバイトしているファミレスに○○時に来てというもの。


 俺はなにがなんだか分からないまま来たんだけど、今目の前にいる私服姿の片桐さんは、どことなく怒っているように見える。


 ……俺、なにかやらかしたか??


 心当たりがまったくないわけじゃないけど、片桐さんがこんなことで怒るだろうか?


 ……分からない。 とりあえず聞いてみるか。


「もしかしてだけど、体育祭の借り物競走で片桐さん選んだこと怒ってる?」


 大勢の前で男に引っ張られる姿は、どうしても目立ってしまう。


 それを嫌がる女子もいるだろう。


 好きな人がいるのに、全然関係ない異性に引っ張られる姿を好きな人に見られる。


 これは誰でも嫌がるだろう。


 でも、片桐さんはどちらにも該当しないような気がする。


 片桐さんから好きな人がいると聞いたこともないしな。


 でも、これはあくまで俺から見た片桐さんの姿だ。


 全校生徒レベルで目立つのは嫌かもしれないし、俺に言ってないだけで、好きな人がいた可能性だってある。


 俺が思いついていなかっただけで、他の嫌がるポイントだってあったのかもしれない。


 正直、借り物競走ぐらいしか呼び出される心当たりはないんだけど、もしかしたらまったく関係ないことで呼び出された可能性だってあるんだよなぁ……。


 …………考えれば考えるほどわかんねぇ!


「正解」


「お、マジか」


「でも、うちの女の勘だけど、完全正解じゃ無い気がするんだよね。 だから、どうして高山がそう思ったのかうちに聞かせてくれない?」


 俺は不思議に思いながらも、片桐さんに理由を説明する。


 説明を聞き終わった後の片桐さんは、ため息をついた後に頭を抱えてしまった。


 えっ、なにその反応。 怖いんだけど。


「違う、そうじゃないんだよ。 なのに、正解に辿り着くんだからたちが悪い!」


「なんかごめん」


「……ま、いいや。 じゃあ、うちが呼び出した理由を言っちゃうね」


 そう言って、片桐さんは注文していたジュースを飲む。


 少し飲んで机に置いた後、片桐さんは話し始めた。


「なんとなくあの時、うちを選んだ理由は分かるんだけど、違うかもしれないから聞くね。

なんであの時、あかりんじゃなくてうちを選んだの?」


「あー、いやー、そのぉ……」


「ちなみに高山があかりんのこと好きなのは知ってるから」


「え!? なんで知ってるの!?」


「言動見てたら分かるよ」


 マジ!?


「みやちんとはるちんも知ってるよ」


 嘘だろ!? うわぁ〜嫌だぁ。


「話逸れちゃったけど、あの時高山がうちを選んだのって、恋愛感情がなくて話しやすいからでしょ?」


「まぁ、そうだね」


「やっぱりか〜! そりゃ、恋愛感情抱いている異性より、恋愛感情抱いてない異性の方が気を遣わないとか色々理由あるんだろうけど、あの時の選択は間違ってたよ〜!!」


 片桐さんは恨めしそうな表情で俺のことを見る。


 すると、矢継ぎ早に話し始めた。


「あそこはうちじゃなくてあかりんを誘う場面だったよ! あそこでうちに行くのは、女子的にありえない!!」


「でもさ、片桐さん俺の気持ち分かってるなら、あの行動とる理由も分かるだろ?」


「分かるよ! 分かるけどそれで納得できるかは話が別だよ!! とにかく! あの時、高山はうちじゃなくてあかりんを選ぶべきだったの!! そうすれば、あかりんだって悲しむことなかった!」


「えっ、灯。 悲しんでたの?」


 いつも通りに見えたけど、悲しんでたのか……。


「もう! これだから男子は!!! 乙女心を分かってない!」


「ゔっ……ごめん。 正直、全然灯がそう思ってたって気づかなかった」


「うちがして欲しいのは、うちに謝ることじゃないの! 高山には、あかりんのフォローをしてあげてほしいの」


「フォロー?」


「うん。 どこか遊びに誘ったりしてさ、あかりんを元気づけてあげて。 あかりん、高山に誘われたら嬉しいはずだからさ」


「そんなことで喜んでくれるのか?」


「喜んでくれるよ! すーーーーーーーいや、あかりんの親友のうちが言うんだから間違いない! うん、間違いないよ!!」


 片桐さんは仕切りにストローでカップの中にあるジュースを掻き混ぜる。


 カランコロンと、氷同士がぶつかる音が俺の耳に届いた。


「そっか……なら、俺、灯を遊びに誘うよ!」


「よしっ! その意気だ! 善は急げ! 直ぐに連絡とるんだ!!」


「お、おう!!」


 俺は片桐さんに急かされながらスマホを取り出す。


 ミスに気づいて教えてくれた片桐さんには頭が上がらないな。


 そんなことを思いながら、俺は灯にメッセージを送ったのだった。

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